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永遠



この世界が現実ならば

僕は幻

どこか遠くの山の上にでも行ってごらん

僕の屍(しかばね)がそこに横たわっているから

いつから そんな所にあるのだろう

誰が そんな所に置いたのだろう



そんなの知らない 知りたくもない

この世界が現実だって どうして言えるの?

そう君に問いつめたいけれど

君も幻

どこか遠くの海の中にでも潜ってごらん

君の屍(しかばね)が横たわっているから

それは私じゃないわ

それは私じゃない

君は大声で泣き出すけれど

その声も海の藻屑と消え

いつしか君の姿も見えなくなった




この世界が幻ならば

君は現実

僕の隣でにこにこと笑っている

生まれてから死ぬまで

悲しいことなど一度もなかったかのように

お気に入りの小説を胸に抱き

「なんて素敵な物語」

夢見るように僕に語る


僕は窓の外を見て

沈みゆく夕日に祈りを捧げよう

世界の平和と君への感謝

それから

君が君のままでいることを





この世界が幻ならば

僕は現実

あれからどれくらい時が経ったのか

何度夕日を眺めたのか

その記憶は

遥か彼方へ流れてしまった

僕と君が永遠だって

どうして思ったのだろう

自分の愚かさに涙ぐむ

「もういいんだよ」

「もういいの」

そう言ってたくせに



僕と君の物語はこれで終わり

今はこうして離れているけれど

どうか悲しまないで

この世界は幻

君も幻

現実という過去は

僕たちを引き離せやしない

永遠という言葉は

ふたりのために存在するのだから






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