見出し画像

身の上話を聞いていた



身の上話を聞いていた

「わかる わかる」という言葉も上の空

それは どこか他人事

自分ではない誰かの話



「君ならどうする?」

そう聞かれて我に返る

これを僕の物語にするには無理がある



何て答えよう

そう思う間もなく

彼の話は続く



気の毒で

かわいそうで

どうしようもない現実は

彼を奈落の底に落としてしまった

僕は何もしてあげられない



泣いているようで笑っている

笑っているようで泣いている

そんな彼を見ていると苦しくなる

「僕ならこうするよ」

そのアドバイスがどれくらい

意味のあるものなのかわからない

「そうだよね」「うん そうだよ」

悲しみから少しだけ解き放たれた彼が笑った



出口のわからない迷路を

あてもなく歩くときには

光を求めないで

光の行方を目で追うとき

人は立ち止まる

自分の足元さえしっかり見ていれば

今 自分がどこにいるかがわかってくる

同じ道を歩かなければ

きっと出口は見つかる

歩き続けていれば

確実に出口に近づいているのだから



彼と別れ 夜道を歩く

僕も立ち止まらずに歩こう

月に照らされた道は

目を凝らさなければ見えないけれど

自分が進むべき道はわかっているのだから



僕の著書「自閉症の僕が生きていく風景」が試し読みできます。
よろしければご覧下さい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?