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それが君の望みなら



知っていたよ 何もかも

君が僕を騙そうとしていたこと

わかっていたよ どうなるのかも

君が僕を避けようとしていたこと

でも 僕は何もしなかった

何もできなかったのさ

どうしてだと思う?




僕が恨んでいないかって?

さあ どうだろう

恨むってどうすること?

泣くこと?

怒ること?

君を殴ること?

そんなことして 何になるの

君がそうして欲しいなら

そうするけれど




こんな別れもあるんだね

君の気持ちがわかっていても

僕は何もできなかった

今日で最後かもしれないと

自分に言い聞かせる毎日

君を失うかもしれない現実が

僕には受け入れがたかった




もういいよ

もういいんだよ

僕は二度と君に会うことはないだろう

それが君の望みなら

その望みを叶えるために

僕は一時(いっとき)

魂を天にあずけよう




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