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そうでもない


さっそうと走っていた君

ただ見ているだけの僕

生きている限り

ふたりが交わることはないのだろうか

それが悲しいのかと聞かれると

そうでもない



「誰のために生きているの」と尋ねられたら

「自分のため」と僕は答える

もしも君が誰かのために生きているのだとしても



君が僕より立派でも

僕が君より劣っていても

それはそれ

これはこれ

僕は現実を受け止めているよ

だから辛いのかと聞かれると

そうでもない



だって 仕方のないこと

たぶん どうにもならないこと

人生なんてそんなもの



与えられた場所で精一杯生きることが

美徳だとしたら

僕という人間は

どれくらい美しいのだろうか

どれくらい醜いのだろうか



ふと立ち止まって見る鏡に映る僕の瞳に

うっすらと涙の膜が広がった



※本日、電子書籍版が発売されました。

(紙の書籍は11月に発売されています。)

どうぞ、よろしくお願いします。




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