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『君と明日の約束を』 連載小説 第五十一話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いている京都の大学生です。
よろしくお願いします!🌼
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています。
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 今まで自分からしたいことを決めなかった自分に言ってやりたい。もっと考えるべきだったと。
 そんな油断の後は大体悪いことが起こるのだと。でもそんなことは後になってから言えることで。

 受け取り方がどうであったにせよ僕はこうして自分勝手な判断で何度目かの間違った選択をしてしまった。実際、この時の僕は気づいていなかったけれど、後から考えると、僕の愚行は初めてではなかった。

 僕は日織を水族館に誘ってしまった。
 送った後すぐに後悔し始めて、スマホをもったまま長い間頭を抱えていた。
 予想外にも、メッセージの返信音がその日中に鳴った。

『嬉しい! ちょうどもうすぐ小説でも水族館のシーン出すつもりだったから。その日までに三章頑張って終わらせて、水族館に行ってから残り二章分、一気に書くね! 今から頑張る!』

 彼女の返信は、いつもより若干テンションが高い気がした。彼女はまたパソコンに向かっているのだろう。そんなことを思って、僕はいい気分で布団に潜った。

 なんて、気持ちよく寝ているだけじゃ何も気づかない。なんの胸騒ぎもしなかった。

 彼女を追い込んだ。周りの影響で、なんてなんの言い訳にもならない。そのことに気づいたのも、自分でじゃなく、慎一の電話でだった。
 彼女はその二日後の明け方、家で突然倒れ、救急車で病院に運ばれた。





 そのことを知ったのは、次の日の昼前だった。
 日織と会う予定もバイトもなく、昼まで寝る勢いだった僕をけたたましい電子音が叩き起こした。
 慎一からの電話だった。

『ミツ!』

 電話の向こうからは慎一の怒鳴り声が聞こえてきた。

「もしもし。慎一、塾じゃないの?」
『休み時間! そんなことどうでもいいから』

 なに焦ってるんだ、と思った。こっちは寝起きなのに、と。

『日織が倒れた』

 欠伸をしようとして開いた口が閉じるのを忘れた。
 心臓が血液を送り出す音が、やけに大きく聞こえた。

「え」

 脳を介さない声が口から漏れる。

『だから、日織倒れたんだって!』

ーー第五十二話につづく

【2019年】恋愛小説、青春小説
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