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『君と明日の約束を』 連載小説 第四十六話 檜垣涼

檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いています。
よろしくお願いします🥀
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています
数分でさくっと読めるようになっているので、よければ覗いてみてください!
コメントやいいねいつもありがとうございます。大歓迎です!
一つ前のお話はこちらから読めます↓

 流れ弾をこちらに打ち返してくる慎一。なんだよそれ、と思ったのは僕だけらしく、彼女は同意する。

「それはなんとなく分かる。年上に目つけられてからかわれそう。前も先生に仕事頼まれてたし。あの先輩もそうなんじゃないかなあ。ミツ君が可愛く見えて」

 彼女は自分が手伝いをさせていることを棚に上げて笑う。
 目の前で自分のことについて話しされることに居心地が悪く感じ、僕は話を変える。

「これが前言ってたハンバーガー」

 メニューを指差す。僕がバイトに入る前だけどこのハンバーガーが人気になって取材を受けたこともあるらしい。

「ミツに言われて一回食べてみたかったんだ」
「美味しいよ。私このサイズは食べれないけど」

 日織が手でバーガーの大きさを示す。

「日織も食べたことあるの?」
「そう、私が食べたのはミニサイズのだけどね」

 彼女が今度は手を近づけて小さくする。

「あれでも多かった」

 彼女は少食なのだろう。前もサラダしか頼んでいなかった。

 しばらくして、キッチンに戻ったはずの葵さんがまた料理を運んできた。
 彼女が頼んだパスタは女性向けの量だったので先に彼女は食べ終える。僕たちが半分も食べられていないことを見ると、カバンからパソコンを取り出し、すこし申し訳なさそうにしながら僕たちに「書いていい?」と確認する。ここにくる前に書いていた続きを書きたいらしい。

「うん」

 僕が首を縦に振ると、慎一が不思議そうな目でこっちを見た。

「なに?」
「いや」

 そして日織の方に向き直り、

「ああ、いいよ全然」

 彼女は驚いた顔をした後、僕と顔を合わせる。やっぱり。
 そして彼女は自分の世界に入っていった。

「どういう反応?」
「慎一は流石だなって」
「なんだよそれ」
「先に日織に言っておいたんだよ。慎一の前だったら遠慮することないって」
「そりゃどうも、ってか流石はミツだろ」
「どういうこと」
「そのまんまだよ」

 ため息をついた慎一が興味深い表情で、日織を見る。

「例の集中モード?」
「うん」

 肉を頬張りながら頷いた時、彼女のパソコンのすぐ隣に紅茶が置かれていることに気づく。手を伸ばして僕はそのカップを彼女の手の届かない位置にずらした。

「なにしたの?」
「近くに置いておいたら途中で飲んで溢すかもしれないから」
「前言ってたやつか」
「うん」

ーー第四十七話につづく

【2019年】恋愛小説、青春小説

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