『君と明日の約束を』 連載小説 第四十五話 檜垣涼
檜垣涼(ひがきりょう)と申します。
小説家を目指して小説を書いています。
よろしくお願いします🥀
毎日一話分ずつ、長編恋愛小説の連載を投稿しています
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一つ前のお話はこちらから読めます↓
母親に交友関係――特に女子の――を知られているのかどうか、わざわざ二階に上がって確かめたかった慎一の気持ちはなんとなく分かったので、平坦な声で事実を言うと、慎一は「おっけいおっけいサンキュー」とおどけて返事をした。
もちろん僕も母に最近よく出かける理由が女子と会うから、なんて言うつもりもない。
葵さんがやたらニヤついた笑顔を振りまきながら、僕たちにお冷を出してくれる。
僕らの状況を確かめて、失礼な想像をしたらしい葵さんは、僕の横腹を小突いて戻っていった。
「あの人は?」
彼女が前と違うバイト仲間に反応する。
「バイトの先輩。大学生でよくちょっかいかけてくる人だよ」
夜ご飯を食べる場所は集まってから決めるつもりだった。それはいいのだけど、慎一が僕のバイト先に来たいと言ったせいで、葵さんのバイト中に店に行く流れとなってしまったのだ。
「ご注文、よろしいですか?」
普段キッチンで働いているはずの葵さんがわざわざホールの仕事である注文取りのために僕たちのテーブルに近づいて来る。不可解な気持ちが表情から伝わってしまったのか、葵さんが口を少し膨らまして尋ねる。
「なんで葵さんなんですか、とか思ってる?」
「思ってません」
そんなこと訊くのならキッチンにいればいいのに、とは言わなかった。
「ホール、忙しいんだよ」
思ってないと言ったのに、彼女は言い訳をする。
「西野さん、いますよ」
西野さんはホール担当のベテランだった。
「あはは、ばれちゃった。暇だからこの時間帯」
知ってるでしょ? と同意を求めるように言う。夕方早い時間帯も店が空いていることはもちろん知っていたが、特に話を広げないように注文をする。
「そうですか。じゃあ、特製グリルハンバーガーと本日のジュースで」
「無視かー」
と言いつつも彼女は注文を書く伝票を後ろのポケットから取り出す。
「あ、おれも同じので」
慎一が続けて注文する。
「じゃあ、私は、紅茶とミニ和風パスタでお願いします」
「ミルクと砂糖はどうなされますか?」
「ミルクだけください」
「かしこまりましたー」
話を切られたことは気にせずからからした表情でキッチンへ戻る葵さんを見て、日織が「大人のお姉さんだね」なんて言う。
いつものようにちょっかいをかけてくる葵さんに対する見解がポジティブで思わず笑ってしまう。
「だいたいからかってくるから。慎一みたいな感じ」
「え? 慎一君ってそんなキャラなの?」
「ミツがいじられやすい性格してるだけだろ」
ーー第四十六話につづく
【2019年】恋愛小説、青春小説
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