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#ロンドンのウソつき 「キッカケ」 No.5

小説 #ロンドンのウソつき 「キッカケ」 無料連載中です。

最初から読んで頂ける方はマガジンにまとめていますのでNo.1からどうぞ。


#ロンドンのウソつき 「キッカケ」 No.5


「ウソだろ!!」

僕は目を見開いて心の中で叫んだ。
ちょうど軽バンを横目に通り過ぎるまさにその時、右折したはずの軽バンがいきなりバックしてきた。

そのまま軽バンは僕のバイクに接触。それでも尚、軽バンは気づかずにバックし続けている。

「おい、ちょっと待って!!」

僕は叫んだが軽バンは気づかない。ちょうどバイクは軽バンの下に潜り込む様に挟まっている。痛いっ、、、僕の左足はバイク下敷きになっており、軽バンがその上からバイクを圧縮している。

止まってくれ、、、と願いを込めたと同時くらいに僕のバイクのクラクションがピーーーーと鳴り響いた。
軽バンに挟まれた勢いで壊れたのか、クラクションが鳴り止む気配はない。
その音に気づいたのか、慌てて軽バンの助手席から薄汚れた作業服の若い男が駆け込んできた。金髪・長髪でいかにもチャラい感じだ。

「おい!止めろ!止めろ!」

軽バンを叩きながら男の必死な声が聞こえてくる。
金髪の男の指示で車がやっと前方に動く。
軽バンが動くと下敷きになっていた僕のバイクが現れた。
僕のバイクはハンドルやタイヤがグニャっと曲がっていた。
あぁもう乗れないんだと意外と冷静に感じた。

僕は挟まれた左足と、そして軽バンと接触した右足の両方がかなり痛み、動かなかった。
いつの間にか僕のすぐ横まで駆けつけてくれていた通りすがりの犬を連れたおじさんがいた。

「おい!大丈夫か?足挟まれてたなぁ。道路の真ん中やし、ちょっと道の脇に移動させたろかぁ。」

おじさんの判断で、おじさんと金髪の男が僕を引きづる様に道の脇に移動させた。
幸いすぐ道の横が民家の駐車場だったので、そのスペースを勝手に借りた。誰の家かも分からないところの駐車場で僕は足を痛みに顔を歪ませていた。

事故って車両同士で接触をして派手にぶつかるイメージだったけれど、実際の事故はこんなにも地味でそして痛いのか、、、と初めて感じた。

隣で金髪の若い男がしゃがみながら「大丈夫ですか?」と心配を本当にしているのかどうなのかも分からない困り果てた口調で言った。

そして軽バンを通行の邪魔にならないところに止めた運転手も遅れて駆けつけてきた。
同じ様に薄汚れた作業服に白いタオルを頭に巻いている。

「すいません!大丈夫ですか?」

運転手の男は焦った様子で僕横たわっている僕の前にしゃがみこんだ。

僕は

“こういう事故の時は後々不利にならない為に謝ってはいけない。”

という浅はかな知識が頭をよぎり「余計なことは話すもんか」と自分に言い聞かせた。

「足がどちらも痛いです。。」

と足の痛みをこらえながら答えた。

若い金髪の男の方が救急車を呼んでいるのか携帯電話で誰かと話しているのが分かった。

一般的に人に気を使う人ほど。
そしてそこまで興味のないことでも質問をしたりして話をなんとか続かせようとする。

僕は人に気を使うタイプなので、初めて会う人とは沈黙を恐れる人間だ。
今の何を話して良いのか分からない時間も気まずい沈黙で苦痛に感じた。
足を痛がるそぶりを見せて心の中では「早く救急車よ来い。。」と催促の気持ちでいっぱいだった。


数分後、救急車が大きなサイレント共に到着した。
救急隊員が3人がかりで僕を移動式のベッドの上に素早く乗せた。

僕は足の痛みと足を動かせない感じから骨折はしているのだろうなと感じていた。
ただ僕の気持ちはもう落ち着いていた。
救急車に初めて乗ることとなり、救急車の中がどの様になっているのかがすごく気になっていた。


救急隊員からは名前や住所、生年月日などの詳細を聞かれ、これはテレビで見た救急の番組と同じだと思った。

「今日は何月何日か分かる?」

など意識の有る無しの質問が救急隊員からいくつか飛んでくる。

別の救急隊員が病院と連絡をとってくれていて、僕の搬送先が決まると軽バンの運転手などに行き先を伝えて出発をした。

救急車の中で聞くサイレンの音は意外と静かであること。
昔小学生の頃に消防署の見学で見た救急車の記憶よりかなりハイテクにバージョンアップされていることなどをその場で感じた。


続く

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この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。




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