資源の歴史から振り返る"Why"サーキュラーエコノミー
はじめに
弊社digglue(ディグル)は、2021年に「テクノロジーで持続可能な世界を実装する」というパーパスを掲げ、これまでやってきたブロックチェーン事業から新たに資源循環の分野に参入し、デジタルとリアルの両軸でサーキュラーエコノミーの実現を目指して活動しています。
「なぜサーキュラーエコノミー(循環型経済)の分野にシフトしたのですか?」と、よく質問されます。
理由は複数あるんですが「分かりやすく社会的に役に立つことがやりたかったため」「自社の強みを活かすため」「これから生まれてくる子供もため」などの理由を述べてきました。どれも正しいのですが、やはり「成長市場にコミットしたかったから」というが大きいです。
「今はまだ小さい市場で競合も少なく、将来に渡って成長していき、社会にとってメインストリームになり得る領域で良いポジションを築く」というスタートアップのセオリーも考慮していたのも、理由の一つになります。
そこで今回は「なぜサーキュラーエコノミーがメインストリームになるのか」という内容を、"資源の歴史"という観点で書いていきたいと思います。
「あぁ、なるほど。だからdigglueはここの分野にコミットしているのね」と、少しだけ理解してもらえることも目的にしています。
人によっては面白い内容になっていると思うので、digglueに興味がなくても読み物として楽しんで貰えれば幸いです。
中世ヨーロッパでのスパイスの価値
当たり前ですが、現代に生きる我々は、胡椒などのスパイスをめっちゃ安くに手に入れることができます。しかしながら、中世ヨーロッパにおいては、スパイスを手に入れるためには危険な航海に乗り出したり、戦争を行うというほどにその価値は高かったらしいです。
中世ヨーロッパでは食料の輸送は、広範な地域を時間をかけて移動する必要があり、肉などの腐敗を防ぐためにはスパイスが必要だったとされています。スペインなどが自国での生産にトライしていたようですが、うまくいきませんでした。
当時、胡椒1オンスと金1オンスは同じ価値があったようで、まさに争奪戦が行われるくらい貴重な資源だったようです。しかし、このスパイスの争奪戦は、フランスが植物を持ち込み、自国での移植を成功させ、生産量を大幅に増加させることで収束しました。
つまりスパイスの希少性が薄まったことによって、お金換算での価値が下がった、ということですね。そしてそれを引き起こしたのが、フランスによる技術革新(移植と生産の成功)、というのがポイントです。
木炭から石炭へ
18世紀が始まったばかりの頃、"鉄"を作るのに当時は"木炭"を利用していました。
需要の高い鉄を得るべく製鉄を行うに伴い、多量の木炭が使用されるようになり、森林が伐採され、その結果に木炭自体も不足してきました。その結果、木炭の価格もかなり高騰したようです。
そこで木炭ではなく、石炭を原料に製鉄を行う取り組みが行われましたが、石炭に含まれる硫黄が鉄を脆くしてしまうため、なかなか石炭による製鉄は普及しませんでした。
しかし1709年に、石炭を蒸し焼きにすることで、硫黄含有量の低いコークスの開発に成功。硫黄によるデメリットが解消されました。この革新によって、それまで木炭に頼っていた製鉄業は石炭の利用に転換するようになります。
これもまた、技術の進歩が"木炭"という資源から"石炭"という資源への転換をもたらした事例だと思います。
石炭と蒸気機関
時代は少し進み、1800年より少し前、ついに蒸気機関が登場します。
当初、蒸気機関は主に石炭の採掘に活用されていたようですが、技術の進歩により、ついには機関車などの移動手段に用いられるまで発達しました。更には、蒸気機関を取り入れた動力を利用することで、産業革命が引き起こされ、その波は世界中に広がっていきます。
この時代、石炭に関する戦争が直接的に勃発したわけではありませんでしたが、石炭という資源は繁栄の上で必須であり、資源確保の重要性がますます深く認識されるようになった時代とも言えます。
ちなみに、アメリカのペリー提督が日本にやってきた理由の一つは、日本の豊富な石炭資源を手に入れることだったらしいです。
石炭という資源が、社会や経済の駆動力として台頭し、その確保が国々の戦略的な関心事となった時代ですね。
石油の登場
石炭の次とくれば、石油です。ご存知の通り、現代において石油は車などのガソリンだけでなく、プラスチックの原材料になったり、色々な用途に利用されています。ですが、石油が利用されはじめた初期は、明かりを灯すための灯油から始まったらしいです。
1908年にフォードがガソリン車を発表すると、石油への需要が急速に増加しました。これまでの石炭を用いた蒸気機関から、石油を燃料とするガソリン車への転換が進み、主要なエネルギー資源は徐々に石炭から石油へとシフトしていきます。
ビジネスの側面から見ると、ロックフェラーは石油の未来性を見越してスタンダード石油会社を設立。この企業は急速に成長し、アメリカの石油業界を支配する大企業となりました。
その後、1911年にシャーマン反トラスト法により独占を制限されるものの、これらの動きは後の石油メジャー(エクソン、モービル、シェブロンなど)の成立に繋がっていきました。
こうして、石油産業は世界のエネルギーにおける主要な支配勢力としての地位を確立していくこととなります。
第一次世界大戦
第一次世界大戦は、1914年から1918年にかけて行われた大規模な戦争で、主に連合国(主要な参戦国にはイギリス、フランス、アメリカなどが含まれます)と同盟国(主にドイツ、オーストリア=ハンガリー、オスマン帝国など)の間で起こりました。戦車・戦闘機・軍艦などの新たな近代兵器が投入され、複雑な戦闘が繰り広げられたのが最大の特徴です。
戦争の推進力となったのは、これらの兵器の動力源である「石油」でした。そのため、「石油の確保」は戦争の中で最も重要な要素の一つとなりました。
第20世紀初め、世界の石油供給は約6割がアメリカ、2割がロシアによって生産されていました。
そして連合国側に石油供給ができるアメリカが参戦したことにより、戦争は連合国側の有利に傾きます。一方、同盟国側は産油国を味方に持たなかったため、石油の不足が戦争に影響を与えたとされています。
第一次世界大戦の終結後、石油の重要性とその供給源の確保が国際政治の中で大きなトピックになります。この戦争を通じて、石油の確保は国家の存亡に深く関わる要素であることが認識され、西洋諸国は石油を囲い込む戦略を開始しました。
1920年代後半には、アメリカ国内で大規模な油田が発見され、1930年代には中東地域での石油開発が本格化します。
特に、クウェートやサウジアラビアといった中東諸国で巨大な石油田が石油メジャーによって発見され、1930年代半ばには石油メジャーによる石油支配の体制が確立されました。
このようにして、第一次世界大戦を通じて石油の重要性が浮き彫りになり、国際政治や経済において戦略的な要素としての地位を築いていく過程が生まれます。
第二次世界大戦
1932年、日本は満州国を建設し、その後日中戦争に進展。この戦争は長期化し、日本は中国を支援していたイギリスとアメリカからの物資補給を断たれないよう、フランス領インドシナに進出します。この際、アメリカは日本の行動に警戒感を抱き、1941年に石油の輸出を完全に禁止しました。
当時の日本は石油調達の殆どをアメリカに依存していたため、追い詰められた日本は状況打破のため真珠湾攻撃を敢行。そして太平洋戦争へと突入していきます。
結局日本は石油の輸入がほぼゼロになり、東京大空襲や原子爆弾により敗戦。この戦争も、石油という資源を持つ国と持たざる国との戦いであったと言えると思います。
余談ですが、日本は満州で油田採掘をしていたようですが、結局発見できず。しかし後に、あと山一つ隔てたところで油田が発見された、ということがありました。もしこれが戦時中に発見されていれば、どうなってたんでしょうか。
一方で、第二次世界大戦時のドイツも、もちろん石油の重要性を認識していました。そして、油田獲得のためソ連に進軍。しかし結局は油田を手に入れることができませんでした。
ドイツは、自国の石炭を液化して人口石油を精製する技術を開発しており、当時の石油供給の多くを人口石油で賄っていたらしいです。しかし、コストが高く供給量も限界があり、空爆により人造石油工場が破壊されていったことから、追い詰められていくことに。
結局ドイツも敗戦。石油資源を潤沢に持つ国に勝つことが出来なかった、という事例がここでも起きます。
戦後とオイルショック
第二次世界大戦後の石油産業の中心は石油メジャーで、石油の供給源は中東・アラブ地域に集中していきました。ここらへんから、中東の石油確保が大きなテーマになっていきます。
これまで石油産国として強大だったアメリカの基盤が、徐々に中東に取られていく様が見えます。
1948年に世界の59%のシェアを締めたアメリカは、1955年には44%まで低下。
西ヨーロッパでは、石油輸入に占める中東の比率が1948年で49.2%であったのが、1958年には80.8%に増加。
中東で思いのままに活動していた石油メジャーでしたが、1959年に産油国政府の了承なく、一方的に中東原油価格を引き下げる、という行動に出ます。
この事態に危機感を持った中東諸国は、石油価格の安定と加盟国の利益を守ることを目的にOPEC(石油輸出機構)を設立。2022年時点では13カ国が加盟しています。石油メジャーに食い物にされるのは許さないぞ、という意志の現れですね。
しかしながら、原油の中心地である中東で紛争が起こるたびに、石油の供給危機が起こり、世界に大きな影響を及ぼしました。その典型例が2度に渡るオイルショックです。
シェールガス・シェールオイル
こうした中東依存の状態もあり、オイルショックなどの経緯から、次第に天然ガスなどの非在来型資源が注目されるようになってきます。石油に比べ、天然ガスのほうが地域的偏差が小さいというのも注目の要因の一つです。
天然ガスは、当初は油田やガス油田で採掘されるものが中心だったのですが、後にシェールガスが登場が登場することで、資源の勢力図が少し変わっていきます。
シェールガスは地層に溜まっている非在来型天然ガスの一種で、地中の水平方向に広がるシェール層の隙間に閉じ込められているため、従来の石油採掘などの方法では採掘することができませんでした。
しかし、2000年代に複数の既存技術の応用により、採掘が可能になります。
ちなみに、シェールガスは天然ガスの32%のに相当する量が採掘可能な状態で、下記がTop5のシェアになります。
中国:1115(Tcf)
アルゼンチン:802(Tcf)
アルジェリア:707(Tcf)
アメリカ:665(Tcf)
カナダ:573(Tcf)
膨大な資源量のシェールガスの開発が進めば、天然ガス市場に大きな影響を及ぼすとして、アメリカではいち早く取り組み成果を挙げています。
一方、埋蔵量No.1である中国も天然ガス市場に大きな影響を及ぼすプレイヤーとして、2013年に生産量2億㎥から、2017年には94億㎥に生産量を伸ばしています。
また、シェールガス採掘と同様の手法で、シェール層に存在する原油も採掘出来ることがわかり、シェールオイルも生産されるようになりました。
これにより、アメリカは再び世界1位の原油生産国として返り咲きました。
余談ですが、一時期話題になった日本海に埋蔵されているメタンハイドレードも非在来型ガスで、採掘ができるようになれば、日本にとって重要な資源になるのは間違いないでしょう。今後の技術革新に期待しています。
気候変動と再生可能エネルギー
ここまで、石炭→木炭→石油→天然ガスの順番で資源の歴史を見てきましたが、近年の話題としては再生可能エネルギーが真っ先に挙げられるでしょう。
脱炭素・カーボンニュートラルなどは毎日のようにメディアで見かけるようになっていますが、実は石油ショックに見舞われた1970年代くらいから、地球温暖化の課題は注目されています。
以降の動きを超ダイジェストで記載するとこんな感じ。
1985年、フィラハ会議でCO2排出の影響での地球温暖化が大きく取り上げられ、1988年にはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が設立される。
1995年、COP(気候変動枠組条約締約国会議)が毎年開催されるようになり、COP3(1998)にて「京都議定書」が採択された。(京都議定書は採択から8年越しに発行される)
2005年、京都議定書の発行で、CO2の排出量が少ない原子力発電所が注目されるようになったが、その後福島原発事故でその拡大は一気に縮小へ。
2015年、COP21では「パリ協定」が採択され翌年に発行。平均気温上昇を1.5℃に抑える努力が目標として掲げられる。
こうして並べてみると、気候変動問題は一時的なトレンドではなく、実に50年近く前から問題視されている人類共通の大きな課題であることがよく分かります。
現代の企業にとって、脱炭素が重要なイシューになった最も大きなきっかけは、パリ協定でしょう。京都議定書では先進国(日本、米国、EU、カナダなど)だけに温室効果ガスの削減目標が示されていましたが、パリ協定では先進国・途上国関係なくすべての締約国が対象となっている点が大きな違いです。
また1985年から10年毎に国際的に大きなイベントが起きていることも実に興味深いと思います。大手企業が掲げるカーボンニュートラルの目標も2025年にマイルストーンを置いている企業も多いですね。2025年にはどんな動きがあるのでしょうか。
下記は、発電電力量の推移を示したもので、自然エネルギー(再エネ)の割合が急上昇しているのが見て取れます。
未だに石炭による発電が大きいのは驚きですが、世界的にも脱石炭の動きが活発化しており、ベルギーでは2016年に石炭ゼロ%を達成しています。EUでも2030年などを目処に0%を目指している国が多く、どこかのタイミングで再エネがトップになるタイミングが来るでしょう。
ちなみに投資の方を見てみると、10年前は石油への投資額が太陽光発電の6倍もあったものが、2023年には石油生産への投資を上回ると予想されています。
こうした大きな流れは加速していき、現代でも巨大な企業である石油メジャー自身も化石燃料から脱却する動きを見せています。実際に国内だと、ENEOSも下記のようにインタビューに答えています。
鉱物資源リスク
上記で述べた再エネへの転換は、その裏で鉱物資源の需要逼迫化の一因にもなっています。
例えば、風力発電で使われるタービンの製造には、ジスプロシウムというレアアースが必要で、その9割が中国で発掘されます。マッキンゼーの調査によれば、今後最大70%の不足に見舞われる恐れがあるとのこと。
EV車の普及で車載用蓄電池に利用されるコバルトの多くは、コンゴに依存し、EV車が普及すれば不足していくと予想されます。
他にも、金・銀・銅・鉛・錫などは2050年の累積需要が埋蔵量の2倍近くあるし、ニッケル・マンガン・クロムなども供給が一部の国に集中しています。これらは、中国によるレアアース輸出制限や、インドネシアによるニッケル禁止など、供給リスクが高いマテリアルです。
資源枯渇への3つの対応策
現代を生きる我々は、歴事上かつて無いほど豊かな暮らしを過ごせています。エネルギー供給、技術、法律、金融、インターネットなど、豊かさを支える様々な要因はありますが、日本に住んでいると(特にIT業界に属する我々は)、モノの価値が相対的に低くなっているように感じることがあります。というのも、いつでも、どこでもAmazonなどを通して簡単に安価に商品が手に入る世の中だからです。
しかし当然ながら、そのモノ自体の製造を支えるのは、資源にほかなりません。コップはガラスでできているし、ストローは紙やプラスチックでできている。眼の前のパソコンやスマホは、それを構成する資源無くしては作れないし、水を浄化する施設にも資源が必要。当たり前で豊かなモノであふれる社会を、そしてインフラを支えているのは資源にほかなりません。
"資源を制するものが世界を制す"と、歴史が言っているように、資源の重要度は依然として高く「どんな資源に依存するのか」「資源をどう獲得していくのか」が、とても重要になります。
加えて、SDGs、気候変動、サステナビリティやら、持続可能性について考えていくのが当たり前になってきた世の中では、「どうやって持続的に使っていくのか」この辺もキーになってきます。
地球単位での大きな課題に直面しているのが我々です。資源に関しても、我々が住む地球は1つしかないので、その資源のほとんどは限りあるモノとして認識する必要があります。
そう考えたときに、取りうる手段として大きく3つ考えられます。
技術革新による特定のマテリアルへの依存度を減らす
宇宙開発を進め、他の惑星などから資源を採掘する
限りある資源を、なるべくロスなく循環して使い続ける
我々の会社は、上記の3番目にあたる領域で事業を行っています。なぜこの領域にコミットしているのか、内容を少し詳しく書きながら説明したいと思います。
【1. 技術革新による特定のマテリアルへの依存度を減らす】
これについては、実際に何度も起きていることで、コークスの発明による木炭から石炭へのシフトも代表例になります。
現代の鉱物資源リスクに対しては、例えばリチウムイオン電池ではなく、カリウムを利用した全固体電池が開発さられれば、リチウム不足のリスクも低減されるかもしれません。
他にも既存の原発で利用される核分裂による発電ではなく、核融合炉の開発や、それに伴う超伝導コイルによる送電ロスの軽減によって、化石燃料による発電も劇的に減る可能性もあります。
こういった技術開発は非常に魅力的でロマンがあって、まさにイノベーションを体現しており、個人的には心から応援したい分野です。
しかしながら、本当に実現するのか、どれくらいの時間と費用がかかるのか、実現の裏側で新たなリスクが出てこないのか、など非常に難易度が高く、リスクが大きい分野でもあります。
この分野は弊社のバックグラウンドからは遠い場所にあるので、いわゆる研究開発型のスタートアップなどと連携していく、というスタンスと取っていきたいと考えています。
【2.宇宙開発を進め、他の惑星などから資源を採掘する】
あくまで個人的に考えている程度に捉えていただければ幸いですが、聞く人によれば、ぶっ飛んだ話をしているかもしれません。
イーロン・マスクやジェフ・ベゾスなど、世界を代表するような企業の創業者も、宇宙ビジネスへコミットしている人が多いように思います。個人的にも宇宙ビジネスは人類に与えるインパクトも大きく、市場も間違いなく大きくなると考えています。SpaceXは宇宙へ飛びたすコストを格段に下げたし、衛星利用のインターネット回線StarLinkを利用すれば、砂漠や太平洋のど真ん中でも快適なインターネット環境を提供してくれるようになりました。
ビジネスだけでなく、もちろん軍事的にも衛星は非常に重要で、単なる偵察や監視だけでなく、衛星攻撃兵器や、それらの衛星に対する対衛星兵器も進化が著しいです。
他にも色々な観点がありますが、将来的に宇宙開発が進めば資源の確保も可能ではないだろうか、と考えています。火星と木星の間には少なくとも300万個は小惑星があると言われており、その中の直径3kmのM型の小惑星を地球に持ち帰ることができれば、200億トンの金属鉄と1億トン以上のプラチナを手に入れることができるらしいです。
これは産業革命以来200年をかけて人類が利用した金属鉄の総生産量を上回り、プラチナも総生産量の2倍以上に匹敵する量になります。
当然ながら宇宙開発には膨大な予算と時間が必要なので、現時点で我々がコミットするには一番ハードルが高いとも言えます。この領域にコミットしている経営者の方々は、本当に凄いですよね。
【3. 限りある資源を、なるべくロスなく循環して使い続ける】
弊社がコミットする分野です。
地球の一生を1年と仮定すると、人類が生まれたのは12月31日の午前10時40分、産業革命は午後11時59分58秒ごろの出来事。それからたった2秒のうちに、人類は使いやすい資源、例えば銅の硫化物などをかなり採りだしてしまいました。
実際に世界では人口が増え続け、2050年には約100億人近い人口になる上に、都市化比率が上がり、さらに多くの資源が求められるようになります。そう考えると、新しい資源を求める事と、需要の高いマテリアルのシフトだけでは不十分で、今ある資源をいかに長く使い続けられるか、これが重要なアプローチになります。
技術革新や新規開拓と比べリスクが少ない分、リサイクルなど既に多くの企業が昔から取り組んでいる領域でもあります。
しかし近年はEUを中心に、資源の循環と経済的発展を両立させる考え「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」が普及してきています。
サーキュラーエコノミー
サーキュラーエコノミーについて一言で説明すると「資源を循環させ、可能な限り無駄なく使い続ける経済モデル」になります。
世界の経済成長を支え、豊かな現代の礎ともなった大量生産モデルは、一方で大量の資源を使い捨てにし、大量の廃棄物を生むことになりました。そうした背景から脱却を図るサーキュラーエコノミーは、まさに3番目に挙げた「3. 限りある資源を、なるべくロスなく循環して使い続ける」と合致する有効な手段です。
色々な定義がありますが、エレンマッカーサー財団によるサーキュラーエコノミー3原則を参考にすると良いかと思います。
よくある3R(リユース、リユース、リデュース)モデルとの違いは、ここに経済的な観点を入れたことにあります。単なる「資源の無駄をなくそう」という観点だけでは、どこかで限界が来ます。
資本主義の真っ只中にある我々にとって、企業が利益を出していくのは必須です。つまり経済的な自立がなければ、企業にとって持続可能な形での実現は難しいとも言えます。資源の無駄を無くす活動とビジネスを両立させる、といった形であれば、企業側も持続的にコミットができます。
2023年に経済産業省が発表した「成長志向型の資源自律経済戦略」では、課題の背景や今後日本が取り組むアプローチまで概要が記載されています。
弊社digglueもここのスタートアップ事例に取り上げて頂いており、今後も国の路線に則ってビジネスを展開する方向で活動する指針です。
(MateRe(マテリ)について、記載されている内容から大幅にアップデートしているので、もしご興味あれこちらまで)
サーキュラーエコノミー自体の内容について、今回は深く掘り下げることはせず、概略程度にとどめておきます。機会があれば、サーキュラーエコノミーについて、EU・日本・デジタルとの関連を中期的な観点で書いていこうかと思います。(今回は超長期的な観点で書かせて頂きました)
これからの資源
ここまで資源の歴史、資源枯渇への対策、サーキュラーエコノミーと、主にマテリアル的な観点から資源を見てきましたが、現代社会における重要な資源として「データ」を挙げたいと思います。
世界の時価総額ランキングを見ても明らかなように、GAFAMに代表されるようなIT関連企業、つまり大量のデータを持っている企業が高く市場から評価されています。ネットの台頭により、これまで"見える化"されてこなかった様々なデータが、我々の日常の至る所に活用されるようになり、その力が証明されているのが現代の社会です。
例えばアメリカの大統領選でもデータが使われたり、環境分野でもデータ活用による効率化は欠かせない要素になっています。
このデータを、いかに運用するか、これこそが企業や国家にとっての大きなトピックになっており、もはや現代の資源と言っても過言ではありません。
サーキュラーエコノミーの分野での主役は、今まで脚光を浴びてこなかった静脈産業だったり、もしくはサステナブルな商品を製造する会社だったりするのですが、キーになるのはデータを有効活用できるデジタルの分野です。
我々がコミットしている業界でも、いわゆるリサイクラーや廃棄処理業者などの静脈と、メーカーなどの動脈産業の情報は分断され、情報がうまく活用されておらず非効率な部分が多々あります。
それらに対して、デジタルというアプローチでデータを「見える化」し情報を「つなぎ」そして上手く「まわす」こと。これこそが、循環型社会の実装に必要なことです。
さいごに
弊社は、MateReという環境貢献度の見える化、トレーサビリティ、DPP(デジタルプロダクトパスポート)に繋がるような、一連の情報管理を行うプロダクト郡を開発しています。
またデジタルだけではなく、いわゆる現場と言われるメーカー工場や、リサイクル工場、廃棄の現場などにも地道に足を運び、リアルとデジタルの融合を通してサーキュラーエコノミーの実現を推進しています。
例えば直近だと東京都の「令和5年度 革新的技術・ビジネスモデル推進プロジェクト」事業者に採択頂いた下記の事例があります。
上記を含め、東京都の実証では3件プロジェクト(内2件は弊社がプロパーで
獲得した案件)にコミットしています。
東京都のプロジェクト以外にも多くの大手企業様と連携して事業化に当たっています。リアルな場に入り込み、より深い課題を見つけ、デジタルを駆使したプロダクトに還元しながら課題を解決していく、こうした活動を通して資源循環を進めて参ります。
最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございます。もしこの記事を読んご興味を持ってくださる企業様がいれば、是非お問い合わせください。
参考
※参考にした書籍やHPなどをまとめて記載いたします。特に序盤から中盤に掛けては『資源戦争の世界史』という書籍を大いに参考にさせていただいています。詳しく知りたい方は是非、書籍の方をお読みください。
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