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病は”空気”から 〜”空気を読む”ことを禁じられた僕たち私たちに贈る、議論の円滑な進め方〜

疫病は人を個室に閉じ込める。閉じ込められた人間たちは孤独を感じながら五感を制限された状態で対象と向き合わなければならない。

特に日本人はコンテキストというか、暗黙知的に”空気”を読み合いながら物事を進めていく傾向が強い。その”空気”を忌避しなければならないこの状況下では、対象としっかりと議論をして妥協案に落とし込むことをより丁寧にやらなければならない。

ここで言う対象とは、社会であり、家族である。

対社会で言えばクライアントであり、社会的な価値創造のプロセスをともにしているパートナー(簡単に言えば仕事仲間や、利害関係者)を意味するが、物理的な距離も近く、常に接触している状態では、空気も読みやすいため雰囲気で物事が進み、結果として軌道修正が必要であるとしても、その場で修正していけば良かった。

対家族で言えば、接触時間が比較的短かったため、互いの嫌な部分についてはそれぞれが社会に逃げ込むことで一時的な逃げ場をつくることができたため、問題が顕在化することは無かった。

この疫病が与える影響の間接的な結果として、それができなくなる。今までは、”空気”をともにすること、”空気”を入れ換えることによって、本質的な問題を先送りにできていたのだが、社会的には”空気”をともにすることができなくなり、家族的には”空気”を入れ換えることができなくなったがゆえ、その問題が顕在化し始めている。

空気を読み合う日本人には、そもそも妥協案に導くための議論に慣れておらず、周到な段取りと準備が必要だということがあまねく理解されていないがために、会議が踊り、夫婦の会話も空転してしまう。


さて、前置きが長くなったが、円滑に回らない議論の原因を列挙する。

(1) 終了時間が決まっていない(意識もない)
(2) 目的(情報共有、アイデア出し、意思決定等)が明確でない
(3) アジェンダ(項目と順番)が明確でない
(4) それぞれの項目についての議論の方針における仮説(たたき台)がない
(5) 事前の参加者への情報共有が徹底されていない
(6) 口頭共有が多く、どの項目の何の話をしているのか分からない
(7) 議長が決まっていない


更に、それぞれについて改善方法を説明する。

(1) 終了時間が決まっていない(意識もない)

リアルだろうがリモートだろうがミーティングの開始日時を決める際に終了時間を明確に決めておく。当日も終了時間を意識して時間管理をしっかりとして進める。これ、基本中の基本。


(2) 目的(情報共有、アイデア出し、意思決定等)が明確でない

その議論の目的を明確にする。これは後ほど出てくるアジェンダそれぞれについても決めておき、議論の冒頭で周知する。(1)と合わせることで、参加者全員が当該議論において、どのくらいのテーマをどれくらいの時間の中で話し合うのかが分かる。

そして、もう一つ重要なこととして、議論の時間に情報の共有をしないこと。情報の共有は事前にやっておくこと。これは(5)で説明する。


(3) アジェンダ(項目と順番)が明確でない

当日の議論について、いくつ項目(テーマ)があるのか、それぞれがどの順番で議論されるのかについて議論の冒頭で参加者に説明をする。いきなり各論から話し始められると、参加者としてはその各論が全体空間のどこに位置づけられているのか分からないために不安感が増す。


(4) それぞれの項目についての議論の方針における仮説(たたき台)がない

非常に重要で、議論をする際には仮説(たたき台)を必ず準備しておく。アイデア出しの場合でも、意思決定の場合でも、たたき台があることによって、その議論の中で参加者から仮に一言も意見が出なかったとしても、最終的にはたたき台が承認されたかたちで、物事を前に進めることができる。

議論を設定した人間の責任で行う(仮説の作成者を指名することも含め)。


(5) 事前の参加者への情報共有が徹底されていない

(2)の中で情報共有のための議論は行うべきではないことに触れた。これだけインターネットと付随する技術が誰でも格安で手に入れられる世の中において、情報共有は事前にいくらでも効率的に進めることができる。共有ツールは意思があればすぐに使いこなせるようになる。

当日の議論では、情報が広く一様に共有された状態で始まり、質疑応答や、中身についての議論を広げたり深めたりすることに時間を使う。


(6) 口頭共有が多く、どの項目の何の話をしているのか分からない

見落としがちなポイント。特にリモートワークの場合に必要となる項目。(5)の事前共有情報も含め、議論に用いる各資料には全てインデックスが振られていること。資料の中、各ページのコンテンツについても番号付けがなされていること。そうすることで、物理的に近くにいない相手とも、地図のように緯度経度を参照しながらともに進んでいくことができる。


(7) 議長が決まっていない

ファシリテーターを決めておく。ファシリテーションはスキルなので磨くことができる。誰でも習得することは可能だが、習熟度は各自によって異なる。そのため、習熟度の高い人間に議長を任せることで、議論を円滑に進めていくことができる。議長=ファシリテーション習熟者であることが望ましいが、全員にそれを期待することは難しいため、その場合は議題を持ち込んだ人間がファシリテーターを事前に指名して、目的やアジェンダ、仮説、事前共有事項等について個別に共有をしておく。


以上。簡単なようで全てできている人は多くない。対社会、対家族と孤独に逃げ場のない中で向き合わざるを得ない、もっと言えば本質的な課題に向き合わなければならない、現代の世を生きる人々にとって参考になれば。

まあ、ならねえかな(笑)

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