つばめ理念

無料塾が人をつくる|第3章-1|皐月秀起

【第3章:助走~学生の成長のために~】

すべて任せてくれた父

2012年4月に、実家のある兵庫県宝塚市に11年ぶりに戻ってきました。私の父が賃貸マンションの管理・運営(いわゆる大家さん)をしており、サラリーマン時代も折を見て話を聞いたりしてはいましたが、本格的に手伝うことになりました。実際に物件の現況や管理・運営、財務スキームなどのレクチャーを受けたのですが、父が「好きにやっていい」と言うんです。

そうは言っても、不動産は全くの初心者です。サラリーマン時代の2社は、商社(住友林業)とメーカー(ハンター・ダグラス)なので、不動産の売買や仲介は全くの畑違いです。宝塚に戻る前に、不動産の勉強方々、宅地建物取引士と不動産実務検定(大家検定)の資格を取得しましたが、そんなに簡単にできるものか...と、少々不安でした。

それに、だいたいこういう場合、特に「全部任せる」と年長者や上席者が言った場合、ほとんど「口だけ」ですよね?(笑)。任せるとは言いながら、あーだ、こーだ、細かいことに口を出す。全然任せてくれません。でも、「まあ普通そうだよな」とも思っていました。向こうは経験者、こちらは初心者。それは危なっかしいですし、お客さんに迷惑をかけると後々大変です。

ですので、私も父に対して、事前に話をしてから仕事を進めようと考えていましたが、「好きにどうぞ」と。もうずっとその調子なので、ある日、「あっ、本当に任せるんだな」と感じ、そこからはお伺いを立てずに主体的に進めていくことにしました。昭和16年生まれの父ですが、本当に腹が据わっているなと感心しました。

最初の課題

すべて任せてくれた父に対して有難いなとは思いましたが、一方で結果も出さないといけないとも思っていました。期待に応えたいとも思っていました。いつまでも「お手伝い」ではいけません。大家さん1年目の私に課した課題は「満室にすること」です。最近、メディアでもようやく取り上げられるようになりましたが、今全国で「空き家問題」が深刻化しています。

現在、日本の空き家率は約20%。あるシンクタンクの調査によると、2033年には30%を超えると見通しだそうです。30%ですから、3軒に1軒が空き家。自分を中心にすると、どちらか片方が空き家ということになります。誰も住んでおらずいつの間にかゴミが投げ込まれている、不審者が入り込んでいる、スズメバチの巣になっているなど、防災面・治安面などから考えても空き家は好ましくありません。

ですが、少子高齢化・人口減少・相続問題などで空き家が増えていく一方で、新築にはほとんど制限がかからず、どんどん新しい建物が立っていく。需要と供給のバランスがまるで崩れている状態です。

私の管理物件もご多分に漏れず、空室に頭を悩ませていました。こちらは年々「築古」になっていきます。一方、近隣に新しいマンションが建っていきます。家賃など条件の問題はありますが、普通は新しい、設備も最新のお部屋に住みたいですよね。よく分かります。私もそうでしたから(笑)。でも、ビジネスとしてはそうも言っておれず、まずは空いている部屋にどうやったら住んでもらえるか?これが大きな課題でした。

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