つばめ理念

無料塾が人をつくる|第3章-7|皐月秀起

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序盤は低空飛行

2016年になり、下宿紹介のアルバイトが4シーズン目になり、新入生がまた入居してきました。4回目の入退去になりますので、これで「一周」したことになります。卒業後も住み続けてくれている一部の子を除くと、全員が「新入生歓迎会をした子」になります。関学生協でのアルバイトもここらが潮時と、今シーズン限りで引退することにしました。

この年は新入生歓迎会をカフェで行いました。先輩スピーカーも呼んで、ガイダンスもみっちりやりました。新入生の子たちに、カフェの場所と雰囲気を知ってもらいたいと思って開催しましたが、アザレア43から電車で来ないといけないので、カフェで新入生歓迎会をするのは翌年(2018年)でやめました。

アザレア43は関学の下宿の中でも一番北の端っこで、アザレアの入居者以外の子は日経読む会に来にくいということで、満を持して仁川に常設のカフェスペースを構え、2016年3月に張り切ってスタートしました。しかし、効果がさっそく現れたとは言い難い状態でした。

日経読む会の常連さんで、初期メンバーと言っていい武田君と早川君が4回生になりましたので、就職活動のサポートはカフェを使ってかなりできました。エントリーシートの添削や企業研究・就活の進め方などは、岡本さんと2人でかなりフォローできました。リーダーズカフェが間借りしている学生マンションの4回生も岡本さんを頼って、就活相談にやってくるようになり、たまに私も同席して知恵を絞りました。就活サポートのノウハウはこの時期からかなり積み上がっていきました。

ですが、それ以外については、例えば日経読む会は、授業の多い1回生が来やすいようにと週2回にしましたが、2~3人の参加に留まり、学生1人と岡本さんと私の3人なんてことはよくありました。好きな本を持ち寄ってお薦めし合う読書会や日本経済新聞社さんに「新聞読み方講座」をしていただくなど、日経読む会以外のイベントも単発でやりましたが、出入りするメンバーはあまり変わり映えしませんでした。「喜び勇んでキャンパス近くに出てきた割には、たいしたことないなあ...」と思い悩んでしました。前期の試験が始まる7月から夏季休暇のある8月までの2か月間、日経読む会はお休みにしました。

「無料塾」との運命的な出会い

日経読む会を休みにし、リーダーズカフェに行く機会が減っていた夏のある日、こんな記事を見つけました。
「公設無料塾 中高生の支え『教育格差』埋める試み」(日経新聞 2016年7月29日夕刊)

前文を引用させていただくと、「中高生向けの公設無料塾が全国で開講している。放課後や土曜日、地元の大学生や定年退職した元教師らが講師を務め、学習が遅れがちな生徒らの指導にあたる。経済的な事情で民間の塾に通えない生徒らをフォローする取り組みとして、文部科学省も支援する」とあります。

この記事を目にしたとき、目はキラキラっと光り、「これや!」と思わず声を上げました。

まず、私の目を引いたのは、メインの記事ではなく、左側の「子どもの貧困率上昇」でした。厚生労働省の調査によると「子どもの6人に1人が貧困状態にある(2012年調査)」とあります。何かについて恵まれすぎていると言われる日本に、これだけいるんだと驚愕しました。貧困を理由に高校や大学への進学を断念するケースがあり、安定的な職業を得られないことに繋がり、「貧困の連鎖」にはまってしまう。なぜなら経済的な事情で民間の塾に通えないからだと。塾に行けるかどうかで、子どもの人生が変わる。子ども自身のせいではない部分が理由で、貧困の連鎖から逃れられない。これはあまりにも理不尽です。

私は、ちょうどこの時期、長女の通う中学校のPTA会長の任期を終えたところでした。普通のお父さんよりは今の子どもたちの現状を少しは知った気でいました。2年間目にしていた子どもたちの6人に1人は貧困に苦しんでいるなんて、正直考えたこともありませんでした。何にも知りませんでした。自分が見えてない、見ようとしていなかっただけで、勉強をしたくても塾に行けない子が教室にいた。大きな衝撃を受けました。

次に、「これや!」と思った理由は、「私たちなら確実にできる!」と思ったからです。誤解を恐れずに言うと、「私たちがやらなければ誰がやる!」とも思いました。先に無料塾をやっておられる先輩のみなさんを差し置いて、大真面目にそう思っていました(苦笑)。

私には、まず子どもたちに勉強を教えてくれる学生が身近にいました。今の学生たちは、私が大学生だった20年前と違って、気持ちが優しい子が多く、ボランティアに対して非常に高い意識を持っています。声をかければ、興味を持ってくれる学生は必ずいるはず。勉強(日経読む会)よりもボランティア(無料塾)のほうが、より興味を持ってくれるかもしれません。次に、勉強を教える場所ですが、3月からスタートしたリーダーズカフェが自由に使えます。公的な場所を有料で借りなくてもいいので、長く続けることができそうです。生徒さんについては、無料ですし、私たちの存在を知ってさえもらえれば、生徒さんはそれほど苦労せず集まるのではと(実際はそうでもなかったんですが...)。リーダーズカフェの活動としては、日経読む会の「一本足打法」だったので、学生が集まるきっかけとしても申し分ないとも思いました。

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