人新世の「資本論」

マルクス主義の経済思想家 斎藤幸平さんの著書。

久しぶりの書評です。

通勤時間=読書時間だったのがなくなりペースは落ちたものの読書はしていましたが,筆が進まず…。

久しぶりに書きたい意欲が刺激された本です。

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マルクスといえば「資本論」と習ってきましたが,「資本論」を出した後…晩年のマルクスは「資本論」とは全く異なるビジョンで社会を研究していたことがわかります。

人新世とは,人類の経済活動が地球を破壊する環境危機の時代を指す。

生産力の向上である「生産力至上主義」が無限の経済発展を目指す資本主義を止めなければ,人類の歴史が終わる。

現に,資本主義の長期停滞により不平等と貧困をもたらし,加速主義が個人間の競争を激化させて弱者に手を差し伸べる余裕がない。


これからは減速主義で平等と持続可能性をもたらす「脱成長コミュニズム」が世界を救う。

1.使用価値経済への転換
2.労働時間の短縮
3.画一的な分業の廃止
4.生産過程の民主化
5.エッセンシャル・ワークの重視

といった五本柱で脱成長を進めていくのである。


晩年のマルクスは,

生産を「使用価値」重視のものに切り替え,無駄な「価値」の創出につながる生産を減らして,労働時間を短縮すること労働者の創造力を奪う分業も減らす。
労働者は生産にまつわる意思決定を民主的に行う。

であり,その結果,経済の減速となる。


脱成長コミュニズムは,資本主義よりも人間の欲求を満たしながら,環境問題に配慮する余地が拡大できる。


資本主義生活にどっぷり浸かり,慣れ切っている。

それでも今から脱成長を目指し,すぐにやれること・やらなくていいことを認識して取り組んでいかなければ人類は終わる。

3.5%が動けば社会が大きく変わるという研究もある。

あなたが,この書籍を手に取って読んで,その3.5%に加わる決断をするかどうか。

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久しぶりに衝撃を受けた本でした。

読み始めて,著者は天才かと思ったぐらいです。


著者はNHKの100分de名著でマルクスの資本論を手掛けています。

改めて資本論を見直すきっかけに100分de名著もオススメです。


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