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【書籍】振り返りを活かす1on1の実践法ー冨山真由氏ー日経ビジネス記事より

 日経ビジネス2024/7/22の記事に『1on1の質問術 部下の「分かっているけどできない」を解消する』が掲載されていました。

 この記事では、部下の主体性を引き出すための1on1ミーティングの進め方について、行動科学に基づいた具体的な方法を解説しています。特に、2回目以降の1on1で効果を発揮する「振り返りを交えた1on1の実践方法」に焦点を当てています。1on1を実施するにおいて、1回目はまずまずうまくいくことも多いですが、2回目はなかなか、ということも多いと思いますが、「振り返り」をしっかりと活かすことが重要です。

前回の振り返りを交えた1on1

 1on1は一度きりで終わるものではなく、継続的に行うことで効果を発揮します。2回目以降の1on1では、前回のミーティングの内容を振り返ることから始めます。前回の1on1で話し合った内容や、部下に課題を出していた場合はその進捗状況を確認します。
 この振り返りは、単なる確認ではなく、質問形式で行うことが重要です。「前回の1on1で○○について話しましたが、その後どうでしたか?」といったように、部下の考えや行動を促すような質問を投げかけます。もし部下が課題に取り組めていなかったとしても、頭ごなしに叱るのではなく、「どうしてできなかったのか」を冷静に尋ねることが大切です。

テーマ設定は部下に委ねる

 前回の振り返りが終わったら、今回の1on1で話し合うテーマを設定します。初回の1on1では、部下も緊張していることが多いので、上司がテーマを設定しても構いません。しかし、2回目以降は、部下に「今回は何について話しましょうか?」と尋ねるなど、テーマ設定を部下に委ねるようにしましょう。部下が自分でテーマを設定することで、1on1に対する当事者意識を高めることができます。もし部下がテーマを決められない場合は、「1分間考えてみましょう」などと時間を与え、思考を促します。それでも部下がテーマを決められない場合は、上司が設定しても構いませんが、その際は「私がテーマを設定してもいいですか?」と確認してから行うようにしましょう。

現状の明確化と理想の明確化

 テーマが決まったら、現状の明確化と理想の明確化を行います。どちらを先に行っても構いませんが、状況に応じて順番を入れ替えることも可能です。

 現状の明確化では、設定したテーマについて、現在どのような状況にあるのかを具体的に把握します。
 例えば、目標達成に向けてどの程度進んでいるのか、どのような課題があるのかなどを話し合います。現状を把握することで、部下自身が自分の課題に気づくきっかけになることもあります。

 理想の明確化では、どのような状態になれば目標達成に近づけるのか、どのような状態が理想的なのかをイメージします。このとき、「~しなければいけない」という義務感ではなく、「~したい」という願望に焦点を当てることが重要です。
 例えば、営業成績が伸び悩んでいる部下に対して、「もっと顧客目線で考えなければいけない」と指摘するのではなく、「顧客がどんな説明を聞きたいと思うか」を一緒に考えてみることで、部下の主体的な行動を促すことができます。

 「振り返りを交えた1on1の実践方法」は、部下の主体性を引き出し、成長を促すための効果的な手法です。1on1を単なる進捗確認の場にするのではなく、部下との対話を深めることで、より良い関係を築き、チーム全体の成果向上につなげることができます。

人事の視点から考えてみる

 人事の視点から考えると、この記事で紹介されている「振り返りを交えた1on1の実践方法」は、組織全体の活性化と人材育成に多大な効果をもたらすだけでなく、人事戦略においても重要です。

組織全体の活性化

 1on1は、単なる上司と部下の面談ではなく、組織全体のコミュニケーションを活性化させるための触媒としての役割を果たします。定期的な1on1を通じて、上司と部下の信頼関係が構築され、気軽に相談や報告ができる環境が生まれます。これにより、問題の早期発見・解決が可能となり、組織全体の生産性向上につながります。

 例えば、ある部署で新プロジェクトが立ち上がったとします。プロジェクトメンバーは、1on1を通じてプロジェクトの進捗状況や課題を上司に報告し、アドバイスやサポートを受けることができます。上司は、メンバーの意見やアイデアを聞き、プロジェクト全体の進め方を調整することができます。このように、1on1はプロジェクトの円滑な進行を支え、組織全体の目標達成に貢献します。

人材育成

 1on1は、人材育成においても重要な役割を果たします。この記事で紹介されているように、1on1で部下にテーマ設定を委ねたり、理想の状態をイメージさせたりすることで、部下の主体性を育むことができます。主体的な社員は、自ら課題を発見し、解決策を考え、行動に移すことができます。

 例えば、ある社員が1on1で自身のキャリアパスについて相談したとします。上司は、社員の強みや弱み、キャリア目標などを一緒に確認し、具体的なキャリアプランを立てるサポートをします。また、必要な研修や資格取得の情報を提供したり、社内のメンターを紹介したりすることもできます。このような1on1での対話は、社員のキャリア開発を促進し、組織全体の能力向上につながります。

人事施策との連携

 1on1は、人事評価制度や研修制度など、他の人事施策との連携を強化する上でも有効です。1on1で得られた情報は、人事評価の客観的な指標となり、社員の能力や成果をより正確に評価することができます。また、1on1で明らかになった課題に基づいて、適切な研修プログラムを設計・実施することで、より効果的な人材育成が可能になります。

 さらに、1on1で得られた情報は、組織全体の課題やニーズを把握するためにも活用できます。例えば、多くの社員が同じような課題を抱えている場合は、組織全体の研修を実施したり、業務プロセスを見直したりする必要があるかもしれません。

まとめ

 1on1を単なる面談として捉えるのではなく、組織開発・人材育成のための戦略的なツールとして活用する必要があります。1on1を通じて、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、組織全体の成長を促進することが、人事の重要な役割といえるのではないでしょうか。

マネージャーと従業員が1on1ミーティングを行っています。マネージャーはメモを取りながら従業員の話に耳を傾け、従業員は自身の進捗状況を説明しています。デスクの上にはノートパソコンやノート、コーヒーカップが並び、背景には大きな窓から都会の景色が見えます。ビジネスカジュアルな服装の二人が、プロフェッショナルでありながらもリラックスした雰囲気の中で建設的な会話をしている様子です。部下の主体性を引き出し、成長を促すための1on1ミーティングの重要性を強調しています。

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