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1on1を成功に導く3つのコミュニケーションスキル:傾聴・質問・認知

 1on1は、上司と部下が1対1で対話する貴重な機会であり、互いの理解を深め、信頼関係を構築し、成長を促進するための重要なツールです。この時間を最大限に活かすためには、効果的なコミュニケーションスキルが不可欠です。ここでは、1on1を成功に導く3つの重要なスキル、傾聴・質問・認知について、詳細な解説と具体的な事例を交えて考察します。


傾聴

 傾聴とは、相手の話に深く耳を傾け、その言葉の裏にある感情や意味を理解しようとするコミュニケーションスキルです。1on1においては、ただ単に話を聞くだけでなく、相手の言葉に込められた想いや意図を汲み取り、共感を持って受け止めることが重要です。1on1は「傾聴」から始まると言っても過言ではなく、メンバーの話をしっかりと聴くことで、信頼関係を築き、本音を引き出すことができます。

「相手に焦点」を意識する

 1on1では、自分の考えや意見を伝えることよりも、相手に焦点を当てて話を聴くことが大切です。相手の言葉だけでなく、表情や声のトーン、身振り手振りなど、非言語的な情報にも注意を払い、相手の感情や考えを理解しようと努めましょう。「相手に焦点」を意識することで、表面的な言葉だけでなく、その裏にある真意や感情を読み取ることができます。

非言語スキルを活用する

 相手の話に集中していることを示すために、頷き、アイコンタクト、適度な相槌などの非言語的なコミュニケーションを積極的に活用しましょう。相手のペースに合わせて、ゆっくりと話す、間を置くなど、相手の気持ちに寄り添う姿勢を示すことも大切です。これらの非言語的なサインは、相手に安心感を与え、より深く話したいという気持ちを引き出す効果があります。

言語スキルを活用する

 相手の言葉を繰り返したり、要約したりすることで、自分が正しく理解しているかを確認し、相手に安心感を与えましょう。「〜と感じたのですね」「〜ということでしょうか」など、相手の感情を反映した言葉を使うことで、共感を示し、より深い理解へとつながります。相手の言葉に丁寧に耳を傾け、共感を持って受け止めることで、信頼関係を築き、本音を引き出すことができるでしょう。いわゆる「アクティブ・リスニング」に当たるものです。

評価・判断をしない

 1on1では、相手の話を評価したり、判断したりするのではなく、ありのままを受け止めることが重要です。たとえ自分と異なる意見や考え方であっても、まずは相手の立場に立って理解しようと努めましょう。頭ごなしに否定したり、自分の意見を押し付けたりするのではなく、まずは受け入れる姿勢を示すことで、相手は安心して自分の考えや気持ちを話すことができます。

質問を効果的に使う

 相手の話を深掘りするために、適切な質問を投げかけることも大切です。しかし、矢継ぎ早に質問したり、詰問するような態度を取ったりすることは避け、あくまで相手のペースに合わせて質問するようにしましょう。質問は、相手が自分で答えを見つけ出すための手助けとなるようなものが効果的です。質問については、次項で深掘りでします。

質問

 質問とは、相手から情報を引き出し、思考を深め、新たな気づきを与えるためのコミュニケーションスキルです。1on1では、相手の考えや感情を引き出すような質問をすることで、より深い対話へと導くことができます。

オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンを使い分ける

 オープン・クエスチョンは、「はい」か「いいえ」で答えられない質問で、相手の考えや意見を引き出すのに効果的です。「どう思う?」「どんな風に感じた?」といった質問は、相手に自由に話してもらうきっかけになります。一方、クローズド・クエスチョンは、具体的な情報を収集したり、確認したりする際に役立ちます。「いつまでにできますか?」「誰に相談しましたか?」といった質問は、具体的な回答を得るのに適しています。状況に応じて、両者を使い分けることで、スムーズなコミュニケーションを促しましょう。

4つの観点から質問する

 1on1では、テーマ、未来、現在・過去、人の4つの観点から質問することで、多角的な視点から話を深めることができます。

 テーマに関する質問は、課題や目標について掘り下げるのに役立ちます。「目標達成のために、他にどんな方法があると思いますか?」といった質問は、新たな視点や解決策を見つけるきっかけになるでしょう。

 未来に関する質問は、目標達成に向けた具体的な行動や計画を引き出すことができます。「この目標を達成したら、次は何をしたいですか?」といった質問は、メンバーのモチベーションを高める効果があります。

 現在・過去に関する質問は、過去の経験や成功体験を振り返り、そこから学びを得る機会を提供します。「過去の成功体験から、今回の課題に活かせることはありますか?」といった質問は、メンバーの成長を促すでしょう。

 人に関する質問は、人間関係やチームワークに関する課題を浮き彫りにすることができます。「チームメンバーとの関係で、何か気になることはありますか?」といった質問は、チーム全体の改善点を見つけるきっかけになるかもしれません。

質問の意図を明確にする

 質問をする前に、その質問を通じて相手に何を伝えたいのか、どのような反応を引き出したいのかを明確にしましょう。質問の意図が明確であれば、より効果的な質問をすることができます。
 例えば、メンバーのモチベーションを高めたい場合は、「この仕事でどんなことを楽しみにしていますか?」といった質問が効果的です。一方、問題解決を促したい場合は、「この問題を解決するために、どんな方法が考えられますか?」といった質問が良いでしょう。

質問の言葉を工夫する

 質問の言葉遣いや言い回しによって、相手の反応は大きく変わります。例えば、「なぜできなかったのか」という質問よりも、「次はどのようにすればうまくいくと思うか」という質問の方が、相手を責めることなく、前向きな解決策を引き出すことができます。また、「〜すべきだ」という断定的な言い方よりも、「〜してみるのはどうでしょうか」という提案型の言い方の方が、相手も受け入れやすいでしょう。

沈黙を恐れない

 質問をした後、相手がすぐに答えられない場合でも、焦らずに沈黙を待ちましょう。沈黙は、相手が深く考える時間を与え、より深い回答を引き出すきっかけになることがあります。無理に会話を続けようとするのではなく、相手に考える時間を与えることも、1on1では重要なことです。

認知

 認知とは、相手の存在や価値を認め、肯定的な評価を与えるコミュニケーションスキルです。1on1では、相手の行動や成果だけでなく、その背後にある努力や成長を認め、感謝の気持ちを伝えることが重要です。メンバーのモチベーション向上や自己肯定感の向上につながり、より良い関係を築く上で欠かせない要素です。

「I(私)」メッセージで伝える

 相手を評価する際には、「あなたはすごい」という「You(あなた)」メッセージではなく、「私はあなたの〜に感心しました」というIメッセージで伝えるようにしましょう。Youメッセージは、評価や判断が含まれているように受け取られやすく、相手によっては反発心を抱く可能性があります。一方、I(私)メッセージは、主観的な感想として伝えるため、相手も受け取りやすく、より感謝の気持ちが伝わりやすくなります。Youメッセージの影響について、詳しくは以下にもまとめましたので参照ください。

結果・行動・人柄の3つの観点から認知する

 認知は、結果や行動だけでなく、相手の人柄や価値観にも目を向けることが大切です。例えば、目標を達成した場合は、その結果だけでなく、目標達成に向けた努力や工夫を認め、感謝の気持ちを伝えましょう。「目標達成、おめでとう!最後まで諦めずにやり遂げたことは本当にすごいと思うし、私も励まされました」のように、結果とプロセス、そしてそれに対する自分の気持ちを伝えることで、より深い認知になります。

 また、普段の仕事ぶりやチームへの貢献など、目に見えない部分にも目を向け、相手の人柄や価値観を肯定的に評価することも大切です。「いつも周りを気遣ってくれてありがとう。あなたの気配りのおかげで、チームの雰囲気がとても良いと感じています」のように、具体的な行動とそれに対する自分の気持ちを伝えることで、相手は自分の価値を認められたと感じ、モチベーションを高めることができます。

具体的な言葉で伝える

 抽象的な言葉ではなく、具体的なエピソードや行動を交えて伝えることで、相手はより深く感謝の気持ちを受け取ることができます。例えば、「いつもありがとう」と言うだけでなく、「昨日のプレゼンテーション、資料がとても分かりやすくて、お客様からの評判も良かったよ」など、具体的な内容を伝えることで、相手は自分の行動が評価されたことを実感し、モチベーションを高めることができます。具体的な言葉で伝えることで、相手は自分の強みや改善点に気づくことができ、さらなる成長につながるでしょう。

タイムリーに伝える

 認知は、できるだけタイムリーに伝えることが重要です。良い行動や成果があった直後に感謝の気持ちを伝えることで、相手のモチベーションを維持・向上させることができます。また、定期的な1on1の場だけでなく、日常業務の中でも積極的に認知を行うことで、より良い人間関係を築くことができます。日頃からメンバーの行動や成果に目を向け、良い点を見つけたらすぐに伝えるように心掛けましょう。

上司と部下が1on1ミーティングを行っている様子を描いています。上司は真剣に耳を傾け、目を見て頷きながら相手に焦点を当てています。部下は自信を持って話し、意見を共有しています。背景には本棚やオフィスの装飾があり、プロフェッショナルで温かみのある環境を感じさせます。このシーンは、効果的なコミュニケーションを象徴しており、上司が積極的に聴き、部下が安心してアイデアを話す姿を強調しています。全体的に、ソフトで温かい色合いがポジティブでサポート的な雰囲気を作り出しています。

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