見出し画像

【書籍】AI時代における問いの設定力:価値創造への鍵ー日経ビジネス記事より

 日経ビジネス2024/6/20の記事に『AI時代に必要な「問いの設定力」 視点と視座から考える』が掲載されていました。ChatGPTなどのAIを活用する上で重要となる「問いの設定力」とは、単に質問を投げかける能力ではなく、課題解決や新たな価値創造へと繋がる問いかけを生み出す力です。AIは与えられた問いに対して効率的に答えを導き出すことができますが、どのような問いを設定するかは人間の役割となります。

 問いの設定力を高めるためには、まず課題全体を俯瞰し、その中から具体的な問題点を抽出する必要があります。そして、その問題に対して「なぜこの問題が起こっているのか?」(WHY)、「どこでこの問題が起こっているのか?」(WHERE)、「この問題を解決するにはどうすれば良いか?」(HOW)というように、段階的に問いを深掘りしていくことが重要です。

 例えば、企業の業績が低迷しているという課題があったとします。この場合、「業績が低迷しているのはなぜか?」という問いから始め、「特定の商品が売れていないからか?」、「競合他社にシェアを奪われているからか?」といったように、具体的な要因を特定するための問いを立てていきます。そして、要因が特定されたら、「どうすればこの問題を解決できるか?」という問いを立て、具体的な解決策を模索していくのです。

 さらに、問いの設定力を高めるためには、自分自身だけでなく、チームや会社といった異なる視点から問いを立てることも重要です。例えば、先ほどの業績低迷の例で言えば、「自分だったらどうするか?」という問いだけでなく、「チームとしてどうすれば良いか?」、「会社としてどう取り組むべきか?」という問いを立てることで、より多角的な視点から問題を捉え、より効果的な解決策を見出すことができるかもしれません。

 AI時代において、リーダーは単に問題を解決するだけでなく、新たな問いを提起し、組織を新たな方向へと導く役割が求められます。そのためには、自らの哲学や価値観に基づき、情熱を持って問いを追求し続ける姿勢が不可欠です。ソクラテスや福沢諭吉、ネルソン・マンデラといった偉人たちは、常に大きな問いに向き合い、その答えを追求することで、社会に大きな変革をもたらしてきました。私たちも彼らのように、問い続けることで、より良い未来を創造していくことができるのではないでしょうか。

人事の視点からAI時代の「問いの設定力」を考える

 人事の視点から考えると、AI時代の「問いの設定力」は、採用、育成、評価、配置といった人事戦略全体を根底から覆すほどのインパクトを持つでしょう。従来の人事戦略は、過去の経験やスキルに基づいた人材評価や配置が中心でしたが、AI時代においては、変化に対応し、新たな価値を創造するための「問いの設定力」がより重要視されるようになります。なぜなら、AIは既存の知識や情報を処理する能力に長けていますが、新たな問いを立てる、未知の課題を発見する、といった創造的な領域においては、人間ならではの能力が不可欠だからです。

 採用活動においては、単に知識やスキルだけでなく、未知の状況に対してどのように問いを立て、課題を発見し、解決策を導き出すことができるのか、というポテンシャルを評価する必要があります。
 例えば、面接において、「あなたが今までに直面した最も困難な課題は何でしたか?そして、その課題に対してどのように取り組みましたか?」といった質問に加え、「もしあなたが全く新しい市場に参入するとしたら、どのような問いを立て、どのような情報を収集し、どのような戦略を立案しますか?」といった質問をすることで、候補者の「問いの設定力」をより深く見極めることができます。

 育成においては、社員一人ひとりが主体的に問いを立て、課題を発見し、解決策を提案できるようになるための研修プログラムの開発が重要です。例えば、デザイン思考やシステム思考といった、問題解決やイノベーション創出に役立つ思考法を学ぶ研修や、異業種交流会や社内アイデアコンテストなどを通じて、社員が新たな視点や発想に触れる機会を提供するといった取り組みが考えられます。また、メンター制度やコーチング制度を導入し、経験豊富な社員が若手社員の「問いの設定力」を育成するサポートをすることも有効です。

 評価においては、従来の成果主義的な評価だけでなく、社員がどのような問いを立て、どのような課題を発見し、どのような解決策を提案したのか、といった過程を評価する必要があります。例えば、目標管理制度において、目標達成度だけでなく、目標設定の妥当性や目標達成に向けたプロセスにおける創意工夫、課題発見能力などを評価項目に組み込むことで、社員の「問いの設定力」を多角的に評価することができます。

 配置においては、社員の「問いの設定力」や変化への対応力といったポテンシャルを考慮し、将来の成長を見据えた配置を行う必要があります。例えば、「問いの設定力」が高い社員を、新規事業開発部門や研究開発部門といった、新たな価値創造が求められる部署に配置することで、その能力を最大限に活かすことができます。また、定期的なジョブローテーションや社内公募制度などを活用し、社員が様々な部署や職種を経験することで、多様な視点や発想を養い、「問いの設定力」をさらに高める機会を提供することも重要です。

 人事部門は、これらの採用、育成、評価、配置といった人事戦略全体を通じて、社員一人ひとりの「問いの設定力」を高め、組織全体の創造性とイノベーション能力を向上させる役割を担っています。AI時代において、人事部門は、単なる人材管理部門ではなく、企業の成長を牽引する戦略的パートナーとしての役割を担うことがますます期待されるでしょう。

多様なチームが協力して働いている様子を描いています。中央では、リーダーが議論を促進し、「なぜ?」「どうすれば?」「もし~なら?」といった深い戦略的な質問をチームメンバーに投げかけています。周囲には、AIの分析を表示するデジタルスクリーンや、タスクを支援するロボット、付箋や図が貼られたアイデアボードが配置されています。雰囲気は革新的で、問題解決に集中しており、AI時代における問いの設定力の重要性が強調されています。リーダーシップとチームの協力によって、効果的な問いを設定し、新たな価値を創造するプロセスを視覚的に表現しています。AIを活用しながらも、人間の創造力と洞察力が鍵となることが伝わってきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?