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ムダに教養がつくかも知れない不定期な雑学講座の連載(講義中は寝ないこと)~世界宗教の基礎知識2「仏教」をひもとく 第2講 大乗仏教の成立 その12

禅とは、信仰ではなく「修行」である

「禅」の発祥は、実はインドではなく、中国で生まれた考え方です。
 中国において、出家者のコミュニティがうまれ、
それが、原始仏教の修行の一つである「禅定」と結びつき、
仏教集団になったのが起源であるとされています。
日本でいえば「修験道」と真言密教との
つながりのようなものかも知れません。

 その開祖とされるのが、5世紀後半に南インドから中国に渡った
「菩提達磨=達磨大師」です。

そして、それを日本に伝えたのが、
鎌倉時代に当時の中国の王朝である、宋に渡った栄西と道元です。
そしてこれが日本における「禅宗」の始まりとなりました。

禅宗には特定の根本経典はありません。
すなわち、禅宗においての重点は、経典の教えよりも
「生活の構え」がベースになっているのが特徴です。

 禅とは信仰ではなく修行である、
という構えはここから来ています。
禅においては、「自らの中にあるブッダに気づく(見性成仏)」
 ための修行方法としての「座禅」を重視しているわけなのです。

自分の中にあるブッダ(仏性)とはなにか

 それでは、自らの中にある「仏性」に気づくには
どうしたらいいでしょうか?というのが 禅の大きな目標ですが、
具体的にいうとどんな意味なのかということになります。
 
そもそも「仏性」とは何なのかということに帰着しますが、
まぁ、ぶっちゃけていえば「諸法無我」という、
自己も世界もない、「かれもわれもない」という、
本来の世界観のようなものに立ち返る。
ということになりましょう。

禅とは、雑念を打ち払うために、
自らの思考を内に内に向かわせることで、
雑念を払って「本来の自己」を見つめ直すことです。
ただ、そのアプローチに関していえば、
宗派によって様々あります。

 たとえば、道元を開祖とする曹洞宗だと、「只管打坐」という、
ひたすら座禅しなさいということが尊重されます。
これはすなわち座ることがそのまま悟りの現れである、
だからそれも打ち込めばそのまま修行である。
という「修証一等」という方法をとります。

 それに対し、栄西の臨済宗では、
それに加えて「公案」と呼ばれる禅問答の解析を重視しています。

 禅問答は、普通に考えれば全く意味不明ですが、
悟りへの道をきちんと示していますので、
これに「気づく」ことが「悟り」に至るという考え方です。

 しかしながら、「公案」は理の通った正解などは存在しません。
そもそも臨済宗では、この世には決まった答えなど存在しない。
と考えるからです。
 確かに世の中全体を見ると「絶対的な正解」などは
考えればあり得ないですね。
そう考えれば、このスタンスはよく理解できます。

 「公案」という禅問答においては、答えの正しさ、
というより、おのおのが導き出したその「答え」が、
どのような心の動きで導き出されたんだ?
という問いなのだということです。

この繰り返しで、自らの心を研磨して「煩悩」を制するという、
「自己鍛錬システム」になっていると言えます。

 この点で、「原始仏教」と「大乗仏教」の
建設的な融合であるのかも知れません。
ただ、こういう思想に至るには、
相当な苦労があったと考えられます。
道元が禅を日本に伝えるとき、たぶん悩んだであろうと思います。

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禅とは、自分がブッダであることを、真実の中で確認する作業

 そもそもの仏教の教えとは、
「自分の力で煩悩を消して悟りを開く」というものでした。
しかし、大乗仏教の基本的なスタンスは
「人は生まれながらにしてブッダになる素質(仏性)をもっているので、
はじめから仏である」という如来蔵思想です。
 
 理論的には相反するので、道元さんも
かなり悩んだであろうことは想像できます。
 このあたりの思想の経過については、
「尽十方界」の観点のような、少し難解な考え方になりますが、
ぶっちゃけた言い方をすれば、

 「禅においての坐禅とは、煩悩を消す修行ではなく、
自らがブッダであることを確認することである。」


 というスタンスです。

こう考えると道元の考え方は
かなり原始仏教に近いものがあったと考えられますが、
それを「大乗仏教」の世界観との整合を図ったというのが、
いささか乱暴ではありますが、
ざっくりとした道元の禅のスタイルでしょう。
その結論が、「只管打坐」。すなわちひたすら座る事だったのです。

さて、日本においての禅宗は、
臨済宗は室町幕府の庇護を受けて武家や公家に広がり、
曹洞宗は地方の豪族や農民を中心に広まっていきました。

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