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金田一春彦先生の思い出

 金田一 春彦(きんだいち はるひこ)先生は、日本の言語学者・国語学者で、国語辞典などの編纂、日本語の方言におけるアクセント研究で知られています。先生はテレビでの露出も多く、その昔、タモリさんの『笑っていいとも!』にレギュラー出演していたので、ある年代以上なら覚えている人も多いかもしれません。今なら息子さんの金田一秀穂さんの方がお茶の間での馴染みが深いので、金田一秀穂先生のお父さんと言った方が若い人にはわかりやすいかもしれません。

 20年以上前になりますが、羽田空港で金田一春彦先生をお見かけしたことがありました。私は飛行機の搭乗まで時間があったので、何かお腹に入れておこうと、搭乗口近くの売店でサンドイッチとビールを注文して、店内のイートインスペースで食べようとしていました。すると、同じ店に見たことのある人物が入ってきました。それが金田一春彦先生でした。

 先生はピシッとした和服姿でしたが、不思議と威圧感はありませんでした。テレビで見るようなおっとりとした、優しいお爺ちゃんといった感じでした。金田一先生が、何かを注文するために店員さんの方に近づいて行きました。国語学の権威である大先生は、一体何を注文するのだろうと興味津々でチラチラ見ていました。金田一先生は小声だったので何と言ったのか聞き取れませんでしたが、店員さんが大きな声で復唱したので何を注文したのかわかりました。

 「苺フラッペ、おひとつですね」。なんと注文したのは、苺フラッペでした。金田一先生苺フラッペのミスマッチに驚きました。最初は、金田一先生は別のものを注文したのに、声が小さくて間違って伝わってしまったのかもしれないと思いましたが、金田一先生の表情をチラ見すると嬉しそうな表情でした。「あれっ、やっぱり苺フラッペで合ってたんだ」と思い直しました。

 金田一先生は言語学者で、日本語の音やアクセントが専門です。特に音韻については、用例ハンターみたいなところがありました。正確な記憶ではありませんが、アン・ルイスさんと桑名正彦さんが子供に”みゅうじ”君と名付けた話を聞いて、日本語で初の”みゅう”と言う音韻の用例だと興奮気味に話していたことを思い出しました。

 私の勝手な解釈ですが、金田一先生は”フラッペ”そのものよりも、その音韻に興味を惹かれたのではないかと思いました。日本語には”ラッパ”の音はありましたが、”ラッペ”の音は初めての用例だったかもしれません。これは私の勝手な深読みで、本当は単純にかき氷が好きだっただけかもしれません・・・。

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