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#35「今までの人生のターニングポイント」



インドのコルカタに,マザーテレサハウスってのがあって、
この街に行くと、
ほとんどの人がそのマザーテレサハウスにボランティア行く。

当時の僕(27歳)はボランティアってのがあんま好きじゃなくって
(3.11の地震でボランティアは好きとか嫌いじゃないって思った)
僕は行かんでいいかなって思ってたんだけど、

髪を切りながら世界一周してたので、
髪も切れるかもって聞いて、行ってみるかって軽い気持ちで行ってみた。

ミサ(お祈り)が終わって、
シスターのとこ行って
「僕、髪切れます、もし髪切る必要がある人達がいるとこがあればそこに行きたいです」
と伝えたら、
「では、あなたはハンディキャップを持つ孤児の家に行って子供たちの髪を切ってあげてほしいわ」

と言ってくれて、その孤児の家(保育園みたいな場所)にハサミ持って行った。

その日は誕生日会だったみたいで、
園内には風船がいっぱい転がってて、
子供たちが大はしゃぎしてた。

ざっと見渡して、
子供は全員で30人くらいいた。
園内はブロッコリーくらいの広さ。(小学校の教室くらい)
※マザーテレサ内は写真禁止やから想像ふくらまして読んでください。

「次、いつ切れるか分からないので短く切ってあげてね」
とスタッフさんのオーダーを受けて、
一人ずつ階段の踊り場に来てもらって髪切った。

子供達はみんなハンディキャップ(何かしらの障害)をもってるから、
みんな暴れる、叫ぶ、泣く。

スタッフさん2人がかりで抑えてもらって、
男の子はほぼ坊主、
女の子はほぼボブまで短くして、
3時間くらい切り続けた。

ほとんどの子供を切り終えて、
まだ切ってへん子おるかなぁと園内を見渡すと、
教室の一番後ろの窓際の机に、
伏せてる女の子が目に入って、

そういえばあの女の子(小学校高学年くらい)、
僕が来たときからあの状態やったな。
と思って、

「あの女の子はどないしたん?泣いてる?寝てるん?」

とスタッフさんに聞くと、

「あの子は重い自閉症の子で、
自分で立つことも、歩くことも、
話すこともできない子なの。」

と教えてくれた。

「最後にあの女の子を切ってあげてもいいですか?」

と伝えて、
2人がかりでその女の子の肩をかかえて踊り場までやっとのことで連れてきて、
椅子に座ってもらった。

椅子に座っても下を向いたままの女の子にカットクロスつけて、

いつから切ってないのかわかららないくらい長い髪を、

肩のラインでスパッとシンプルな可愛いボブに切った。

ポンポンって肩たたいて、

「ほら、可愛くなったで」

と伝え、
うつむいてる顔の下に手鏡もっていき、
自分のヘアスタイルが見えるようにしてあげた。

そしたらその女の子、

鏡を見て、

すっと顔上げて。

今まで力なくグッタリしてた体を起こして立ち上がった。


そして、

その子が僕の手をとってくれて、

手つないで園内を歩き出してくれた。


園内をぐるっと散歩して、

最後に僕の顔を見て、

声は出てなかったけど、

「thank you

と口を動かしてくれた。

思い出しても泣けてくる嘘みたいな本当の出来事。


この出来事で、

「僕は髪を切ることで人の人生を変えられる。」

と思えるようになり、
美容師という仕事に誇りを持って、
一生続けていこうと思えた。

僕の美容師としての、
今までの人生のターニングポイントの話。


これから先、どんな人生の岐路があるかわからないけど、
その道を選んだことを後悔しないように
一分一秒大切に生きていこうと思う。

fin.



髪切ります