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コーチが真っ先に理解したい「コミュニケーション・スタイル」とは?

コーチングという仕事の中で、クライアントのコミュニケーションの特徴について理解しておくことがとても重要になります。
それを理解することで、相手への質問での言葉選びや、同意の仕方も変わっていきます。しかし、これはコーチの特殊技術ではなく、おそらくコミュニケーションに配慮している人は無意識のうちに行っていることかもしれません。簡単に言えば「相手によって言葉を選ぶ」ということでしょうか。

コーチングのテーマは様々ですが、ビジネスの場においてはコミュニケーションの質を上げたい、関係性の良化などを目標にしてクライアントとの対話を行うことが少なくありません。

管理職になった。
チームリーダー任命された。
新しいチームに加わった。等々、
人との新たな関係性を生じる状況になった時に、どんな人との出会いがあるだろう?という期待とともに、対人関係の不安が頭をもたげるのは当然のことです。
ここで、個々人の「コミュニケーションの特徴=コミュニケーション・スタイル」を理解しておくことは大切ですね。

それについて、コーチングの舞台裏と共に少しご紹介していきましょう。

コーチング原則のひとつ「個別対応」

コーチングの原則のひとつに「個別対応」があります。
クライアントが置かれている状況は、ひとつとして同じものは無いので、
それぞれに個別に対応していくのは当然です。
個別対応であるが故に、クライアントのコミュケーションの特徴を理解しておくことがとても大切なのです。

これは私達、プロのコーチのスキルとして必須のものであり、またコーチングセッション(対話)の間、常に配慮していることのひとつです。

コーチングの分野に限らず、教育、スポーツ指導、医療、など、様々な分野で「個別対応」の必要性が求められ、またそれを実施する効果が実証されています。
ですから、例えば30名の部下をもっている管理職なら、30通りの個別対応ができるのが理想のコミュニケーションと言えますが、現実的には難しいです。

そこで、コーチングでは、
「自己主張が強い/弱い」と、「感情表出が多い/少ない」
をタテヨコの軸にとり、

コントローラー、 サポーター、 プロモーター、 アナライザー
の4つにコミュニケーションスタイルを分け、
コーチングセッションでは、これを適宜意識して
対話を進めています。

コミュニケーションスタイルの4類型

4つのスタイルとは、

◎コントローラー(Controller):
自分で判断し、自分で進めていきたい。
人から指示を受けることは嫌い。

◎サポーター(Supporter):
効率や成果より「人」に視点がいく。
「和」を重んじ、他人に気配りする。

◎プロモーター(Promoter):
注目されることがモチベーション。
アイデアマン。人を喜ばせて自分も楽しむ。

◎アナライザー(Analyzer):
正確さ、完全さを好む。
客観的な視点を大切にする。

です。

コーチングの現場では、コーチング開始に先立って行われる「オリエンテーション」で、クライアントのコミュニケーションスタイルを理解するための診断ツール(統計的に裏付けがあるもの)を用いて判断していますが、ツールを使用せずとも、普段の仕事の進め方やチーム内でのコミュケーションを根気よく観察していくと、少しづつ分かってくるものです。

診断ツールが正解で万能なものではありません。観察にしても勘違いが起こります。しかし大切なのは、個々のコミュニケーション・スタイルに関心をもって臨むということ、コミュニケーション・スタイルを「個性」として尊重する考え方です。

これはコーチとクライアントとの間のコミュニケーションだけでなく、様々な領域で有効です。上司と部下、チームリーダーとメンバー、スポーツ指導者と選手の間にも当てはまります。

スタイルの理解は性格診断やレッテル貼りではない

誤解して頂きたくないのは、コミュニケーションスタイルを4類型で俯瞰してみるということは、性格診断や、「あなたは○○タイプ」という様な
レッテルを貼ることではなく、全く逆で、「人に対する固定観念を払拭する」ことを目的としています。

固定観念とは恐ろしいものです。
例えば、相手に対して「あの人はこういうキャリアを歩んできたから、こういう考えを持っているのでは?」とか、
若いから、年配だから、男性だから、女性だから、等々、
人は無意識のうちに固定観念が生み出すレッテルを相手に貼りがちです。

そこで、コミュケーションスタイルを客観的に「観察」し(コーチングでは質問リストへの回答で数値化します)、前述の4つのどれが強くでる人か? 
2番目に強く出ているスタイルは何か?
どの様な状況で、典型的なスタイルが表出するか?等々、
ひとつの客観的指標を参考にすることで、感情や無意識が生み出す「先入観」を払拭するわけです。

「人を観察してコミュケーション方法を考える」というと、えらく面倒であり、また不誠実なことの様に思えるかもしれませんが、

人と良いコミュケーションをとっている人、
分かりやすい言葉で人を導く人、
対人影響力を持っている人、
これらの人達は、無意識のうちにこれを実践していると言えます。

コーチングのスキルをクライアント自身も活用できる

コーチがこのコミュニケーションスタイルの理解を形式知として学んでいるひとつの理由は、クライアントにもこの視点、すなわち
「相手のコミュニケーションスタイルを考える」
を持ってもらうことが有効なケースが少なくないからです。

どうも上司との話がかみ合わない。
部下が私の言葉に無反応。理解しているのだろうか?

などがクライアントの気がかりとなっているとき、コミュニケーションスタイルを紹介し、相手はどのスタイルは強くでるタイプなのか?を、コーチからの質問によって考えてもらうわけです。

コミュニケーションスタイルが分かれば、魔法の様に関係性がよくなるとか、コミュニケーションの質が良くなる、というわけではありません。

しかし、普段自分が何気なく使っている言葉や、仕草、そして相手のタイプを観察するという非日常的なことに視点を向けることで、コミュニケーションについて、客観的に考えてもらう機会となります。

ここに明らかなコーチングの価値があると思っています。

安藤秀樹
株式会社ドリームパイプライン代表

公式ホームページ: https://dreampipeline.com
お問い合わせ先: hideki.ando@dreampl.com

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