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映画のお話を少々・・・(その2)

昨年の8月の記事で、アメリカの古典映画のファンであることを書き、シドニーポワチエの「招かれざる客」をご紹介しました。
その時にも感銘を受けた作品としてあげましたが、
「12人の怒れる男(1957年)」についてお話したいと思います。

最近「心理的安全性」、「アサーティブネス」、「同調圧力」などについて考えているうちにこの映画を思い出し、DVDを引っ張り出してみた次第。
僕が生まれた年のモノクロ作品ですが、名作の魅力は褪せませんね。
勇気と正義を教えてくれるアメリカ古典映画の典型です。


12人の怒れる男 (あらすじ)

法廷ドラマの金字塔、と言われる本作品のあらすじは
ご存知の方も多いと思いますが、こんな内容です。

18歳の少年の父親殺しという第一級殺人裁判の
評決を託された12人の陪審員が、陪審員室という
単一の舞台設定の上で展開するドラマです。

有罪なら間違いなく死刑、という若者の命がかかった
評決をする責任があるにもかかわらず、
「簡単に有罪で決着する簡単な評議」という
雰囲気に溢れる陪審員室。

しかも、陪審員の中には、「ヤンキースのナイターを観に
行くので、早いとこ終わらせたい」もの。
「ああいう連中は・・」と人種に偏見を持つもの。
他人の議論の最中に自分のコピーライトを隣の人に
見せている広告マン。 等々・・・・。

自分の信念を表明するチャレンジ

議長の「挙手による採決案」に、早く済むから良いと多くが同調します。

「有罪」と思う方は挙手を、の議長の声掛けに11人が手を上げる。

しかし、しかし、ただ一人、ヘンリー・フォンダ演じる陪審員8番だけが、無罪に挙手をする。

「本気で無罪だと信じているのか?」と詰め寄られると
「わからない」、しかし「話したい」と。

ここから、長いドラマが始まるのです。

この後、陪審員一人一人が有罪に挙手した理由を述べるのですが、
おとなしそうに見える陪審員1番は
「言葉にするのは難しいのだが・・・」
「でも有罪だと思う」と・・・

陪審員8番との違いが浮き彫りです。

「わからない」、でも「話し合いが必要だ」と
自分の信じることを表明するか、
「わからない」、だから周囲に迎合しておこう、と考えるか。

私達の日常にも起こり得るシチュエーションですね。
陪審員8番の様にありたいものです。

有罪か無罪か? 無罪なら何故?と有罪への反証を重ねていく、「法廷サスペンスもの」という見方もできますが、この「解き明かし」の筋書きはさほど凝ったものではありません。

「人の考えや振る舞い」が見どころです。

この作品を観て改めて思うことは、

・人は自分の世界観で物事を見ているものである。
 その世界観には、個々人の信条、人生経験、家族、
 コミュニティーが大きく影響する。
 特に、他人への偏見を持っていれば、それは凄く危険なものである。
・意識的にも、無意識でも人は自分の都合の良い方に物事を運びたがる。
・自分の意見や考えを持たない人、持とうとしない人は、当然の様に周囲に同調する。
・同調圧力に屈せず自分の考えを述べることの大切さ。
・そして、大切な事を決める時は議論をし尽くす。

でしょうか。

神様が見ている

私がこの作品を観たのが、昭和の昔、毎週日曜日の夜放送されていた
「日曜洋画劇場」です。
映画評論家、故・淀川長治氏の解説で有名でした。

映画ファンだった親が、夜遅くてもこの番組を観ることについては寛容だったのは私の幸運でした。

番組の始めと終わりに淀川さんの解説が入るのですが、最後にこんな解説があったことを、今でも覚えています。

この映画のラストシーン。
男たちが評決を終えて陪審員室から出ていきますねぇ。
その後、カメラは男たちが議論を戦わせていた机の上をずーっと舐めていくんですねぇ。
これ・・・、神様の視点なんですねぇ。
真実、正義を求めて議論を尽くした男たちを神様はじーっと見ていたよ、 いうことなんですねぇ。

(淀川さんのタッチで表現したつもり)・・・と。

へぇ~、上手いこと言うなぁ。
映画評論家というのはこういう視点で作品を観るのかぁ。
と感心したが故に、今でも記憶に残っているのでしょう。

思えば、今日まで神様に見られていても恥ずかしくない
会議、議論、他人への発言、出来てましたかねぇ(汗)。 

何年ぶりかでDVDを鑑賞しながら、そんなことを思ってます。

余談ですが、1997年にリメイク版が公開されています。
「フレンチコネクション」のウィリアム・フリードキン監督で、
主演の陪審員8番は名優ジャック・レモン。

シナリオはほぼオリジナルを踏襲したものですが、12人の構成が人種的に多様化していて、その側面から描かれる会話の軋轢も興味深いです。

どちらの作品もAmazon Prime のレンタルで399円~で鑑賞できます。

吹き替え版と、日本語字幕版がありますが、
日本語字幕版が絶対にお薦めです。声優の方々には申し訳けありませんが、
オリジナルの肉声が持っている熱量は、吹替えでは伝わってきません。

安藤秀樹
株式会社ドリームパイプライン代表

公式ホームページ: https://dreampipeline.com
お問い合わせ先: hideki.ando@dreampl.com

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