見出し画像

成長を助けるものと、障害になるもの

新学期、新年度。
様々なことがスタートし「芽吹き」を感じた春を経て、環境の変化に馴染んできたこの時期、改めて「成長」について考えてみたいと思います。

 天才発掘の可能性 ピアノ VS バイオリン

こんな話を聞いたことがあります。
子供が楽器を習得する際に、バイオリンという楽器は
ピアノに比べて「天才児」が発掘されやすい、と。

何故かと言えば、バイオリンには大人用の基本となる
4/4サイズ(フルサイズ)の他に、子供用として大きいほうから
3/4、1/2、1/4、1/8、1/10、1/16というサイズがあり、
それらの子供用を総称して
「分数バイオリン(分数サイズ)」というものがあるのだそうです。

つまり、未だ手指の小さいお子さん達でも、
小さいサイズのバイオリンから練習を積んで、
身体の成長にあわせて大人用を演奏することができるわけです。

一方、ピアノは3歳児でも大人でも
基本的に同じ大きさの楽器を使います。

昨今、電子ピアノの発達によって、オモチャのピアノとは一線を画した
キッズミニピアノの様な商品も市販されていますが、
本格的に練習するとなると鍵盤の数は減るかもしれませんが、
サイズは大人と一緒。

天才児は、子供の音楽的な感性が楽器演奏を通じて
発見されるので、それが、「扱いが難しい楽器のサイズ」に阻まれる
可能性がある、という理屈です。

大人の指を広げればカバーできるオクターブも、重たいタッチの鍵盤も、
小さな子供にとってはチャレンジです。

パフォーマンスを最大化するには

しかし、それを練習によって克服し、子供なりの練習曲や発表曲が
弾ける様になり、徐々に難しい曲を弾きこなしていくのが、
ピアノレッスンに限らず楽器を学ぶの醍醐味であり、喜びでしょうから、

どちらが良いとか、幼児期のピアノレッスンに対して異論を
唱える意図は毛頭ありません。

この例えでお話ししたいのは、人の成長には「加速してくれる要素」と
「チャレンジとなる要素」が混在しているので、
成長をリードする立場にある人は、様々な視点からそれらの要素に
着目必要があるということです。

私が公認コーチを務める
(一社)日本スポーツコーチング協会では、選手やチームパフォーマンスを
向上させるためには、運動や技術能力を上げること以上に、
弊害を取り除くことの方がより効果的になることを、
研修や指導者へのコーチングで説いています。

これを以下の式で表しています。

P=P-I

最初のP:成果(Performance)
次のP:潜在能力(Potential)
I:弊害/障害(Impediment)

成果(P)を上げるために、潜在能力(P)を急激に伸ばすことは難しいです。

平均得点2点のチームに、「来月までに5点とれる様に、力と技を磨け!」
と言っても現実的ではありません。

潜在能力を伸ばす努力はするにせよ、
同時に弊害(I)を減じることで結果的にPerformanceは向上する、
という理屈であり、多くのケースで効果が実証されています。

弊害となるのは例えば、選手、監督間のコミュニケーションの劣化、
ストレス、プレッシャー、不適切な練習メニューによる残疲労、
指導者が使う言葉、評価方法、等ですが、現場では、
主にコミュニケーションの領域で弊害となるものが散見される様です。

これを改善するために、スポーツ・コミュニケーション・アドバイザーという黒子の役割でスポーツ指導者と対話しています。

さらにピアノの話です

子供のためのピアノ選びでWebを検索してみたら、
練習ピアノの選び方として、この様な記述がありました。

『将来、音大を目指したい、本格的に習いたいということであれば、
幅広く表現するためにアコースティックピアノがお勧めです。

趣味で楽しみたい、楽しみのきっかけ作りをしたいのであれば、
電子ピアノや卓上キーボードがお勧めです。
購入の目的を考えると予算が立てやすくなります。』

・・・とあり、安心しました。
もし、楽器の大きさが音楽的感性の発芽にとって弊害となるのであれば、
キッズ用電子ピアノでガンガン練習して音楽の楽しさ、
自己表現の楽しさを体感することが大事だと思います。

昔と違ってそういうことが可能になっているのですから。

ピアノレッスンで思い出すエピソードですが、
アメリカに住んでいた時、娘さんを地元のピアノレッスンに
通わせている同じ日本人駐在員の方から聞いた話です。

「娘のピアノの先生がね、
“ここの16連符は全部譜面通りに弾かなくていいのよ。
これとこれの2つの音は省いても大差ないから。
その方が楽でしょ?楽に弾ける分、ここでは貴女の感性を表現してね”

と教えるそうなんだ。これがアメリカ流なんだね~」と。

20年以上前に聞いた話ですが、このエピソードは
「16連符を譜面通りに正確に弾く」ということが「プレッシャー」という
弊害になるという一例なのかもしれない、と
コーチングを学び始めてから思った次第です。

スポーツに例では設定した目標が「弊害」になるケースもありますから。

さて、音楽、スポーツに限らず、P=P-Iの理論は
ビジネスにおける人材育成、チームパフォーマンスにも通じます。
ビジネスではI(弊害)をどう定義するか難しい面もあるので、
これは別の機会にお話しさせて頂きます。

安藤秀樹
株式会社ドリームパイプライン代表

公式ホームページ: https://dreampipeline.com
お問い合わせ先: hideki.ando@dreampl.com

拙著 『ニッポンIT株式会社』
https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/
Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得
「実践経営・リーダーシップ」部門
「ビジネスコミュニケーション」部門
「職場文化」部門


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?