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生成AIに要件定義ができない理由は「ドキュメンテーション」ができないから

はじめに

以前、以下のような記事を書きました。

この時の結論として、

「要求の整理」には活用できるかもしれないが、「要件定義」には使えない

というものでした。今回は、この点について「ドキュメンテーション」という言葉を使って、もう少し深堀していきます。


要件定義の作成に必要な3つのポイント

以下の記事は「めちゃくちゃな現場」において、要件定義を行うために必要なスキルについて書かれた文章です。

とても良い文章だと思うので、是非リンク先を全文読んでいただきたいのですが、ポイントは以下の3点と書かれています。

  1. コミュニケーション&エスカレーション

  2. ドキュメンテーションの徹底

  3. 要求を明らかにする

これらは、システムを作ってきたエンジニアにとっては、いずれも非常に納得性の高い項目ではないかと感じます。しかし、

これらの3つは生成AIにとっても得意なことなのか?

という点に関しては、(少なくとも現時点においては)非常に疑わしいと感じます。

文脈(Context)とは

最近、ビジネス用語で「文脈(Context)」という用語が増えてきたという印象があります。辞書における意味は以下の通りです。

1 文章の流れの中にある意味内容のつながりぐあい。多くは、文と文の論理的関係、語と語の意味的関連の中にある。文章の筋道。文の脈絡。コンテクスト。「—で語の意味も変わる」「—をたどる」
2 一般に、物事の筋道。また、物事の背景。「政治改革の—でながめると」
出典:デジタル大辞泉(小学館)

https://dictionary.goo.ne.jp/word/文脈/

ビジネス用語における「文脈」は様々な局面で利用されている印象がありますが、

相手が「ある語で別の意味合いで使っている」状況で、相手に指摘したい時

に使う気がしています。言葉を選ばずに言うと

あなたが喋ってるその語、うちらはそう使わないけど、どういう意味合い?

みたいな時に「文脈が~」とか「コンテキストが~」とか言いたくなります。

そもそも、要望を出す側と要望を受ける側で意思疎通を行うことは非常に難しいのです。詳しくは、以前に書いた以下の記事をご覧ください。

話を戻すと、要件定義にはドキュメンテーションが非常に重要なのですが、そのためには、そこに書かれている「文脈」が一致していることが必要だと考えます。文脈の認識を一致させるためには、用語の定義を揃えることが重要ですが、そのためには丁寧な対話が必要です。さらに、ビジネスですから対話を重ねても文脈の合意に至らないこともあるわけで、その場合にはより上位層に対するエスカレーションが必要なわけです。

ここで注目すべきなことは、

ここで書いたことが生成AI「のみ」で実現できますか?

ということです。現状で、これらは要件定義が上手にできる「人」が行っており、生成AIに置き換わるのはまだまだ先だと思われます。

おわりに ~ 生成AIに要件定義は(まだ)できないが

今回は、現在の生成AIはまだ要件定義には使えない理由について深堀していきました。

こう書くと、逆に「生成AIにはドキュメンテーションが何もできない」と捉えられるかもしれませんが、それはまた極端で、実際にはできることもたくさんあります。そもそも、ドキュメンテーションと一言で言っても

  • まず出てきたワードだけ書き出して並べただけの状態。

  • ワードを体系化し、いわゆる「タタキ」と呼ばれるものを作った状態。

  • タタキを元に議論を繰り返し、言いたいことがすべて反映された状態。

  • 当初の課題に立ち返って、資料を読み手視点で再構成している状態。

  • 挿絵、フォーマット統一、誤字脱字チェックなどがすべて完了した状態。

…のように、様々なフェーズがあると思います。このうち、どこが得意なのかを見極め、正しく使い分ければ、強力なツールになることは疑いがありません。

肝心なことは、

ここで書いたことが生成AI「のみ」で実現できるわけではない

ということを理解したうえで得意なことに使うことです。ドキュメンテーションを「文章(あるいはそれが記載されたプレゼンテーション資料)の文法上の構成、あるいは分量やレイアウトなど」という意味合いではなく、「文脈を揃えた文章で記載しておくこと」と生成AIが理解できる日が来れば、要件定義も生成AIが行えるようになるのだと思います。

(おわり)

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