「10分の作業を1分に縮めるDX」は果たしてどんな効果を持つか
はじめに
このnoteではDXや労働生産性について多く書いてきましたが、最近以下のような記事を読みました。
これは、業務担当者の作業効率化を題材にしたDXの記事ですが、この「10分→1分」というのはあまり効果的と評価されない気がしています。今回はこの点について考えていきます。
「1分縮めた」をコスト換算すると
この「9分縮めた」があまり評価されないのは、ぶっちゃけて言えば
コストダウンにほとんど寄与していないように見える
からです。
これをコストに換算するといくらになるのでしょうか? コストの計算には「1分あたりの単価」が必要となるわけですが、それでは1分当たりの単価はいくらなのでしょうか?
人件費は「1ヶ月100万円」
これはよく言われることですが、サラリーマンの人件費は給与と同額ではありません。1.5倍とか、2倍とか、3倍とか、諸説あるようですが、これは本題と関係ないのでここでは割愛します。
この金額をいくらに設定するかでまた議論があると思いますが、よく使われて、かつ非常に覚えやすい値としては「1ヶ月100万円」という値があります。1人月100万円はSEや上級プログラマくらいのイメージです。
ただし、これは
企業から見た時にサラリーマン一人を1ヶ月雇うのに支払う金額
である点にご注意ください。決してサラリーマンの手取りではなく、あくまで企業から見た時の出費です。このような値は1人月と呼ばれます。
1ヶ月100万円だと、1分104円
ここで作業者の単価を100万円と設定すれば後は割り算をしていくだけです。
もちろん、この計算も前提の置き方で値は変わってきます。
1ヶ月を20営業日ではなく、22営業日なら?
1日8時間勤務としているが、10時間なら? 7.5時間なら?
みたいな考えはあると思いますが、ここでは簡単のために上の値で話を進めていきます。
いずれにしても、1分104円だとすると、10分は1040円ですから、冒頭の
「10分→1分」の作業効率化は936円のコストダウンに相当
ということになります。
おわりに ~ DXは金額の多寡だけで語れる?
冒頭で紹介した事例は、DXの取組でした。DXはコストダウンに有用だという側面は確かにありますが、今回の話のように「936円のコストダウン」ということを主張しても、それはほとんど嬉しさが伝わりません。
それでは、このDXの効果はどう表現すべきなのでしょうか?
キーワードは「生産性向上」
です。このnoteでは、生産性についてこれまでも多くの記事を書いてきましたが、この「生産性向上」という言葉もなかなか理解が難しい概念です。特に製造ラインの生産性と、ホワイトカラーの生産性は、ちゃんと考えないと誤解が生じます。
今後も引き続き、DXと生産性向上については書いていきます。
(この項続く)
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