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「10分の作業を1分に縮めるDX」は果たしてどんな効果を持つか

はじめに

このnoteではDXや労働生産性について多く書いてきましたが、最近以下のような記事を読みました。

もう1つの秘話は、「ささいな効果をないがしろにするな」という心得に関するものだ。文字や画像を認識するAI(人工知能)をはじめとするデジタル技術を業務に適用したとき、得られる効果には、「10分かかっていた業務担当者の作業が1分に短縮できた」といった、ささいなものが少なくない。
しかし、ささいな効果であってもないがしろにしてはいけない。「デジタル技術を業務で繰り返し活用する」「デジタル技術を他の業務にも適用する」といった施策を講じるなどして、得られる効果をより大きくしていくことが大切だ。これが「ささいな効果をないがしろにするな」という心得が持つ意味だ。

DXの心得に背景あり、記者が思わず膝を打った2つの秘話 | 日経クロステック(xTECH)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/022801231/?P=2

これは、業務担当者の作業効率化を題材にしたDXの記事ですが、この「10分→1分」というのはあまり効果的と評価されない気がしています。今回はこの点について考えていきます。

「1分縮めた」をコスト換算すると

この「9分縮めた」があまり評価されないのは、ぶっちゃけて言えば

コストダウンにほとんど寄与していないように見える

からです。

これをコストに換算するといくらになるのでしょうか? コストの計算には「1分あたりの単価」が必要となるわけですが、それでは1分当たりの単価はいくらなのでしょうか?

人件費は「1ヶ月100万円」

これはよく言われることですが、サラリーマンの人件費は給与と同額ではありません。1.5倍とか、2倍とか、3倍とか、諸説あるようですが、これは本題と関係ないのでここでは割愛します。

この金額をいくらに設定するかでまた議論があると思いますが、よく使われて、かつ非常に覚えやすい値としては「1ヶ月100万円」という値があります。1人月100万円はSEや上級プログラマくらいのイメージです。

ただし、これは

企業から見た時にサラリーマン一人を1ヶ月雇うのに支払う金額

である点にご注意ください。決してサラリーマンの手取りではなく、あくまで企業から見た時の出費です。このような値は1人月と呼ばれます。

1ヶ月100万円だと、1分104円

ここで作業者の単価を100万円と設定すれば後は割り算をしていくだけです。

1分あたり104円、9分あたり936円 #一枚絵図

もちろん、この計算も前提の置き方で値は変わってきます。

  • 1ヶ月を20営業日ではなく、22営業日なら?

  • 1日8時間勤務としているが、10時間なら? 7.5時間なら?

みたいな考えはあると思いますが、ここでは簡単のために上の値で話を進めていきます。

いずれにしても、1分104円だとすると、10分は1040円ですから、冒頭の

「10分→1分」の作業効率化は936円のコストダウンに相当

ということになります。

おわりに ~ DXは金額の多寡だけで語れる?

冒頭で紹介した事例は、DXの取組でした。DXはコストダウンに有用だという側面は確かにありますが、今回の話のように「936円のコストダウン」ということを主張しても、それはほとんど嬉しさが伝わりません。

それでは、このDXの効果はどう表現すべきなのでしょうか?

キーワードは「生産性向上」

です。このnoteでは、生産性についてこれまでも多くの記事を書いてきましたが、この「生産性向上」という言葉もなかなか理解が難しい概念です。特に製造ラインの生産性と、ホワイトカラーの生産性は、ちゃんと考えないと誤解が生じます。

今後も引き続き、DXと生産性向上については書いていきます。

(この項続く)


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