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80老医のぼやき、生活習慣病って?

生活習慣病って何?
ネットで検索すると、生活習慣が、病気の発症や進行に関係する病気、と書いてあります。例として、高血圧、脂質異常症、狭心症、高尿酸血症、糖尿病2型、アルコール性肝疾患、癌、歯周病など、と書かれてあります。
事故による怪我以外の病気全部ですよね。
遺伝的な病気や感染症を除くと、ほとんどの病気が生活習慣が原因なんです。
つまり、生活習慣をなおせば、病気にならないのです。
でも、病院に行くと、何々の病気ですと言われて、薬を渡されるだけです。
よほど親切な医師に合わない限り、生活指導などありません。

これについて、40年前に私の先生である病理学のリチャード池田博士に質問しました。
その当時、イケダ先生は、カルフォルニア州医学局の長でした。
先生、医師が患者の生活指導をすれば、病気は未病で防げるのじゃないのですか?
先生の答えは、
君の気持ちは分かるよ。
でも、医師に一人一人に時間をさく余裕はないのだよ。
州政府としては、州民の6割を医療制度の中で何とかする、これが現実なんだよ。
押し寄せる患者を医療制度の中でなんとかするのが社会安定の政策なんだよ。
医療制度の中で、医師も患者も、
それを科学的に正しいと信じて従っているのでしょうが、実は、60%を安定させる制度なんです。
現実は、イケダ先生が言うとおりですね。

なぜイケダ先生に質問したかというと、
先生は、全く薬に頼らない人でした。
全く薬を飲まない理由も質問しました。
先生、病院の薬を使わないのなら、私は漢方薬を渡せますけど、どうですか?
先生はハーバード大学医学部から、病理学研究のためにオーストリアのウイーンに留学したエリートでした。その先生が、薬を全く使わないのです。
先生、薬を信用していないのですか?
いや、そういう事でもない。ウイーンで病理学を研究している間に、生命の深遠な不思議を、人間が作った人工的な薬品でコントロールする、人間の思い上がりを反省したのだよ。生命には、宇宙が作った自然治癒力がある。その不思議な恩恵を大事にしたいのだよ。

もう一つイケダ先生に教えられたことがあります。
先生、生活習慣の背景には、人の精神や心のあり方の問題があります、それをどうされますか?と聞きました。
現実問題として、医師には患者の心と病気の関係を取り上げる時間もない。
医師自身にアル中もいるし、精神的な問題を抱えている医師も多い、
それに人生経験も浅く、対応できないのが現実ですよ。
じゃ、先生自身はどうされて来たのですか。
私は、医師の精神的な問題に対応するために、Twelve Stepsという段階的の生活習慣と心のケアをする方法をカルフォルニアに紹介しましたよ。

つまり、医師も患者と同じような問題を抱えているのです。
だから、イケダ先生自身が、精神的なケアをする方法を指導されていました。
薬だけ与えている現状と医学だけではケアできない人の問題を深く理解していたのです。
一方で、患者の方は、知識が無さすぎて、病気になれば病院がなんとかしてくれると単純に思いすぎています。最終的には、自分の健康は、自分の責任なんです。

若い時に、イケダ先生に会えたことは幸運でした。
もう、私も80歳で、お世話になった先生方はとっくに亡くなっていますが、良い師匠に会えたことを感謝しています。

私に会いに来た患者は、病院の治療を長くやって治らないので、
東洋医学とやらを覗いてみるかという患者でした。
ほとんどの患者が白人ですから、ストレートに質問してきます。
(患者)私の病気を治せますか?
ほとんどの白人の患者は、病院で出されたレポートを抱えてやってきます。
それを読んで意見を言ってくれと要求してきます。
白人は、自分の病気について詳しく勉強した人が多いのです。
私は、一応レポートに目を通しますが、反問します。
ところで、あなたは、どうやってこういう病気になったのですか?
この質問で患者は、はたと立ち止まります。
答えられないのです。
突然、具合が悪くなって、病院に行くと病名をもらった、
でも、その病気の原因が自分にあったという自覚がないのです。
(患者)私が病気の原因ですか?
そうですよ。
あなたの生活習慣が作った病気です。
それについて話し合いましょう。
ここから、患者のぐだぐだ言う抵抗が始まります。
(患者)誰だって酒を飲んでいるじゃないですか、タバコを吸っているじゃないですか、いや、ビジネスで忙しいので休むなんて無理です。
極端な場合、私に責任があるって言うのですか?とイラつく患者もいます。
自分を振り返って、自分の生活習慣を見直す、これが難しいのです。

ところで、変な話ですが、
私は、病気もしましたが、80歳になってもまあまあ元気なのは、患者の生き様を見ているからと思えます。
生活習慣の不摂生で病気を作っている人を見ているので、自然に、余計な悪習慣を避けるのです。
それでいて、自分では、運動も何もしていません。
ただ不摂生で病気を観察していることで、自分が不摂生をしなくなるのです。

ハワイ島に移ってから、
毎日、朝と夕方に虹を見ます。
今日は、天気がよかったので、フアラライ山の山頂が見えました。
歳のせいか、今まで出会った先生にも患者にも感謝する気持ちで一杯です。
本で勉強したことよりも、患者の生き様を見て学んだことの方が大きかったです。
そう言えば、若い時、忙しい時代には、感謝することも忘れていました。
多くの人に支えられてきましたのに、
50年経ってみると、医師の欠点も患者の欠点も、自分の欠点もよく分かります。









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