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エッセイ 01 わんちゃん興奮 カメさん大冒険
以前ペットOKのアパートに住んでいたことがあります
3階建ての一番上の角部屋に、ミニチュアダックスのわんちゃんと暮らしていました。
そこはただのペットOKというアパートではなく、「ペットと共に住みましょう」というアパートだったので、私の住んでいる田舎ではとてもめずらしくテレビの取材なども受けていました。
緊張しながらインタビューに受けたことを覚えています。
放送されたニュースでは、引きつった顔は全部カットされていましたが、良い経験でした。
他の住民さん達も、もれなく何かのペットを飼っていました。
犬、猫はもちろんですが、部屋の中からとても出せないようなペットもいたようです。
お隣さんは猫ちゃんが3匹ほどいました。
ある日の夜にうちのわんちゃんが、そわそわし始めました。
もともとすごく臆病で、新しいものを見ると、それがおもちゃであってもこわがります。
腰が引けまくった体勢でわんわんっ!と精一杯の虚勢をはります。
少しでも相手が近づこうものなら、ぴょんっ!と後ろにジャンプしビビります。
安全を確認し体勢を立て直し、わんわんわんっ!と繰り返します。
そんなわんちゃんがベランダのカーテンに向かって、わんわんわんっ!と 吠えています。
「なんだろう?」と、カーテンを開けてベランダを見てみると、何もありません。
不思議に思い部屋に戻っても、まだ吠え続けています。
もういちどベランダを確認してみると、隅っこの方にカメさんがいました。
りっぱな大きさのカメさんです。
どこからきたんだ? え? ここ3階だよね。
何が起こったのか理解できずにいました。
しばらくして落ち着くと、あー隣から来たんだ、と気付きました。
同じ階のベランダはひと続きで、それぞれの部屋の間に薄い壁が付けられています。
壁の下の方を見ると、少しの隙間を開けて浮いた状態で取り付けられていました。
この隙間から歩いてきたんだな、とようやく理解できました。
わんちゃんの興奮は最高潮です。
おとなしいカメさんに精一杯の威嚇をしています。
襲ってこない相手には強いです。
自分から少し近づいては後ろに、ぴょんっ!とジャンプしています。
「どうしようかな?」
お隣さん、猫ちゃんと亀さんも飼ってたんだな~なんて思いながら。カメさんを両手でかかえ、カメさんの足でも10歩でも歩けばお隣さんのベランダにたどり着けるように、壁の下の隙間に頭を突っ込む形でそっと置いてあげました。
それから数日後。
2部屋ほどとなりの若いお兄さんが、うちのインターホンを鳴らしました。
「カメ見ませんでしたか?」
「あ~、ベランダ歩いてました。お隣さんの方へ戻しておきましたよ。」
カメさんの飼い主は、そのお兄さんだったようです。
まさか二部屋をまたぐ冒険をしていたとは。
その後に無事にカメさんは見つかったようです。
それから後も2度ほど、うちのベランダに散歩に来ていました。
わんちゃんがベランダに向かって吠えたら、「来た合図」です。
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