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熱海旅行記 day2

二日目の記録だ。

朝は一度、早朝に起きたのだが、酒が残っており、頭が重い。

寝る前に睡眠導入剤を呷ってしまったせいだ。

二度寝をして、起きたらチェックアウトまで1時間を切っていた。

バタバタと支度、見てくれをどうにか整えて出掛ける。

前日から、友人と共に目を付けていたラーメン店で朝飯兼昼食だ。

熱海の中心街にあるカウンターだけの古いラーメン屋だった。

「天風本舗」と言っただろうか、恐らく熱海に行ったことのある御仁で、やたらノスタルジックなラーメン屋の前に行列が出来ているのを見た方は多いのではなかろうか。割と有名店らしい。

昼時前だったからだろうか、そこまで待たずに入れたのは運が良かったとしか言いようがない。俺たちの入店後、あっという間に行列が出来ていた。


絶品!

こういう店はあっさりしたラーメンを出すものだと思っていたが、俺が頼んだ「ラーメン」は、濃い目の醬油スープに太目のちぢれ麵が泳ぎ、背油らしき油が浮いた、相当にパンチの効いた一杯だった。チャーシューも柔らかく美味い。

なるほど、これは若い人が食べても、物足りなさは全くない。

予想外に美味い一杯だった。友人達はラーメンと共に炒飯なんかを食べていたが、俺は付いていけなかった。横で見ていて、これも美味そうな一品であった。

食後、ラーメンの油で胃腸が大暴動を起こし始めた。堪らずショッピングセンターのトイレへ駆け込む。ギリギリセーフである。

その後の行き先は、昨日の時点では決まっていなかったのだが、昨晩泊まったホステルの入口に設置されたチラシの中に「熱海秘宝館」の文字を見つけたので、そこに行こうと、昨晩に話をしていた。

友人たちはあまり気が乗っていなかったのだが、近くに「熱海城」があることもわかり、ともかく行ってみようじゃないかということになった。

最悪、友人たちは熱海城で時間を潰してもらって、その間に俺一人で秘宝館に潜入しようという魂胆である。

熱海駅付近からタクシーをすっ飛ばし、山の上にある秘宝館へ向かった。

個人的にはこの旅行のハイライトになった、この秘宝館。

じっくりと、ねっとりと、レポートさせていただきましょう。

秘宝館は、熱海城のお膝元にある。とは言え、熱海城は城の形こそしているが、いわゆる娯楽施設である。

友人たちはそちらに行くというので、俺一人、いかにもレトロで淫靡なオーラが「びんびん」と発せられている建物へ向かった。


熱海秘宝館の外観

建物の上にある人魚を象った人形が見えるが、これが目印だ。そして、熱海秘宝館というレトロな看板。寺山修司の作品群を思い出す猥雑さ。レトロな風体といい、淫靡な雰囲気といい、あの寺山の妖しい作品群に通じるものを感じていた。

さぁ、参りましょう。

秘宝館を入ると、秘宝館への入口と、熱海ロープウェイの入口とに分かれていて、なるほど、ここが一般的な観光客と、物好きな輩の分かれ道なのだなと思う。俺は勿論秘宝館の暗がりの方へ向かっていく。すみません、物好きな者で…。

早速、男根を象った道祖神が飾ってある。早くもその片鱗を見せ始めたな、と感じる。こうした大っぴらに語りにくい文化を楽しめるのが、秘宝館の良いところなのである。

次にガラス張りの社が現れた。おみくじを引けるらしい。

早速、100円玉を入れて、ボタンを押してみる。すると、社の扉が開いて、中から巫女さんのからくり人形がカクカクとした動きで出てくる。昭和レトロに満ちたからくり仕掛けである。

その巫女さんが両手で持つ盆の上に丸められたおみくじが申し訳なさそうに一つ乗っている。その盆を前に倒して、ガラスで仕切られたこちら側におみくじを転がしてくれる趣向である。

動きに関心をしていると、巫女さんの人形が後ろを向いて去っていく…

と、巫女さん人形の後ろ姿は着物がはだけており、パンツを履いていない、つまりノーパンなのである。丸出し。

そうか、と。

何かで読んだことがあったのだが、巫女さんという職種の方々は下着を身に着けないのである。普通に生活していると、忘れ去ってしまうような知識を思い出して、「なるほど」と、独り言ちる。

次のコーナーでは、江戸時代の四十八手の絵が飾られていて、性の歴史に思いを馳せたり、馳せなかったり。

ボタンを押すとレトロな絵柄のエッチな画が浮かんでくる昭和な仕掛けがそこかしこにあり、どれも一人でボタンを押してはほくそ笑んでいた。完全にヤバい奴だと思われるだろうが、幸い客が少なかったので風体は保てた。

俺は、こういう、普通の人が下らないと言って素通りしてしまいそうなものが好きだ。妙に惹かれてしまう。

一つ一つのコーナーをじっくり見ていった。

他にも、マリリン・モンローを象った人形に下から風を送ってスカートをめくろう、という仕掛けがあり、ダッチワイフがおり、秘宝館オリジナルの「エロ版」昔話(竜宮城とか)の映像が見られるブースなど、眩暈がしそうなくらい盛沢山である。

最後に土産物を買うコーナーがあるのだが、そこで見つけたポッキーの模造品、『Bocky(ボッキー)』は昭和の親父センス炸裂で、見つけた瞬間に笑いそうになった

迷わず購入。

他にも下ネタパロディに満ちた商品がそこかしこに。

まだゆっくりしたかったが、友人たちから「まだ終わらないのか」と催促の連絡が入ってきていたので、泣く泣く立ち去ることにした。

帰り際。

入り口を見ると、沢山の有名人のサインが飾ってあった。ビートたけしやダウンタウンといったお笑い芸人や、様々なタレントのサインの中にやっぱりあった。みうらじゅんのサイン。やはり、と思い、感慨に耽る。

こうした芸人のサイン群を観ていると、笑いの根源には、どうしても下ネタ(所謂タブー)が絡んでくるのがよくわかる、というと大袈裟だろうか。大袈裟だと思う。

その後、友人たちから白い目で見られつつ、彼らのお土産購入に付き合って、帰京した。


まだまだ書くべきことはあろうと思うが、2日間の滞在だ、これくらいで勘弁してほしい。

熱海、まだまだ掘り下げる余地が大いにあると思う。

特に秘宝館はカルチャーショックを受けること、請け合いである。

ああいう昭和の忘れ形見は絶対に無くしてはならないと思った。

俺が求めるノスタルジーに満ちていた場所だった。

ああいう下らなさの中にこそ、文字通り「娯楽」というものが眠っているのだ、と実感した。


熱海。不思議な観光地である。

町並みは妙にアッパーで、旅館や温泉はダウナーというか、チルさに満ちていて、やたらと高低差のある地形がその躁鬱具合を表しているよう。

いずれまた、東海道線に乗って、あの不思議な街を訪れてみたい。

今度の狙い目は「赤線跡」だ!


それでは、また明日から仕事がんばりましょう。

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