ボーダー
ある夜。
一人酒を呷る。
何かつまみはないだろうか。
しかしながら、手元にはアテがなかった。
宛所なく飲んでいるって、駄洒落かよ。
止む無く台所まで歩いて行き、何かないかと探し始める。
すると、輪ゴムで留めてある揚げ玉が目に入った。
それ以外には調味料ばかりで何もなかった。
塩をひと舐めして日本酒を、って感じでもない。
そして、
「これはフライ的な乾きものだ」
と強く念じ、ザザッと揚げ玉を口に流し込んでみた。
少し腹は満たされた。確かに。
が、その後に何とも言えない、情けない感情がこみ上げてきた。
なんだろう、初めて消費者金融で金を借りてしまった時のような
小さな破滅に片足を突っ込んだような、そんな気持ちになった。
人として、
大事にしなければいけない「恥じらい」のボーダーというのがある。
そんなことを思い知った午前0時。
世の中は、既に明日に備えて寝静まっている。
俺は独り。酒はもうすぐ空になる。
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