見出し画像

「浅井」という男②

1.「ラーメン屋を経営する」
⑴安楽死や⑵医療用大麻の話をする前に、もう少し浅井とのエピソードを書いてみる。

浅井とのレオパレスでの同棲は非常に刺激的な毎日であった。
当初はレオパレスのロフト部分(1畳もない)が自分の寝床、1Fのソファが彼の寝床だったのだが、次第に「やっぱり自分の部屋がいるな」と言い出した。気づけばレオパレスの裏庭みたいなところに彼はおんぼろハイエースを停め、風呂とトイレを借りに自分の部屋を訪れるような生活スタイルを始めた。

別に自分は何でも良かった。

ある日、研修医の仕事を終え、レオパレスに帰ると浅井とおんぼろハイエースは姿を消していた。特に今に始まったことではないので無視していた。

(ちなみに浅井は当時はギリギリ携帯電話を所有していた(現在は携帯電話を所有していない)が、LINEなど一般的なアプリは使用していなかった。連絡の手段は古典的なe-mailのみだった)

3日後、浅井が帰ってきた。

「どこに行ってたの?」
と聞くと、
「知り合いの会社の駐車場で寝泊まりしていた」
と答えが帰ってきた。

色々と意味が分からないが、もはや深くは聞くまい。

「俺、ラーメン屋を始めるよ」

実に唐突であった。

はてなマークが頭の中に5個くらい飛び交った自分だったが、さらに傾聴した。

どうやら、思いつきでビジネスサロンに加入してみたらしい。
そのサロンでラーメン屋をやりたいという人と出会い、意気投合したのだという。

そのサロンは「大井戸塾」と言う。

この時、初めて「大川さん」「井戸さん」という名前を聞いた。
今でこそ流行している「サロン」とか「オンラインコミュニティ」だが、この時はまだ流行っているわけでは無かったと思う。

「へー、そんなサロンがあるのかー」

当初自分はあまり関心を示さなかった。

ラーメン屋は赤羽に出店された。
駅から徒歩2, 3分の好立地だ。
二郎系ラーメンの「立川マシマシ」というラーメン屋だ。
浅井と一緒にオープン記念会に参加させて頂き、もりもりのラーメンをご馳走になった。味は二郎系統ながら、シンプルで食べやすいと感じたのを覚えている。

夏の暑い日だった。



その後、「立川マシマシ」のビジネスに関しては浅井本人からも話を聞く機会は全くなかったが、google検索上(?)は今も繁盛しているようすで嬉しい。

ただ今は経営にはあまり関与していないのかな?
相変わらず謎な男である。


2. オンラインサロン
六本木に「slowplay」というBarがある。


4年ほど前からたまにお邪魔させて頂いているが、そこのオーナーは「大井戸塾」の塾長らである大川さん、井戸さんだ。

とある夏の日、
自分と浅井(下駄を履いている)と友人の3名で初めてそのBarに入店した。
会員制ではないが、インターホンを鳴らし扉を開けてもらう感じは、いささか一見さんお断りを思わせる。

2時間ほどポーカーと酒を楽しみながら、浅井は「オンラインサロン」の魅力を伝えてくれた。

オンラインサロンとは月額いくらかをサロンに支払うことで所属する団体のことだ。ただし一般的な学校とは違い、手取り足取り教えてくれるわけではない。自らが行動をおこさない限り、毎月お金を支払うだけだ。自分でお金を払うからこそ、行動せざるを得ないのは合理的である。

浅井の入っていた「大井戸塾」の月額は9,720円だ。
当時の自分には「高い」と感じる値段だった。

毎月の勉強会やFacebook上でのビジネス案投稿、時事ネタなどへの討論、そしてオフ会などなど、イベントも数多くあるようだ。

そこでは様々なビジネスを考える若者が集い、交流している。
この時はまだ無かった感覚だが「自らの成長のためにお金を使う」ことの重要さは、このBarで芽生えたと言っても過言ではない。

同時に研修医をしながら、社交の場とも言える場所にたくさん顔を出し始めたのもこの時期からだったろう。

もともと株式や為替、不動産の投資は経験があったが、自分自身に投資をするということを学べた意味で、浅井には感謝している。

しばらくして浅井は「大井戸塾」を辞めたらしい。
何か気まずいことでもあったのだろうか?
でも、理由は聞かなかった。



後に大川さん本人とお話しをする機会が何度かあったが、彼にとっても浅井は印象的であったようすで、「今、あいつはどこにいるんだ」と気にかけている様子は自分にとってもとても印象的だった。

今もなお、slowplayには自分は通っている。
また浅井も連れて行きたいものだ。

そんなある日、浅井に伝えた。
「新しくビジネスを起こそう」

即座に「よし、で、内容は?」と返事が来た。

自分は汚いソファの上でこう答えた。

「人の生き死にに関するビジネス」

(続)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?