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無差別級の戦いを終えて

  〜このnoteは、富山新聞に定期掲載されている私のコラムをベースに加筆したものです。コラムを始めて1年以上が過ぎましたが、このコラムは県外の方々にも読んでいただきたいと思い、こちらにも掲載いたしました。これからちょこちょこnoteの方も書いていきます。〜

【INDEX 】
🔹カップ戦は超ハンディキャップマッチ
🔹炙り出された支援力の差
🔹変わらない人間力
🔹まだまだ道半ばの富山サッカー事業

ルヴァン・カップ清水エスパルス戦告知
ルヴァン・カップヴィッセル神戸戦告知

 🔹カップ戦は超ハンディキャップマッチ 

 ルヴァン・カップ、天皇杯と、カテゴリーを問わない無差別級のトーナメント戦が、6月12日天皇杯の対ヴィッセル神戸戦をもって終了しました。 当クラブが戦った相手(4クラブ)の経営規模(2023年度公表値)と対戦成績は次の通りです。

・モンテディオ山形(J2/売上25億円/チーム人件費8.4億円/1勝)
・コンサドーレ札幌(J1/同41億円/同17億円/1分1敗)
・清水エスパルス(J2/同51億円/同22億円/1勝)
・ヴィッセル神戸(J1/同70億円/同38億円/1勝1敗)

PK戦を制した対神戸戦

 富山の売上は7.8億円、チーム人件費2.4億円ですので、経営規模からすれば超ハンディキャップマッチでした。それでも戦績は通算3勝1分2敗と勝ち越しました。特にルヴァン・カップでは山形、清水、神戸と、昨季J1覇者や対戦時に今季J2首位中の上位カテゴリーチームを次々と倒し、地上波全国ニュースに取り上げられたりと、全国的にもちょっとした話題にもなりました。

神戸戦後、恒例のゴール裏記念写真

 ただ、試合を重ねるたびに、私は何とも言えぬ三つの複雑な思いにかられました。

🔹炙り出された支援力の差 

 一つは、経営規模の格差についてです。富山は法人個人共々、財力面で対戦した相手の都市とそう大きく劣るとは思えません。やはり「サッカーを通じて地域の方々に喜びを与えたい」と強く願ってくれている企業の差が出ているのではと思わずにはいられませんでした。その点でカターレ富山というクラブが企業の皆様や県民にとって、そこまでの存在になっていないという認識なのだろうと思い知らされました。そのことを胸に刻み、これからも引き続きご支援をお願いし続けなければと痛感した次第です。

🔹変わらない人間力

躍動した田川知樹選手

 もう一つは、試合を見ていて…私は元J1クラブ経営者ですので、戦っている双方の選手たちの年俸差がとても大きいことはあらかた察しがつきます。しかし、サッカー選手としても人間としてもそれほどの差があるとは私には思えません。この会社規模的には超ハンディキャップマッチを、見ている側、ニュースとして扱う側の方々は、「ジャイアントキリング、下剋上、番狂せ」といった表現を使い大きく取り上げてくれますが、チームのことを思うと大きく取り上げられればられるほど、私は何とも複雑な気持ち、申し訳ないなという思いにかられてしまいます。カターレ富山には、社員も含め、もっともっと物心両面で豊かな生活をさせてあげたいと、試合で躍動する選手たちを見ながら、しきりに考えていました。

安光将作選手と髙橋馨希選手の雄叫び

🔹まだまだ道半ばの富山サッカー事業 
 さらにもう一つは、お客様はシビアだなということ。ルヴァン・カップでのヴィッセル神戸戦は、集客に苦労する平日ナイターにもかかわらず8,223人が来場されました。日曜デーゲームのコンサドーレ札幌戦は7,701人で、いずれもJ3降格以降最多人数です。今季のリーグ戦平均入場者数が2,809人ですので約3倍近いお客様が来場されました。経営的には想定外の潤いをもたらした一方で、かなりの方が、カターレ富山のJ2復帰を争うリーグ戦より、相手チームブランドに惹かれて来場されたということに一抹の寂しさを覚えたのは私だけでなく、チームも同じでしょう。実力と人気商売とはいえ、選手たちが不憫でなりません。もっと多くの富山の方々が「自信と誇りを持ってカターレ富山を応援する」ことができるブランド力を持たねばと肝を据え直す良いきっかけとなりました。

ヴィッセル神戸戦の入場者数にどよめきがあがる
久々に大入りのメインスタンド

 天皇杯やルヴァン・カップのように、カテゴリーを越えた無差別級の戦いを通じて、こんなにも複雑な気持ちになるのかと富山に来て思い知らされました。 

 この想いを今後の経営活力に必ず換えていきたいと思います。

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