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経営者が多忙過ぎて税務ミス。税務署は許す?許さない?

経営者はとにかく忙しい!

トップマネジメントの忙しさはあらゆる本で言及されており、もはや議論の余地もなければ避けるのも難しい。

あまりにも忙しくて、決算処理や税務処理に当たって、なにかしらミスが起きることもあるかもしれない。

「税務申告は税理士に任せているので、税理士側で間違えることはあっても、経営者側でミスすることはない」

という意見もあるかもしれないが、税理士も会社からもらった情報をベースに処理している以上、社長が多忙すぎて会社側からの提出漏れ情報がある場合、最終的に税務申告ミスにつながることもある。

そこで、今回は「経営者が多忙過ぎて税務ミス。税務署は許す?許さない?」をアップグレード解説していく。

なお、この記事は、2018年7月30日の肥田木会計事務所ホームページ記事をアップグレードして掲載したものである。最後に、追加のアップグレード情報も記載しているので、併せて読んでいただきたい。

【税務調査】「多忙による失念」は意図的な過少申告として重加算税の対象?(2018年7月30日)

多忙

経営者の方々の多くは、日々の業務で多忙極まりないことが多々あります。

その中で、事務処理をうっかり誤ってしまし、税務確定申告の金額を誤ってしまったこともあるかとは思います。

このようなうっかりミスについて、税務調査官が事実の隠ぺい又は仮装があったとして、大きなペナルティ措置である重加算税をかけてくる事例も拝見します。これに対し、国税不服審判所が税務調査官の主張をひっくり返した裁決例がありますので、紹介します。

事案の概要

・請求人は、E医院において、内科医として勤務する他、複数の企業等に産業医として勤務。さらにD事務所の屋号で複数の企業等と契約して業務を行うなど、多忙な日々を過ごしていた。
・請求人は、給与等や報酬等を受領していたが、その多くについては、勤務先又は契約相手方企業が源泉徴収を行い、請求人に源泉徴収票又は支払調書を交付していた。
・請求人は、平成19年分以後の所得税について青色の確定申告書を提出していたが、産業医の業務の売上等の集計をせず、必要経費について集計表等を作成する程度であった。
・請求人は、所得税又は所得税等及び消費税等の確定申告書の作成をH税理士に依頼していた。H税理士は、本件平成24年分諸税の確定申告までは、請求人から、収入金額に係る資料としては数十口の源泉徴収票及び支払調書のみ提示を受け、これらを基に売上集計を行って請求人の確定申告書を作成していたが、その際作成した売上げの一覧表を請求人に交付することはなかった。
請求人は、平成22年6月24日、本件預金口座を開設し、F会に対して同年8月支払分以後の本件収入を本件預金口座に振り込むよう依頼した。F会は、本件収入について源泉徴収を行っておらず、請求人に対して、本件収入に係る支払調書を発行していなかった。なお、本件預金口座には、平成22年6月24日の開設以降、平成26年12月31日までの間、本件収入と普通預金利息の入金がされているだけであり、それ以外の入出金は全くなかった。
・その後、税務調査が行われ、請求人は担当職員からF会からの収入が申告漏れになっている説明を受け、修正申告を提出したが、原処分庁が、当該収入の申告漏れは課税要件事実を隠ぺいし又は仮装したところに基づくものであるなどとして重加算税の賦課決定処分等の原処分を行ったため、その取り消しを求めて争いとなった。

原処分庁の主張

『①特定の取引先(本件取引先)からの報酬等(本件収入)が請求人の事務所名義の預金口座(本件預金口座)に入金されていたと認識していたにもかかわらず、関与税理士に対し、本件預金口座に係る通帳(本件通帳)を提示しておらず、』
『②調査担当職員から本件収入の申告漏れを指摘されるまで、調査担当職員に対して本件通帳を提示しなかったことからすると、請求人は、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと認められるから、』

重加算税の賦課要件を満たす旨を主張しました。

審判所の判断

『請求人は、産業医や内科医として平素より極めて多忙であったこと、毎年多数の源泉徴収票や支払調書を受け取っていたことからすると、請求人が、それらの源泉徴収票や支払調書の内容を確認しておらず、それらの中に本件収入に係る源泉徴収票がないことに気付かなかったとしても不自然ではない。』
『請求人は、売上げの集計を自ら行わず、確定申告書の作成を税理士に任せきりにするなど、会計及び税務に係る事務に精通しているとはいえない上、産業医としての勤務による給与等や契約による報酬等の多くについて源泉徴収が行われていたこと、本件調査において調査担当職員に本件収入の申告漏れを指摘された時から一貫して、本件収入について源泉徴収を行っていると思っていた旨申述及び答述していることからすると、請求人が、F会が本件収入について源泉徴収を行っていると誤解していた可能性も否定できない。

と指摘。

そして、

『①本件取引先が源泉徴収を行った後、本件収入は本件預金口座以外の預金口座に振り込まれているとの誤解の下、関与税理士に対し、手持ちの源泉徴収票及び支払調書に加えて本件通帳以外の通帳を提示することにより、本件収入についても適正に申告していると誤解していたものと考える余地があり、

また、

調査担当職員に対して本件預金口座の存在を殊更隠ぺいしようとしたとは考え難く、本件通帳以外の通帳を提示すれば問題ないと考えて本件通帳を提示しなかったものとみる余地があるから、原処分庁が主張する事情は、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたことを推認させるものとまではいえず、その他、請求人の上記意図を認めるに足りる証拠もないから重加算税の賦課要件を満たさない。

と判断しました。

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~以下、追加アップグレード情報~

上記の記事では、多忙で資料を税理士に提出漏れがあったケースを解説した。

では、『多忙で税務申告書の提出が少し遅れたケース』はどうなるのだろうか?

例えば、税務申告書の完成がギリギリになってしまい、6月30日が申告期限のところ、その日の夕刻に申告書をポストに投函したが、消印が翌7月1日となってしまった場合はどうなるのか?原則通り、税務署から「期限後申告」として無申告加算税が課されるのか?

郵送による申告書の提出時期については、その通信日付印(消印)に示された日等をもって提出されたものとみなすこととされているので、消印が7月1日となっている以上、形式上は、7月1日に申告書が提出されたものとして扱われることになる。

ただし、所得税の事例で、申告期限の日に投函したものの消印がその翌日となったことについて、納税者に「やむを得ない事情」があると認め、期限内に申告書の提出があったものとするのが相当であるとした裁決例もあるので、「やむを得ない事情」につき、主張をする必要があると考える。

問題は、納税者において正当な理由があったかどうかであり、確定申告書が提出期限内に到達しなかったことについての理由を明らかにする必要がある。

なお、職務多忙のため提出することを失念していただけでは「やむを得ない事情」には該当しないようなので、それ以外の理由をちゃんと用意することをお勧めする。

肥田木会計事務所では、税お役立ち情報を定期的に配信しています。

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