美術品等は減価償却できるのか?【ビジネス×アートの潮流の乗っかろう】
ここ近年、ビジネスとアートの関係について書かれている文書や書籍を頻繁に目にする。
そこで、アートの中でも美術品について、税と関係のある箇所を解説する。解説内容は、『美術品と減価償却』の話である。
なお、この記事は、2015年5月28日の肥田木会計事務所ホームページ記事をアップグレードして掲載したものである。
最後に、追加のアップグレード情報も記載しているので、併せて読んでいただきたい。
美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQの掲載
国税庁は、ホームページ上に「美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQ」を掲載しました。
これは、美術品等(絵画や彫刻等の美術品、工芸品など)が減価償却資産に該当するかどうかの判定について、法令解釈通達等が発遣され取扱通達(法基通7-1-1等)の改正が行われ、平成27年1月1日以後取得する美術品等について新しい取扱いが適用されたことにより、美術品等が減価償却資産に該当するかどうかの判定について、主な質問に対する回答を取りまとめたものです。
改正の概要
改正前の通達の取扱いでは、
①美術関係の年鑑等に登載されている作者の制作に係る作品であるか、
②取得価額が1点20万円(絵画にあっては号当たり2万円)以上であるか
により、美術品等が減価償却資産に該当するかどうかを判定していました。
しかしながら、美術関係の年鑑等は複数存在しその掲載基準がそれぞれ異なるのではないか、また、20万円という金額基準は減価償却資産かどうかを区別する基準としては低すぎるのではないかといった指摘があったため、美術品等の取引価額の実態等についての専門家の意見等を踏まえ通達の改正が行われました。 改正後の通達では、取得価額が1点100万円未満である美術品等は原則として減価償却資産に該当(注1)し、取得価額が1点100万円以上の美術品等は原則として非減価償却資産に該当(注2)するものとして取り扱うこととしました。
(注1)取得価額が1点100万円以上の美術品等であっても、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当する場合は、減価償却資産として取り扱うことが可能です。
「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」としては、例えば、次に掲げる事項の全てを満たす美術品等が挙げられます。
(1)会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として取得されるものであること。
(2)移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること。
(3)他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。
(注2)取得価額が1点100万円未満の美術品等であっても、「時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなもの」は、減価償却資産に該当しないものと取り扱われます。
美術品等についての減価償却資産の判定に関するFAQについては、詳細に関しては国税庁ホームページをご参照ください。
~以下、追加アップグレード情報~
減価償却資産と非減価償却資産の線引きを100万円とした理由は、新鋭作家のデビュー作が1点60万円から80万円で取引される実態にあることや、市場における一定の評価を得ることができる作者かどうかは一般にその作品の価格が100万円を超えるかどうかで評価することができるといつた専門家の意見等を踏まえたものとのこと。
また、絵画については、その大きさが10号の作品が一般的であるとの理由から改正前の取扱いは号当たり2万円以上かどうかで取得価額基準の判断をすることとされていたが、作品の価格は必ずしもその大きさのみに比例するとは言い切れないことから、他の美術品等と同様の基準によることとされたものである。
ここで問題になるのは、平成26年改正後の本通達においては、時の経過によりその価値が減少することが明らかな美術品は、たとえその取得価額が1点100万円以上のものであつても減価償却資産として認めることとしていることから、ここで言う「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」かどうかの判断をどのような基準に基づいて行うのかという点である。
この点に関して、改正後の本通達では、一般的な判断基準を示していないが、その注書きにおいて、
①会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開されるものを除く。)として取得されるものであること、
②移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること、
③他の用途に転用すると仮定した場合にその設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること
の全てを満たす美術品等について「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当することとされている。
これは、美術品等が減価償却資産に該当するかどうかを判断するに当たっては、今後の時間的経過という事実をもつてその価値が減少するかどうかを見込んで判断する必要があるが、美術品等の価値評価は必ずしも一様でないといったことを踏まえると、時間的経過による価値の減少が客観的に判断できる必要があるとの考えに基づいたものである。
そして、時の経過によりその価値が減少するかどうかを判断するに当たり、時間的経過をもつて美術品等が劣化するなどしてその将来価値が減少するということが見込まれるかどうかによるべきとして、そのようなことが客観的に判断できる要素として上記①から③までが例示されている。
これにより、例えば、ガラスケースに収納されている等、退色や傷付きが生じないように展示されているものについては、たとえ①や②の要素を満たしていたとしても、③の要素であるその設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないとまでは言えないことから、取得価額が1点100万円以上の美術品等については減価償却資産には該当しないこととなる。
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