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響け喜びと感謝の音色 石巻好文館高吹奏楽部 3年生最後のステージ

 新型コロナウイルスの影響で、運動部に限らず文化部も成果発表の場を奪われた。息遣いが必須の吹奏楽部も地区大会から全て中止。県内では代替も模索されたが、実現には至らなかった。こうした中、部員86人を抱える石巻好文館高校吹奏楽部は、顧問が「どうにか3年生に節目の舞台を」と奔走。10日に保護者らのみを招く形で、約3カ月遅れでの定期演奏会にこぎ着け、3年生が最後のステージに立った。【近江  瞬】

 同部は、かつて市立女子高校時代に一時代を築いた橋戸孝司教諭が顧問。その指導のもとで確実に実力を伸ばしてきた。昨年度のコンクールでは県大会で金賞を獲得。東北大会に進む県代表まであと一歩に迫る演奏を見せ、本年度こそ悲願の東北大会出場を目指してきた。

 しかし、新型コロナの影響で臨時休校となり、その間は各自が自宅練習。時にはオンラインで合奏するなど互いに励まし合ってきた。一方で卒業式や入学式での演奏の場も失う悔しさも経験した。

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 5月には本年度の吹奏楽コンクールの中止が決まった。目標の舞台を失い、先行きも見通せない不安の中でも橋戸教諭は「いつか必ず3年生に演奏の機会を」と心に決め、学校再開後も普段通りの練習を続けた。

 新入部員が減る心配もあったが、結果的に歴代2番目の多さとなる29人の入部が励みになった。86人という同部史上最多の部員数での演奏会の実現へ、会場を探し続けた結果、美里町文化会館での定期演奏会が実現した。

 来場者は保護者らに限定し、受付では検温も実施。席間隔もあけて幕間で換気するなどできる限りの対策を講じた。一度は諦めかけたステージ。部員たちはもちろん、保護者にとっても忘れられない特別な日となった。

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 演奏会は校歌で開幕。第1部は幻となった本年度の課題曲と自由曲を奏でた。橋戸教諭が「今年は自信があったのだけどな」というその音色。部員たちは悔しさもありながら、それ以上に仲間と音を重ね、誰かに届けられる喜びを込めた演奏を響かせた。

 第2部の合唱、第3部のポップスと時間が流れ、最後は部長の遠藤明さんが「みんなで演奏できる日を信じて練習してきた。私たちはコンクールの舞台に立つことすらできなかったけれど、この悔しさは後輩たちがかなえてくれる。多くの方の力のおかげで今、大好きな音楽をできていることに感謝したい」と涙を浮かべて語った。

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 演奏会後、遠藤さんの母の芳恵さんは「頑張っている姿をずっとそばで見てきた。コンクールが中止となって泣いていたのも知っている。何も演奏できないまま引退となるのかと思っていたが、最後のステージを用意してもらえて本当に良かった」と瞳を潤ませていた。


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