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金メダル効果 スケボー人気上昇 石巻・民間パークや 教室に注目 協会「気軽な公設の場切望」

 東京五輪で採用された新競技、スケートボード(スケボー)。さまざまな構造物を使って技(トリック)を繰り出し、得点を競うスポーツだ。ストリート競技では男女とも日本人が初代王者に輝くなど国内でスケボーが盛り上がりを見せている。石巻地方にも多くの愛好者がおり、女川町では公設のスケートパークがあるほど。広域で見ればまだまだ気軽にスケボーを楽しめる場所は少ないが、五輪が追い風となってパーク整備も進みそうだ。

幅広い愛好者

 石巻市成田にある民営の「イイノカワスケートパーク」は昨年8月に開設。本格的な設備(半円状の構造物など)があり、年齢層は幼稚園児から60代までと幅広く、県内から愛好者が通う。

 パークを運営する武山参奨さん(39)は石巻地方でスケボーの普及に努める「石巻スケートボード協会」(勝又秀樹会長)の理事を務め、愛好者の一人でもある。「子どもたちが気兼ねなく練習できる場所を作りたかった」と思いを込める。

 この日は勝又会長もパークを訪れ、スケボーの魅力を子どもたちに伝えた。「スケボーは上手い下手関係なく認め合う文化。技が決まった瞬間は、みんなで喜びを分かち合う」と話す。

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技術を磨くスケートパーク。世代を超えた交流が育まれる

 勝又会長は東日本大震災後、被災した同市魚町の倉庫を活用したスケートパーク「ワンパーク」を期限付きで運営してきた。平成31年には協会として石巻市に公設パークの要望書を提出するなど、子どもたちが競技として技術を磨く場を作るために奔走している。

 米国発祥のスケボーは、サーフィンの陸上練習から始まった。やがて市街地を滑って遊ぶ「ストリート」の文化が生まれ、ジャンプする、手すりを滑るなどの技が生まれた。ベンチや階段を使った技も多く、街なかでは騒音も含めて迷惑行為となることも。交通の往来が激しい市街地では道路交通法で罰せられる上、公園では「スケボー禁止」の看板も目に付く。

 勝又会長は「スケボーはイメージの悪さが先行しているが、みんなで安全に楽しめる場所を作って盛り上げていけば地域の見る目も変わっていく。競技の面白さを知る場、人を育てる場として公設パークを実現したい」と思いを語った。

子どもたちの入門に

 石巻地方では5年ほど前からスケボー人気がじわじわ広がり、競技人口は東京五輪の影響で増える気配。石巻市子どもセンターらいつは、昨夏から定期的に中瀬公園で子ども向けのスケボー教室を開いている。子どもたちから「まちなかでスケボーができる場所がない」と相談されたのがきっかけ。ボードも貸し出しており、全くの未経験者も手ぶらで参加できる。

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中瀬公園での教室は未経験者も気軽に参加できる

 始めはデッキと呼ばれる板の上に立つことすら難しいが、徐々にバランス感覚を養いながら足で地面を蹴って進む「プッシュ」や方向転換などに挑戦しながら楽しむ。子どもたちは「本格的にやってみたい」と高みを目指す声も聞かれる。らいつは教室を通じて競技の裾野を広げていく考えだ。

 石巻市で気軽にスケボーができる場所は中瀬公園ぐらいしか浮かばない。構造物がきちんと整備された無料の公共の場となると、県内では唯一、女川町の公設パークとなる。武道や野球などスポーツが盛んな石巻だが、スケボーに関しては動きが今一つ。

 海があり、サーフィン文化が根付く石巻だからこそ、スケボーとの親和性は高い。「ヨコ乗り」と呼ばれる文化の土台があるため、場所を作って若者を呼び込み、新たな交流やにぎわいを生み出すことも可能だ。

 スポーツ技術を磨く以外にも、レジャーとして楽しむ文化を伸ばすことが、地域の新たな魅力を掘り起こすことにもなるはず。【渡邊裕紀】


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