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戦時の「短冊門松」特別展示 私設資料館開設の佐々木さん 平穏に新年迎える尊さ伝え

 石巻市北村の自宅に私設平和資料館を開く佐々木慶一郎さん(75)は、85年前の戦時中、門松の代わりに配布された「短冊門松」を特別展示している。当時は戦争拡大へ傾いた時代であり、東北は冷害で大凶作。現代に残る資料は、何事もなく新年を迎えられることの貴さを伝える。

 同一の短冊が5枚展示され、1枚縦36センチ、横9センチ。若松の枝のほか、夫婦岩の間の水平線から昇る太陽と共に「昭和十三年」「賀 戦勝新年」「武運長久 国威宣揚」の文字が描かれている。戦争資料を集める佐々木さんが昭和60年10月ごろ、福島県から出た軍事郵便を古物商から購入した際、その中にあったものだという。

門松の代わりに配布された短冊と戦時の愛国婦人の衣装を並べた

 裏面には発案者の団体名。門松は短冊で済ませ、浮いた分は出征家族の見舞金にしてほしいという趣旨だった。門松は当時30銭ほど。佐々木さんは「これ(見舞金)によって正月を迎えることができた家庭も多いだろう」と想像した。300万枚が印刷され、昭和12年末に上流の女性ら650万人の会員を有する愛国婦人会などを通じて全国に配られた。

 戦争資料は紙のものから失われ、短冊門松は貴重。なおかつ、この年だけの試みだったらしい。「短冊は激化する戦争への不安を静かに物語っている感じがする」と佐々木さん。戦争が報じられた今年を振り返り、「戦場となっているウクライナの市民の悲劇をわが身に置き換えて感じるべき」と平和の到来を願った。

 資料館は入館無料だが、事前連絡(0225-73-4057)が必要。短冊の展示は30日でいったん終了するが、来年7月に再展示する。【熊谷利勝】





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