見出し画像

第1部 英吉と達 平成30年 日記に導かれた出会い

 来年完成する石巻市複合文化施設には、地元出身の彫刻家高橋英吉(1911―1942年)の作品群が展示される。震災前の文化センターに常設展示され、人々に感動を与えた代表作「海の三部作」などが10年ぶりに戻って来ることから、英吉と作品を改めて見直す機会も増えている。そんな中で、宮城県出身のもう一人の彫刻家小室達(1899―1953年)との関係に着目する鈴木哲也さんが、2人の交流や足跡、ゆかりのある人々などについて地道に調べ、その成果を寄稿してくれた。石巻が育てた2人の天才彫刻家を通して、地域の歴史にも触れる。(随時掲載・第1部全12回)

 私の手元にLPレコード「石巻市制施行50周年記念―いまふるさとの風をつくる―大いなる故郷石巻」があります。「石巻で生まれ育った私にとって、このレコードは…」と普通は続くのでしょうが、私は平成30年4月から石巻で生活している、この秋53歳になる「よそ者」です(よい意味で)。育ちは仙南でこのレコードが発売された頃は高校生。ということで、残念ながら最近出会ったこの中古レコードに関する思い出は、ありません。

大いなる故郷ジャケット (2)

石巻市制施行50周年記念レコード「大いなる故郷石巻」

 では、なぜ私がこのレコードを手にするようになったのか。それは、石巻で多くの方が知っている高橋英吉が取り上げられているからです。

 ジャケットを開くとすぐ目に入るのは、英吉の顔写真です。戦争により31歳で亡くなったため、写真はあまり残っていませんが一番多く使われているあの顔です。横には海を主題とする三部作(海の三部作)の2作目「潮音」(昭和14年)と「母子像」(昭和16年)の写真があります。

 このレコードで英吉が大きく取り上げられているのは、市制施行50周年記念委嘱作品「高橋英吉に捧げるオーケストラのためのレクイエム 潮音(海の三部作)」が収められているからです。その後にできた石巻文化センターでは、いつでも英吉作品を見ることができたようですが、東日本大震災から9年が経過した今、身近なところで英吉を感じる機会は少なくなりました。

大いなる故郷解説 (1)

レコード解説に英吉と作品の写真が載っている

 では、よそ者である私がなぜ英吉と出会えたのかというと、平成28年に宮城県出身の大正、昭和に活躍した先人について触れる機会がありました。その中には、以前から知っていた私の自宅がある柴田町出身で彫刻家の小室達や初めて目にした英吉の名前がありました。

 石巻の方は、達のことを知らないと思いますが、代表作は宮城県民だけでなく全国的にも知られています。テレビ番組で宮城県を紹介する時、この作品の映像から始まり仙台の市街地につなげるというパターンが多いです。その作品とは、仙台城址にある伊達政宗公騎馬像(政宗像)です。

 最近、しばたの郷土館(柴田町)に残されている昭和初期の達の日記の中に、英吉に関する記述があることが分かりました。この、達が残してくれた記録が、私と英吉を引き合わせてくれたのです。

 これから、日記の記述と同時期の出来事をもとに、2人の交流について私なりの考えを交えながら紹介していきます。別な見解や関連する資料がありましたら、ぜひ教えてください。【鈴木哲也】


石巻が育てた天才彫刻家たち-02-01


現在、石巻Days(石巻日日新聞)では掲載記事を原則無料で公開しています。正確な情報が、新型コロナウイルス感染拡大への対応に役立ち、地域の皆さんが少しでも早く、日常生活を取り戻していくことを願っております。



最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。皆様から頂くサポートは、さらなる有益なコンテンツの作成に役立たせていきます。引き続き、石巻日日新聞社のコンテンツをお楽しみください。