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安倍首相が辞意表明 被災地たびたび訪問 突然に驚きとねぎらい

次期政権で復興完遂を

 安倍晋三首相(65)は28日、健康不良を理由に辞任する意向を表明した。「東北の復興なくして日本の再生なし」と所信を述べ、平成24年12月に2度目の政権を発足させた首相は、たびたび、東日本大震災で被災した石巻地方を訪問。その機会に首相と交流した人たちからは、突然の退陣表明に驚きとともに、体調への気遣いや復興支援への感謝が聞かれた。【熊谷利勝】

 28日に行われた会見で首相は、持病の悪化を明らかにし、「大切な政治判断を誤ること、結果を出さないことがあってはならない。国民の負託に応えられなくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断した」と辞任を表明。新型コロナウイルス禍にあるが、「感染の拡大が減少傾向にあり、冬を見据えた対応策がまとまったことから、新体制に移行するにはこのタイミングしかない」と説明した。続けて「さまざまな政策が実践途上にある中、辞することを国民の皆様に心からお詫び申し上げる」と述べた。

note用 東松島市の宮野森小学校を訪れた安倍首相

東松島市の宮野森小学校を訪れた安倍首相

note用 首相の直筆サインをもらって喜ぶ児童

首相の直筆サインをもらって喜ぶ児童

 平成24年12月の衆院選で当時野党であった自民党が大勝し、第2次安倍内閣が発足。公文書の取り扱いなどの問題で厳しい追及を受け、近年は支持率低下も報じられるが、〝安倍一強〟とされる安定した長期政権を築いた。今月24日には第1次と合わせた在任期間が2799日となり、歴代最長を更新したばかり。会見で首相は、2度目の就任後7年8カ月に全力を挙げたこととし、真っ先に震災からの復興を示した。

 首相は第2次政権発足から間もない25年1月、初めて石巻市を公式訪問し、造船会社や製紙工場などを見て回った。5月には防災集団移転団地や新しいまちが造成中の東松島市と女川町を視察。この年は3度石巻市に足を運んでおり、7月は入居が始まった復興公営住宅、12月は再建したばかりの県漁協「万石浦鮮かき工場」でカキむき作業を視察して試食もした。

金1安倍首相差し替え

石巻市渡波のかき処理場を視察し、焼きガキを試食する安倍首相(平成25年12月27日)

 県漁協石巻湾支所の阿部卓也支所長は「首相訪問は本当にうれしい出来事だった。地元漁業者の士気も上がり、浜が活気付くきっかけにもなった」と振り返る。次期首相については「水産業は未だに復興途上にあり、完遂してほしい。コロナ禍で魚価の下落もあり、生産者への支援があれば」と求めた。

 首相は28、29年にも石巻市を公式訪問。昨年7月の参院選の応援演説にも駆けつけている。28年に訪れた際には、のぞみ野地区で復興公営住宅の住民とのり巻き作りした。

note用 震災で被災し、復興した事業所を訪問した安倍首相

震災で被災し、復興した事業所を訪問した安倍首相

 一般社団法人石巻じちれんの代表で、のぞみ野第2町内会長の増田敬さん(69)は「がんばってくださいと声をかけられた。体調不良であれば辞任は仕方のないこと。コロナ対応などで心痛があったのだろう」と気遣う。市内の住まいの復興は完了しており、「今後は被災者がしっかりしていかないと」と述べた。

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潰瘍性大腸炎とは原因不明の難病

 安倍首相は28日の会見で、体調不良の原因が潰瘍(かいよう)性大腸炎の再発であると説明した。首相は、この持病の悪化で平成18年9月からの第1次政権時も1年で退陣。今後、継続的な処置が必要なことから職務に支障が出るとして辞任を判断した。

 石巻市内の内科医によると、潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に潰瘍ができることで起こる炎症性疾患。厚生労働省が難病に指定している。

 原因不明だが、免疫機能や腸内細菌などが関与していることが分かっており、下痢や血便、腹痛などを引き起こすという。内科医は「(総理の仕事が)激務だったのではないか」と推察した。

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「復興の大きな後押し」 地元3首長は手腕評価
政治空白に懸念の声も

 石巻地方2市1町の首長は、安倍首相の辞意表明に驚き、記者の取材に対して震災の復興支援に感謝とねぎらいを語った。【熊谷利勝】

 「制度面などで震災復興の大きな後押しをもらった」と述べたのは、女川町の須田善明町長。任期途中での辞任判断については「重い判断だったと思う。無念さもあるだろう。まずは静養に努めてほしい」と願った。

 東松島市の渥美巖市長は「29年に市を訪れ、職員を激励していただいた。復興現場をくまなく確認し、被災地の声を聞いてしっかりとしたリーダーシップを発揮していただいた」と評価。「後任にもしっかりと地方に目を向けてほしい」と求めた。

 石巻市の亀山紘市長も「復興の取り組みを支援していただくとともに、何度か市に足を運び被災した人に寄り添う姿勢を示していただいた」とねぎらった。一方で辞任による政治の空白を懸念した。

 その上で亀山市長は「国内、地方経済の建て直しのためにも、早急に次期総理を決めていただき、新型コロナの収束に向けて取り組んでほしい」と望んだ。

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