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石巻市 12年ぶりに新市長誕生 オール市民 真価問われる

 令和3年は選挙イヤーだった。4月に任期満了に伴う石巻市長選と東松島市長選・同市議選があり、10月末には当初の見込みよりも前倒しで衆院選が行われ、県内は知事選と同日、石巻市と女川町では県議補選とのトリプル選挙となった。石巻市は12年ぶりに新市長が誕生。その手腕が注目された。(年齢は当時)

 石巻市は3期12年務めた亀山紘市長(78)が昨年12月15日、復興に一定の見通しがついたとして、任期限りでの退任を表明。年が明け、市長選への動きが活発になった。市議会最大会派のニュー石巻を中心にした有志が1月12日、元衆院議員で当時自民党宮城5区支部長の勝沼栄明氏(46)に立候補を要請。1週間後に市議の阿部和芳氏(60)が3度目の挑戦を表明した。

 翌月8日には、5区支部長を降りた勝沼氏が出馬表明。県議会副議長の齋藤正美氏(66)、医師で市包括ケアセンター所長の長純一氏(54)の立候補が取り沙汰され、有志の要請に応じる形でそれぞれ3月6日、18日に正式に意思表示した。

 市長選は4月18日に告示され、いずれも無所属の立場を取った4人が立候補。16年ぶり新人同士の争いは、密集や密接を避ける新型コロナとの戦いでもあった。個人演説会ができず、選挙カーの遊説が中心。外出を控える中で、25日の投開票へSNSを駆使するなどして票の掘り起こしに躍起になった。

市長選で初当選した齋藤氏(右から2番目)を祝う亀山前市長と安住衆議(4月)

 結果、現職の後継指名を受けて〝オール市民〟での市政の継続、発展を訴えた齋藤氏が2万3千票余りを獲得し、初当選した。当日有権者は11万9210人。投票率は51.48%で、有権者の関心も高く前回選挙から7.17ポイント上昇した。

 当初は知名度も実績もある齋藤氏の圧勝も予想されたが、ふたを開けてみれば次点と約3千票差の激戦。3番手も1万票を超えた。自民、立憲民主党の推薦を受けて強固な体制を築いた半面、両者の相乗りに違和感を覚える人もおり、政党支援を受けない他の候補に一定の票が流れた。

 石巻地方の首長は全員が自民党会派の県議出身者となった。衆院選の地元小選挙区では、他の首長が与党候補を支持する中、新市長の齋藤氏は義理堅く「選挙で受けた恩は選挙で返す」と、野党の安住淳氏(59)を応援。これまでの関係から与党幹部が対立候補の応援で石巻市入りした時もマイクを握り、有権者を惑わせた。政治経験と太いパイプがあり、「国との折衝は影響ない」と強調している。

 とはいえ、市長1年目の市政運営は全方位の安全運転。市議の過半数は別の候補を推していただけに、議場では議員の提言に「ぜひ実施したい」「しっかり検討する」と前向きな発言が目立った。

 徐々に独自色も見られ、直接地域に出向いて市民の話を聞く「動く市長室」を12年ぶりに実施。市民要望にもたいてい前向きで、行財政改革を進める中、がんじがらめにならないか心配の声も聞く。

 市政は震災復興の完結や進む人口減少への対応など課題が山積。齋藤市政の真価が問われるはこれからだろう。選挙のしこりは越年せず、真に〝オール市民〟での課題解決が望まれる。【熊谷利勝】

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 令和3年も残すところ半月です。この企画では、各記者が今年にあった主な出来事を振り返ります。


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