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先輩から後輩へつなぐ技術 石巻・宮富士工業

県溶接大会第三部 入社2カ月 安藤さん頂点
2位島さんと上位独占

 構造物や配管工事の溶接、据え付けを行う㈱宮富士工業(後藤春雄社長)=石巻市大街道東=の技術者、安藤莉央さん(19)=同市桃生町=と島淳さん=同市山下=(40)が第50回県溶接技術競技大会の第三部(半自動の部)でそれぞれ最優秀賞、優秀賞の1―2位を独占した。安藤さんは入社約2カ月で県トップに立つ快挙。島さんも2年目ながら技術の高さが評価された。

 県大会は6月18日に多賀城市であり、種目ごとに第一部から第四部に分かれ、競技が行われた。安藤さん、島さんの第三部は、工場で主流の炭酸ガスを使った半自動溶接。県内各地の工場から7人が参加した。

 安藤さんは登米総合産業高校から入社。2カ月間、技術を磨くために競技の練習を毎日行ってきた。1カ月半でコツがつかめ、残りの半月はひたすら精度の向上に没頭。島さんも仕事の合間や終業後に練習を重ね、大会を意識しながら溶接精度を高めた。

県の頂点に立った安藤さん(右)と2位の島さん

 同社では過去の競技大会で全国への出場経験を持つ技術者が多く在籍している。今回は全国経験がある小山友大さん(38)をはじめ、ベテラン勢の高橋茂男さん(58)、高橋秀昌さん(64)らがわきを固め、技術を惜しみなく伝えた。

 競技は、厚さ9ミリの金属板2枚の間に裏当て金と呼ばれる仮設材をあてがい、20分以内に溶接していく。半分まで溶接すると途中で中断するルールで、その間の温度変化を見越して溶接を再開するのが技術的に難しい部分という。審査は表面外観や、折り曲げた際にできる亀裂の大きさなどで採点され、200点満点で争った。

溶接の出来具合を見ながら、社内で練習を重ねていった

 結果は安藤さん191点、島さん190点と好成績で1位、2位を独占。コロナ禍で参加者はまだ少ないとはいえ、190点台は2人だけで、技術の高さを証明した。安藤さんは「大会ではほかの選手の作品を見て『やばい、負けた』と感じたので、1位は無理だと思っていた」と結果に驚き、島さんも「実力を見る機会として初参加した。失敗を感じた部分もあったが、結果がついてきた」と大会当時の心境を語った。

 同社は社員13人の小さな町工場だが、高い精度が求められる女川原子力発電所に関わる機器の据え付け工事も行う。また、最近では令和7年の大阪万博に出品する機器の製作も請け負うなど、全国トップレベルの技術を有している。

社内にある機材を使い、技術を高めていった2人

 厚生労働省が卓越した技能者を表彰する「現代の名工」でもある後藤社長(76)は「大会は結果を残すだけではなく、その訓練の過程が高品質なものづくりにつながる。先輩から後輩へ、技が受け継がれている」と成長に期待していた。

 2人が出場した第三部は県止まりで、全国大会に進むには県大会の第一部で頂点に立たなければならない。同じ半自動溶接だが、美しい溶接面を作るための速度や角度など精度をさらに高めていくことが必須だ。2人は五感の全てを溶接面に集中させ、さらなる高みを目指し、防護マスク越しに火花と閃光(せんこう)に向き合っている。【渡邊裕紀】





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