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強度増す木組み後世へ 石巻市大原浜大工、小形さん

 大工歴50年以上の小形圭一さん(69)=石巻市大原浜=は、金物を極力使わず木材だけで建物を作る日本の伝統技術「木組み」の手法を用いる。住宅の建設、修繕の担い手である大工が全国的に減る中、小形さんは「伝統を絶やしたくない。木組みの強度や美しさを若い世代に知ってほしい」と考え、昨秋ごろから作業場を無料開放。木組みの屋根や門、堂宮などを展示、紹介している。

長年使い込んだ道具で作業する小形さん

「伝統は絶やさない」
作業場開放し技術紹介


 小形さんは幼少からの物作りの趣味が高じ、大原中学校を卒業した15歳から主に独学で木組み大工の道を歩み始めた。それだけで生計は立てられず、別の道も探ったが、いずれも道半ばで挫折。「とにかく木組みが好きでどうしてもこの道に戻ってきてしまう」と笑う。

敷地内にある半年ほどで建造した木組みの建築物

 作業場にはカンナやノミ、ノコギリ、金づちなど使い込まれた道具が並ぶ。それらは小形さんの手に吸い付くようになじみ、繊細な仕事に導く。場内には門や屋根、柱など一般住宅で使う建築物の一部と社寺建築の堂宮が紹介されている。
 「堂宮作りは荘厳な建物にするため、使用する木材は〝一枝一寸八分〟を鉄則にしている。この単位を守って作らないと、参拝者がふと手を合わせるような堂宮にならない」と小形さん。建築だけでなく、堂宮に彫られた美しい装飾も独学で磨いてきた。

 木造建築は現場に入る前に建築材を事前に切断する「プレカット工法」が主流。その台頭などが要因で、費用や工期を要する木組みは一般住宅の建築ではほとんど用いられていない。寺社建築では多く見られるが、その建築、補修を専門に担う宮大工も国内で100人以下という。

 令和2年には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関が宮大工や左官職人らが継承してきた伝統的な木造建築の技術、17分野を無形文化遺産に登録した。それらは国によって保存の措置を講ずる必要がある技術としても選定されている。

 小形さんは、未来の大工が建築資材として使えるよう、5年前から敷地内でヒノキの植樹を始めた。「独りよがりかもしれないが、木組みの伝統を後世に残したい。物作りに興味のある子どもや若い世代に魅力を伝えていきたい」と思いを込めた。

 作業場は石巻市大原浜谷川道5―1。開放時間は早朝から午後4時までだが、日中は暑さ対策必須。対象は小学校高学年以上。問合せは小形さん(090―6622―5844)。【泉野帆薫】



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