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「地域の養殖業と陸上養殖」 ⑤提言 技術と経験の融合を

 潮流や水温の変化など海は、いまだに解明されていないことも多い。現在課題となっているのは地球温暖化に起因すると言われる水温の上昇だろう。これまで生産できた養殖物が近い将来、温度の上昇で適さない環境になることが懸念される。ノリは、仙台湾など北の方では影響は見られていないが、それより南方の養殖漁場である東京湾や有明海などでは、生産量の減少が見られている。その対策として、温度変化に強いノリ品種の開発が進んでいるという。

 技術革新によって問題解決の手法が確立されていくことは多いが、養殖業をさらに安定したものにするためには、陸上養殖の研究とその技術の更新が不可欠だと考える。天候などに左右されず生産できる環境は、すでに野菜の水耕栽培などで見られている。水産業と同じではないが、陸上で環境を作り、育てるという面では同じ。

 現在はギンザケやマスなど、コスト面で採算の取れる魚種に限られているが、ろ過技術や装置の進化、風力、太陽光など自然エネルギーの活用がさらに進めば、多様な魚種に対応できる技術もできてくる。漁業者の持つ積み重ねられた経験、研究者の持つ技術で課題は解決に向かうはず。

 閉鎖循環式陸上養殖の技術が進むということは、魚種の生態がさらに解明されていくことにもつながる。海面養殖にも少なからず応用されることが期待でき、収量や品質の向上も見込める。さらに強みを生かし、特色ある生産物で地域の魅力をアピールできる。採算の取れる事業となれば、養殖業全体の強い武器になることは確か。それは仕事としての魅力が増すことにもつながる。自動化によって漁業のイメージが変わり、就労したいと思う若者が増える可能性もある。

 海面養殖、陸上養殖ともに「養殖業」であることに変わりはない。その垣根を越え、海況によってどちらも活用できる仕組みが作られれば、収量の安定化にもつながる。県内の本格的な研究はまだ始まったばかりだが、地域の養殖業にとって新しい扉を開く鍵となっているのは確かなことだと感じる。

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