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鍵握る商品開発の拠点 水産加工公開実験棟 県品評会入賞作も続々

 海に面した石巻地方は高品質な水産加工品が数多くあり、今年の県水産加工品品評会でも、入賞品の約半数を占めるなど技術の高さを証明している。石巻市魚町には県水産技術総合センターが運営する「水産加工公開実験棟」があり、商品開発を支援。今回の品評会で最高賞の農林水産大臣賞に選ばれたヤマナカ=同市幸町=の「オイスターパテ」もこの実験棟で試作開発。地元で作られる品質の高い水産加工品を支える拠点となっている。【渡邊裕紀】

地域の商品開発さえる水産加工公開実験棟 (20)

市水産総合振興センター近くにある水産加工公開実験棟

 実験棟は県内水産関係者、大学など研究機関への技術提供を目的に平成9年設立。東日本大震災で施設は全壊したが、27年10月に再建された。

 鉄骨平屋建て延べ床面積598平方メートル。原魚加工の魚体処理装置や真空凍結乾燥装置、調味加工用の自動包あん機、レトルト殺菌装置、真空包装装置など40種類以上ある加工装置を使い、あらゆる工程を試験することができる。

地域の商品開発さえる水産加工公開実験棟 (16)

最新機器を使った試験が行われ、新商品開発につながっている

 ここで誕生した商品はオイスターパテのほか、木の屋石巻水産の「ホヤ缶」やマルキチ阿部商店の「さんま燻り干し」など数多くある。大企業であれば専用実験棟を持つこともあるが、中小企業には負担が大きく、実験するにも生産ラインを止める手間もある。

 そのため同実験棟で試作を繰り返し、集めたデータは製品に還元できる。現在も石巻地方のみならず、県内の水産加工会社などが施設を活用して新商品開発を進めている。

センサーでレトルト調理品の温度変化を調べ、製品へフィードバックさせている

センサーでレトルト調理品の温度変化を調べ、製品へフィードバックさせている

 2日は水月堂物産=石巻市流留=が常温保存できるレトルト商品の試作を行った。殺菌装置の温度や時間を細かく調整し、求める品質になるまで試作を繰り返すという。同社の阿部修弘商品開発係長は「社内の設備では通常業務に支障が出るため、地域にこのような実験棟があるのはとても助かる」と語った。

 同センター水産加工開チームの三浦悟総括研究員は「施設を利用する企業や団体は年間150近く。その中で石巻地方の団体は半数以上を占めている。今後も中小企業の商品開発拠点として活用してもらえれば」と水産振興に期待を込めていた。


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