見出し画像

「前を向いて生きていく」 母の遺体 家族のもとに 10年目前に身元判明

 東松島市野蒜地区の会社敷地内から先月17日に見つかった白骨遺体が東日本大震災の犠牲者だったことが分かり、石巻署は10日、遺体を家族に引き渡した。身元が判明したのは当時、野蒜地区に住んでいた奥山夏子さん(当時61)。同署を訪ねた長男の奥山英樹さんに引き渡した。【渡邊裕紀】

 震災発生時、夏子さんは同市野蒜の自宅周辺で津波に巻き込まれたと見られ、行方不明となっていた。それからほぼ10年が経とうとした時、頭蓋骨を含むほぼ全身の白骨遺体が見つかり、県警で歯牙鑑定やDNA鑑定を進めた結果、夏子さんと特定された。

身元不明者の遺骨引き渡し (37)

英樹さん(右)に遺体が引き渡された

 遺体はひつぎに納められ、同署の岡島利明署長から英樹さんに引き渡された。英樹さんは「母がいなくなって10年間、頼りたいときや相談したいときもたくさんあった。震災から10年という時期に見つかったのは、母がいなくてもお前は一人でやっていける、というメッセージだと思っている。前を向いてしっかりと生きていきたい」と語っていた。

奥山夏子さん生前お写真

奥山夏子さん

 震災による東松島市の行方不明者は22人となった。同署では「市民からの要望や情報提供は今もあり、これからも継続して不明者の捜索に努めたい」と話していた。


◇   ◇   ◇   ◇   ◇


砂かき分け手掛かり探す 野蒜で不明者捜索
遠田、加美署と人海戦術

 東日本大震災から丸10年となるのを前に石巻署は10日、東松島市野蒜の海岸線で行方不明者の合同捜索を展開した。遠田署と加美署と連携し、陸上、海上の二手に分かれて手掛かりを探った。【横井康彦】

 石巻署は震災後、住民の要望などを受けて行方不明者の捜索活動を継続的に実施。近年は同署水上警備派出所の警備艇を活用した海上捜索を中心とし、陸上捜索は昨年11月の矢本以来となる。

月命日一斉捜索 (4)

レーキを使い、不明者の手掛かりを探した

 捜索したのは、鳴瀬川河口南西側に位置する野蒜海岸の砂浜約1キロ。野蒜、東名地区は震災後、同市内で最も遺体収容者数が多かった地域であり、荒天などで海から打ち上げられ、土砂に隠れた手掛かりが残っている可能性があるとみて、人海戦術で捜索した。

 陸上で警察官30人が海岸表層をかき分けたほか、海上からも署員5人が不明者の関係品を探った。同署は「県内でいまだ1200人の行方が判明していない。ご家族の気持ちに応えられるよう今後も捜索を続ける」と話していた。なお、河北署も古川、鳴子署と連携し、長面地区の北上川河口で合同捜索を行った。


現在、石巻Days(石巻日日新聞)では掲載記事を原則無料で公開しています。正確な情報が、新型コロナウイルス感染拡大への対応に役立ち、地域の皆さんが少しでも早く、日常生活を取り戻していくことを願っております。



最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。皆様から頂くサポートは、さらなる有益なコンテンツの作成に役立たせていきます。引き続き、石巻日日新聞社のコンテンツをお楽しみください。