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「新規就農と施設園芸」 ③対応 世襲する農業

 新しく農業に挑戦する若者とともに、代々続いてきた農業を受け受け継ぐ若者も少なくない。多くの農家が子世代への引継ぎを諦めて廃業していく中、石巻市桃生町でスリムねぎ農家を営む佐々木拓郎さん(36)は、代々農家の家系だ。

 元々は保育士という夢があったが、佐々木家の長男として家業を継ぐことにし、20歳でこの世界に飛び込んだ。「当初はそこまで農業にやる気があるわけではなかった」と話す。数年間は淡々と仕事をしてきたが、自身で農業のやり方を模索。あまり作られることのなくなった旧世代のコメ品種「ササシグレ」に目を付け、スリムねぎとともに栽培を始めた。

 ササシグレは、昭和30―40年代に宮城県で栽培された品種。ササニシキの元となった品種で、病気に弱く倒れやすい性質から、現行の品種よりも栽培が難しい。しかし、あっさりとした食味はファンも多く、佐々木さんは自身のブランドを立ち上げて販売することにした。

佐々木さんは就農に興味のある人向けに農業体験も行う


 「ササシグレの栽培は難しく、試行錯誤をくり返した。自分で販路を開拓するなど苦労も多かったが、そこに農業の面白さを感じることができた」。栽培しているササニシキ、ササシグレは根強い人気を持ち、徐々に販路が広がっているという。

 佐々木さんの農場では農業体験も行っており、新規就農を目指す若者たちの入り口にもなっている。また、地域の小学校も職場見学に訪れるなどし、食育の場にもなっているという。

 「個人農家は定時の概念がなく、時間に縛られない自由さが農業の良さでもある」と佐々木さん。スリムねぎは通年出荷しているが、夏場に単価が上昇するため、今が正念場だ。農業の楽しさを感じながら、次の世代への魅力発信も担うようになり、コロナ禍でなかなか活動できていないが、趣味のバンド演奏も再開の機会をうかがっている。

 農を楽しみながら趣味も楽しむ。人によって農業のスタイルがさまざまあり、個性を生んでいる。



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