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女川町 「地元同意」に期待と不安 公民連携のまちづくり推進

 女川町は復興後の地域に新たな価値や可能性を見出すことを目的に公民連携で独自のまちづくりを進めてきた。総合計画の「〝いのち〟と〝くらし〟をみんなが紡ぐまち」を将来像に掲げ、実現にまい進した。また東北電力女川原発2号機の再稼働を巡っては「地元同意」によって方向性が示された。経済効果に対する期待と事故時の避難計画に対する不安。震災の爪痕が残る地で再稼働への道が開かれた。【山口紘史】

 町では震災後、原状復旧に留まらない新しい港町の再生に公民連携で取り組み、防災減災の観点から中心部をかさ上げし、段階的に商業、観光、行政、教育機能を集約した。特に女川駅前商業エリアは内外の人の交流が育まれる拠点エリアとして定着。コンパクトな市街地形成が評価され、1月に国土交通省から重点「道の駅」に選定された。

 3月には、震災の津波で被災した地元スーパー「おんまえや」が従前地とほぼ同じ場所に新店舗を設け、9年ぶりに営業を再開。人の流れが駅前だけでなく、近隣商業用地にも広がる契機となった。

 女川湾に面した海岸広場周辺では、津波で倒壊した旧女川交番が町内唯一の震災遺構として2月に完工。当時の姿を残し、津波の恐ろしさと教訓を伝えている。

 教育分野は堀切山で整備が進められていた施設一体型の女川小・中学校が完成し、8月23日に新校舎落成式を実施。児童生徒は新しい校舎で2学期を迎えた。旧女川小校庭に建設中の町立保育所の名称も「女川町立しおかぜ保育所」に決定。旧女川小・女川中校舎の利活用は検討中だ。

回顧3 女川町のこの1年

女川原発2号機の再稼働に容認の姿勢を示した女川町議会(9月)

 また、女川原発2号機は再稼の前提となる「地元同意」の手続きで大きな山場を越えた。2号機は2月に原子力規制委員会の審査に合格し、9月には女川、石巻の両議会が再稼働賛成の陳情を、10月には県議会も賛成の請願をそれぞれ採択。再稼働容認の姿勢を示した。11月の市町村長会議では各首長から賛否双方の意見が出たが、最終的な判断は県、女川、石巻の首長の判断に一任。3者協議で正式に同意の意向が示された。

 女川町議会は立地自治体の議会として最も早く容認の姿勢を示したが、賛成議員は「何が何でも賛成」ではなく、原発の安全性や東北電力の事業姿勢、地域への経済効果の波及などを総合的に判断した苦渋の決断だったと強調した。特に最大焦点となった「避難道路の整備」は賛否問わず国や県の積極的姿勢を求める声が多かった。

 東北電力は今後、具体的な「工事計画」の妥当性、安全管理の「保安規定」など技術的な過程で国の原子力規制委員会の審査を受けながら、安全対策工事が終了する令和4年度以降の再稼働を目指す。

 来年はサッカーやラグビーなどができる清水町公園グラウンドのオープンや女川消防署庁舎の再建工事完了なども控えている。新型コロナウイルスの影響で交流人口が減少するなど苦境が続くが、震災を通して培ってきた公民連携の強固な輪は、復興後のよりよいまちづくりにつながっていくだろう。


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