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「地域の養殖業と陸上養殖」 ④展望 地上を生かす取り組み

 石巻地方の水産業にとって大きなシェアを占める養殖業。海面養殖は常に海の変化にさらされ、年によって出来、不出来が大きく左右される。それは自然を相手にする以上は必然であり、避けることはできない。

 その中で、陸上に水槽を作り水産物を育てる「陸上養殖」が昔からあり、技術を更新しながら研究が続く。全国的に見ると日本海側での事例が多く、安定した水産物の供給が可能になるという。

 石巻市渡波の県水産技術総合センターでは、県内初となる「閉鎖循環式」の陸上養殖研究施設の整備を決め、令和5年度内の完成を見込む。サケ・マスの養殖を研究する施設であり、安定した原料供給を目指す考えだ。

4付写真 ISUの養殖施設 (9)

石巻専修大では、水槽や浄化設備などを整備し、
養殖施設の研究を進めていく

 石巻専修大学でも低コストで採算性の取れた陸上養殖に向け、施設を使ったギンザケの研究が進む。同大学理工学部で研究に取り組む、農学博士の角田出教授は「魚種によってもコストに差があり、需要と供給のバランスで価格を維持することも重要になる」と陸上養殖の可能性を探る。

 魚種によって成長度合いは違い、1キロ育てるのに平均して3~5キロのエサが必要になるという。マグロに至っては10キロ以上と言われる中、サケ・マス類は1~2キロと少なく、費用対効果が高いことで陸上養殖向きとされる。

 陸上であれば、水温などの環境を任意に変更でき、感染症や寄生虫といった危険性もない。しかし、ろ過装置や施設全体を稼働させる電力など、設備投資とランニングコストが大きなネックとなっている。

 同大学では、キャンパス内にある風力、太陽光発電を使って、どこまでコストを抑えられるかをこれから検証する。角田教授は「陸上養殖だけではどうしてもコストが高くなる。海面養殖とのバランスも重要になるだろう」と話す。また、陸上養殖ならではの付加価値を付け、ブランド化することも強みになるという。

 海水や井戸水を利用する「半循環式」の陸上養殖施設も進んでおり、どこまでを海にゆだね、陸で何ができるかを模索しながら技術の更新は続いている。【渡邊裕紀】

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