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震災乗り越え漁業を未来へ 全国豊かな海づくり大会

 水産業の振興を理念とする「全国豊かな海づくり大会~食材王国みやぎ~」が3日、石巻市を主会場に開かれた。大会は昭和56年から各都道府県持ち回りで開かれており、宮城県が会場となるのは初めて。本来、昨秋に開催予定だったが、新型コロナウイルスの影響で一年延期になっていた。大会テーマは「よみがえる豊かな海を輝く未来へ」。式典行事では海づくりメッセージや大会決議があり、天皇皇后両陛下もオンラインで参加された。

 マルホンまきあーとテラスで開かれた式典行事には、国、県、市と水産関係者ら約200人が参加した。仙台市出身の女優、鈴木京香さんがナビゲーターを務め、オープニングでは東日本大震災から復興してきた宮城の海の取り組みを映像で紹介。式典では天皇皇后両陛下がオンラインで参加し、地元ひばり幼稚園の鼓隊が宮城水産高校の生徒たちを先導して大会旗入場を行った。また、桜坂高校の生徒が式典の補助員を務めた。

全国豊かな海づくり大会  トップ

震災復興と未来を伝える「海づくりメッセージ」で持続可能な漁業について考えた

 天皇陛下は「震災後に訪れた被災地の光景は、今も目に焼き付いて脳裏を離れることはありません。震災を乗り越えて初めて全国豊かな海づくり大会が開催されることは誠に意義深く、復興に向けた地域の人々の努力と関係者の尽力に深く敬意を表します」と思いを込められた。

 式典では同大会の作文コンクールで、大会会長賞を受賞した蛇田小4年の大森心結さんが、地元で取れた魚を食べて暮らす中で、海に落ちているごみについて考えたことを朗読した。発表を終えた大森さんは「多くの人が来て楽しめるきれいな海になってくれればうれしい」と話した。

 その後、震災から立ち上がってきた県内の水産業と、これからの持続可能な漁業を伝える「海づくりメッセージ」が行われ、県漁協石巻市東部支所の石森裕治運営委員長らが登壇。震災を乗り越えてきた経緯を振り返り、「地域の水産業は震災前よりも活気を見せ、若者も増えている」と現状を伝えた。

 また、同市で新規就業した漁師の高橋未希さんも「漁業に携われることに生きがいを感じている。誰にでもチャンスはある」と水産業の魅力を語った。最後は村井嘉浩県知事から次回開催県である兵庫県の齋藤元彦県知事に大会旗が手渡された。【渡邊裕紀】

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稚魚約900匹を放流 石巻漁港
旗なびかせ漁船パレード

 全国豊かな海づくり大会の海上歓迎・放流行事は3日午後に石巻漁港で開かれた。天皇皇后両陛下もオンラインで参加され、関係者ら800人が集まった。和太鼓演奏や漁船パレードが行われ、ホシガレイとヒラメの稚魚を放流した

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漁港内で行われた漁船パレード

 海上歓迎では、県内で操業する代表的なノリ、カキの漁船や底引き網船など8隻が大漁旗をなびかせて漁港内をパレード。伊達の黒船太鼓保存会(石巻市雄勝町)の勇壮な和太鼓演奏が響き、上空を航空自衛隊松島基地のブルーインパルスがスモークを出して飛んだ。

 放流行事では、前回開催地である秋田県から譲り受けた大型の放流台を中心に、漁港周囲に多数の放流台を設置。石巻市立寄磯小学校の渡邉洸成さん、浜畑侑生さん、渡邉ひらりさん、阿部聖生さんが代表となり、同大会会長の大島理森衆議院議長らとともに稚魚約900匹を放流した

全国豊かな海づくり大会 カタ1

放流を行う寄磯小の児童

 その後、4人で「地域の海を守っていきたい」と誓いの言葉を述べ、天皇陛下も「海を大切に思う気持ちが伝わってきました」と語り掛けた。大役を終えた児童たちは「放流と誓いの言葉はとても緊張した。魚たちには大きく育ってほしいと願いを込めた」と話していた。【渡邊裕紀】

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オンラインで被災者と懇談
天皇皇后両陛下 発災時や現状伝える

 海づくり大会の一環で3日、天皇皇后両陛下と石巻市の被災者らがオンラインで懇談した。漁業者育成に励む漁師の阿部勝太さん(35)、水産加工業を営む木村あけみさん(57)、海岸再生に力を注ぐ沼倉憲一さん(74)らが出席。両陛下に震災から10年の歩みなどを伝えた。

天皇皇后と懇談

オンラインで両陛下と懇談した(石巻市南浜町の津波伝承館)

 懇談後、阿部さんは「震災当時の話を親身になって聞いていただいた。とてもやさしい口調で、本当にありがたかった」、木村さんは女性が働きやすい職場作りで両陛下から「とても良い活動をされていますね」とねぎらいを受けたという。

 沼倉さんは「震災時の様子をお伝えすると『家族が無事でよかったですね』と話されていた。これからも体の続く限り地域のために活動したい」と思いを込めた。


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