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今ある一瞬を大事に生きる 次世代につなぐ思い 石巻専修大学3年 雫石 皓太さん

 震災後、涌谷町に移住し、石巻専修大学に通う経営学部3年の雫石皓太さん。発災時は石巻市吉野町に住んでおり、湊小学校の3年生だった。被災体験の記憶は鮮明に残っており、同大学の学生が主体で開くイベント「竹こもれびナイト」(3月11日)にも参加している。「復興していくまちの姿を感じつつ、未来を考える機会になれば」と願う。

 あの日、自宅の近所にあるそろばん塾で被災した。激しい揺れに襲われ、その後すぐに湊小学校に避難。そこで弟、母親と合流することができた。雫石さんは「このときは事の重大さがつかめず、早く家に帰りたい一心だった」と話す。

 校舎の窓から見た津波は、とてつもない力で家の屋根を押し流していた。「昔通っていた幼稚園のプールも流されてきて、すごいものを見てしまったと感じた」。そのまま校舎で夜を明かし、朝には水が引き始めていた。

「震災の経験や記憶を思い出し、未来への教訓としたい」と話す雫石さん

 湊小に避難していた人たちが水や食料を確保し、雫石さんはここで数日過ごした後、がれきの上を伝って自宅に戻った。仕事に出ていて安否不明だった父親の無事も分かり、生活を立て直しながら住吉中学校を間借りして再開した湊小に通い続けた。

 小学5年の時、父親の仕事の関係で涌谷町に移住。「震災の時期に合わせたテレビの特番があり、そこで知り合いの子の家族が亡くなっていることを知った。子ども心に自分は運が良かったのだと感じた」と振り返る。

 石巻専修大学に進学し、再び石巻に通うようになった。震災直後の光景を忘れることはないが、復興が進む中で当時の記憶とは全く違う街並みが広がっていた。

竹こもれびナイトは学生たちが地域への思いを込めて開催している

 「大学のゼミで石巻南浜津波復興祈念公園を訪れ、改めて震災を学んだ。小さかった頃の出来事だが、今だからこそしっかり振り返り、胸に刻み直すことも重要だ」

 同大学の庄子ゼミが3月11日前後に行っている「竹こもれびナイト」。震災犠牲者に鎮魂の思いをささげる目的で平成30年に始まった催しだ。同ゼミの学生たちが主体となって準備しており、雫石さんも昨年から参加する。

 震災を知らない世代が増える中、鎮魂の思いを根底に置きつつも未来に向けて発信することも加えられた。「震災後に生まれた子どもたちに津波や震災の教訓を伝えながら、明るい未来をつないでいくのがイベントのコンセプト。私も震災を考え直す機会になっている」と雫石さん。

 「災害はまたいつ来るか分からない。だからこそ、今ある一瞬を大事に生きていきたい」と話していた。【渡邊裕紀】





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