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にぎやかな静寂

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S38年生まれの低空飛行モノカキがのんびり語ります。
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2015年2月の記事一覧

水晶のような

 一年になんどか見る夢がある。
 ぼくは夢の中で
「いままで、こうしている夢をなんどか見たよ」
 と笑いながら彼とコーヒーを飲んでいる。
 連絡をとれなくなって久しい友人だ。
 ショッピング・センターの中にある、いつも休憩に使う小さな喫茶店。
 ようやく念願がかなった、という喜びと、いやそもそもそんな大袈裟なことではないじゃないか、という思いを交互に抱きながらふと店内を眺める。
 白い壁紙の店内は

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キャッチ・ボール

 小学校の三年生から五、六年生くらいまでの話。

 昭和のこどもにしてはめずらしく野球にあまり興味がなかった。
 巨人の星も侍ジャイアンツも他の野球アニメも好きで愉しく見ていたけれど、主人公に自身を投影して熱くなったという記憶はない。
 スナック菓子のおまけのプロ野球カードを集めまくるということもなかった。付き合いで買うことがあっても、当たったカードがどこのチームの何という選手なのかよくわからなか

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表現すること

 ずいぶん昔の話になる。
 テレビのお笑い番組を見ていたら、まだ無名の新人芸人が何人か出ていて、それぞれがお笑い志した理由を答えるという場面があった。
 有名になりたいから、異性にもてたいから、お金持ちになりたいから、純粋にお笑いが好きだから、と向日性を感じさせる若者らしい言葉がつづいた。

 すると、さいごのひとりが、
「自分の面白いと思うことを他人も面白いと思うかどうかを試してみたかったから」

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エッセイ書きます

 エッセイを書きたいと思っていた。

 作家の富園ハルクさんが、このnoteという場所を教えてくれた。
 ハルクさんはぼくが「幽」(KADOKAWA)という怪談文芸誌の怪談実話コンテストで優秀賞をもらったときにおなじ優秀賞を獲られた方で、いわばその年の大会での銀メダルと銅メダル(ぼくが銅)という関係である。
 生粋の江戸っ子であるハルクさんと生まれも育ちも関西の外れというぼくだったけれど、初対面の

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