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引っ越しをして「不安」を知る

「じゃあ、頑張って」

サラッと改札越しから手を振り、すぐに後ろを振り向いて階段の方向へ向かう母を見て、心の中で「大丈夫」と唱えた。大丈夫というのは、母に向かって頑張る意味を込めて言ったのではない、自分自身に「できる」の意味で唱えたのだ。

「普通にしよう。」

そう思いながら、金沢駅のドラッグストアへ行き、ファブリーズを購入し、「そうそう、バスに乗る機会も増えるからアイカも変わなきゃ」と北鉄バスセンターに向かう。

無事アイカを購入し終えた後、バスに乗り自宅へ向かった。窓から外を見つめていると、「さっき母と同じ道を通って来たんだった…」なんてことが頭に浮かんだ途端、目頭がジンワリと熱くなってきたと同時に、絶対に考えてはいけないことをすぐに考えてしまった自分が恨めしくもなった。バスに乗り込んでいる自分がその時できるのは「ただ、我慢すること」だけだった。

本当は帰りながら聴きたい音楽もあったけど、どんな言葉が自今の自分に刺さるのかが分からないので、音楽をを聴くのを辞め。あれこれ考えているうちに涙は目頭で止まったまま最寄りのバス停までやってきた。

バス停についてからは、無心で家まで歩き、鍵を開け、玄関に入る。そして、鍵を閉め、靴を脱ぎ、部屋の扉を開け、荷物を置いたら「GO」のサイン。ずっと涙を我慢をしていたので、想像の何倍もの量を誇る水分は眼・鼻・口、全部から放出されたのだった。

自分的には、ドラマとかでよく見る「後からこっそり涙を流す儚い女性」になりたかったけど、多分そう綺麗な涙は流せていない。唇をかんでもボロボロと溢れてくる涙を自力で止めるのは無理だった。今、これほどまでの涙が出た理由は「やっと金沢に住めた!夢を叶えることができた!」というポジティブな思いではない。正直な所「不安」しかないのが現実だ。

ここは、見栄を張って「金沢に来れて嬉しいです!最高にハッピーです!頑張ります!」と書こうかな…その方がずっと移住を楽しみにしてきた人っぽいし良いかな?とも思ったけど、やっぱり「不安」を感じているのだから、不安な気持ちを書いておきたい。

このnoteを書いた今年の4月を生きる私はもしかすると、引っ越しをしたのにも関わらず、わんわん泣いている私のことなんて想像ができないかもしれないけど、今を生きる私が不安で仕方ないのだから…受け入れるしかないのだ。

昔から私は、とりあえず大きな夢を掲げて、それに向かって走っている「風」が得意だった。途中でやめても「やりたいことが変わったから」と言えば、事なきを得るような人生。

なりたかった夢も、たくさん挫折してきた。「諦めた」と言う言葉は本気で努力をした人だけが言っていい言葉…そんなことをMOROHAのアフロさんが言っていたので、私は今までの人生のほとんどは「挫折」をしてきた。と言っている。何事も中途半端に投げ出してしまう自分が嫌で嫌で堪らなかった。この世で一番苦手な言葉は「継続は力なり」かもしれない…そんなことすら感じる人生をずっと送ってきた。

そんな私が、頼りになる母の元を離れて一人で知り合いがいない場所に引っ越し…。文字だけ見ても「できそうにない」と感じてしまう。

それでも、何故だか希望が持ててしまうのは、引っ越してきた場所が好きな街である「金沢」だからだろうか。

正直15日の朝一番のサンダーバードに乗り込んだ時点で、ずっとお腹が痛くて不安で堪らなくて…。隣にいる母に「帰りたい」と言いそうになったのが本当のところだ。本当に帰りたいとは思っていなかったかもしれないけど、今言えば、もしかすると帰れるんじゃないか…?そんな私の悪い部分が全部出そうになってしまった。

でも、言わなかった。あっという間にサンダーバードは金沢駅に着き。あっという間に不動産へ。そして、気づいたときにはアパートの部屋の中にいたのだから。

当たり前かもしれないけど、ちょっと成長できたのかもしれないなんてことも思ってしまった。

今こうやってnoteを書いているのは、決意表明なんかじゃなくて、ただ心の中にあるモヤモヤとした気持ちと自分の言葉で向き合いたかったから。さっき帰路についた母からメッセージが届いた。そこには、「またお正月に」と書いてあった。

お正月まで1ヶ月ちょっとぐらいかな。きっとあっという間にくるんだろう。

母に「〇〇を始めたよ」と報告ができるように、精一杯やれることをやろう。

本当は引っ越しをしてからのnoteは移住前に仕事のことで色んなことが起きた話をたくさん書きたかったけど、今は「気持ち」と向き合いたかったので、また今度ゆっくり書こうと思う。

それに今、書きたかったことを書き終えて顔を上げたら、いつもの実家のキッチンでパソコンをしているような…不思議な感覚になった。「でもここはいつもの場所じゃない」と、ハッとさせられ、心臓がギュッと痛くなった。

「よし、もう一回顔を洗って、気を引き締めよう!」

と思い、なんとなくスマホを見ると母から長文のラインがきていた。そして、また猛烈に泣くのだった。涙の無限のループ。たぶん今日だけ。きっと今日だけだけ。








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